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四の曲〜初めての村で〜

「本当に彼女達でよろしかったのですか?」


少年、カミサマの隣に彼の一番の側近である天使が書類を捲りつつ、歩み寄る。とカミサマはローブを翻しながら少し遠くにある玉座に向かいながら言う。


「いいんだよ。どうせ代わりはまだいるんだし」

「代わり…と申されましてもここまで最強…いえ、神クラス級の強さを持つ者は彼女達のみ。そんな者達以上に強い者など、おりません」


カミサマは天使の言葉を軽く聞き流しながら玉座に腰掛ける。


「人間はいとも簡単に死ぬんだよ?脆い命…それに勝手に人間は強くなって弱っていく……惨めだよね」


ハハッと口元だけで嗤うカミサマ。天使はそれに短くため息をつく。


「“死んでも代わりはいる”と」

「嗚呼、そうさ。いつか死ぬんだからさ」


カミサマは天使に近づき、高くない背を精一杯伸ばしながら言った。


「いつ死んでもいいでしょ?」


笑っていない瞳が、冷たい瞳が天使を貫く。

彼に忠誠を誓ってはいるが、いつから彼はこのような人になったのだろうか?


カミサマは再び玉座に腰掛けながら暇そうに足をブラブラさせる。天使は書類に目を一瞬移すとカミサマがいる方へ歩み寄った。


(彼女達に希望を願ってもよいだろうか…)


天使が持つ書類にはある重大なことが書かれていた。


***


「ゼェ…ゼェ…倒せた…」

「な…ナオ…突っ込みすぎ…」


小道を進み、幾度も魔物に遭遇し、混乱している状態で魔物を倒し続けた2人。その結果、疲れた。普通はゲームの中で戦っているのだ。自分達は操作しているに過ぎないのだから。

だが、格好がアバターだからか体もアバターだから、それとも日頃の慣れか2人は徐々に戦闘に慣れつつあった。アバターだからか魔物を倒すことに違和感がなかったのが逆に違和感を醸し出していた。アバターには敵として認識されているようだ。これにも徐々に慣れていきたいものだ。


ナオとユーリはある村に来ていた。大きな教会があるだけでほぼ殺風景な村だ。疲れ切っていた2人は宿を見つけるとカウンターの気前の良さそうな老人に声をかけた。


「あの〜」

「ん?なんだいお嬢さん方。泊まりたいのかい?」


優しそうな笑みを浮かべて老人が言う。それにナオがコクリと頷く。すると老人が何かに気づき、目を見開いた。


「お嬢さん方は『冒険者』なのかい?」

「『冒険者』?」


ユーリが頭上にハテナを浮かべると老人は驚いたようだったが2人に快く答えてくれた。


「『冒険者』ってのは旅をしている人達のことさ。ワシ達の頼み事を聞いて助けてくれるんだ。中にはギルドを作って登録してるところもあるが…お嬢さん方はギルドに入っているようだね」

「え?!おじいちゃんどうして分かるの?!」


ユーリがカウンターに身を乗り出して聞く。と老人は彼女がしているマフラーをヨボヨボな指で示した。


「これだよ」

「それって…俺達のチームの紋章」


ナオが呟きながらマントを止めている直径2cmのバッチを撫でた。それはユーリのマフラーにもついている。

黒い薔薇で小さな加工された鉱石がジャラジャラと銀の鎖に繋がれて薔薇から垂れている。

2人はこれを魔物の対戦後、休憩中につけた。まあ実はというとユーリがポーチの中から見つけたのだが。


「そう、それだよ。その紋章がお嬢さん方が『冒険者』ということを示しているのさ。世界に一つだけのお嬢さん方が『冒険者』と示す紋章なんだよ」


そこで2人は『冒険者』とはゲームの世界でいうアバターのことではないかと目で会話した。もしかしたら他にもいるかもしれない!


「他にも『冒険者』はいるんですか?」


ナオが聞く老人は「嗚呼…」と短く答えた。


「先月もここに泊まっていかれたよ。あ、そうそう。この宿、『冒険者』は無料なんだよ。全部空いているから好きなところで休みなさい」


老人の答えとその心優しい待遇に2人は感動した。


「「ありがとうございます!!」」


そう頭を下げてお礼を言った。老人は「いいえ」と嬉しそうに笑った。


***


「なおみん」

「何?」


部屋を一つ借り、その部屋でくつろいでいるとユーリが言った。


「ウチらさ、これからなにしたらいいんだろうね」

「さぁね。とりあえずあのクソカミに言われたやつやればいいんじゃない」


またムカムカとあの会話を思い出したのかナオが拳を握り締めながら言う。またユーリがどうどうと落ち着かせる。

ナオはベットに腰掛けながら大剣をベットの上に置く。


「…………」

「ねぇユーリ」

「!なぁに?」


突然、いつも元気で明るいユーリが黙ったのでナオは声をかけた。それにユーリは驚いたように声をあげた。


「無理するなよ?」

「なーに言ってんの!!お互い様でしょ?」


ユーリが笑って「ねー」と言う。それにここに来た不安と恐怖が浄化されて行く気がした。

大丈夫、俺にはユーリがいる。友達がいるんだから。


「ねぇねぇなおみん!なおみんの攻撃凄かったねぇ!さっきのおじいちゃん優しかったね!」


突然、元気を取り戻したユーリのハイテンションなマシンガントーク。ただ単にナオと同じように不安だっただけらしい。それかはっちゃけただけか。


「どんな人達がいるんだろうね!!ちょっと怖いケド、大丈夫だよね!」

「ちょっと黙ろうかユーリ?」


久しぶりのユーリのハイテンションなマシンガントークが耐えきれず止めを入れたナオ。なんだかんだいつも通りの会話に戻って来ているのだがやっぱりユーリのマシンガントークはうるさいと思うナオだった。


「えーなんでー?~(・・?))」


顔文字を顔で表すユーリはそれがナオの怒りを誘うことを全く知らない。


「だから少し黙れ!!!」

「ウチなんも言ってないのに?!」


さあさあ、2人の『冒険者』としての旅の始まり始まり。

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