四十七の曲〜偽った歴史達〜
『あんたも、嘘が好きだよな』
その声にカミサマは動きを止めた。そして、ゆっくりと後ろを振り返るとそこには少女がいた。
「なんのことだい?」
『とぼけるな。俺達の名を突然使い出して、なんのつもりだ』
「ふふ、僕は何も企んじゃいないよ。ただ、『彼』を止められればいい」
フンと少女は鼻で嗤う。とカミサマにゆっくりと近づく。
『本当にそうか?異世界の子達を連れて来て…この世界の人間でも力になる筈なのにどうしてだ?』
「……そ、それは…」
焦りを見せるカミサマ。少女はフッと嗤い、カミサマの左胸を人差し指で押し、言う。
『俺達は…いや、俺は“忘れさせた”。だがお前は心を捨てたから覚えている。だから、俺達と同じ子達を連れて来た』
「……なーんだ、分かってんなら聞かないでよ」
両手を上げ、面白そうにカミサマは嗤う。瞳は全然嗤ってすらいないが。それに少女はキョトンとする。
「僕だって君達がやったこと、忘れた訳じゃない。だって神だからね、重要なことはずっとインプットされてる」
自分の頭を示しながらカミサマは言う。
「君が例え“忘れさせた”としても僕はきっと覚えt『やっぱあんた、嘘つきだな』…は?」
少女はカミサマの横を通って行くと不意に立ち止まり、彼を振り返った。
『お前は俺が“忘れさせた”。存在を覚えていても出来事や意味、“本当”の俺達は覚えていない。そうだろう?俺の名前が言えるか?』
「………」
『ほら、な。あと』
少女は歩きながら言う。カミサマがちょっと悔しそうな顔を、心がないのにしているのに気づきながら。
『もう“彼女”に近づくな。お前が近づいたところで歴史は変わらないし戻らない。歯車は、逆回転しないんだよ。分かったか?神から外れかかった異端者様』
***
歯車の上には違う人がいた。
「こんにちは、どうしたの?」
『………貴方は、ボクみたいになるの?』
「………違うよ、ハッピーエンドにするんだ。だから」
『わかった、ボクの力、あげる。ボクが彼女に出来なかった事、やって?』
「わかった。その使命、承りました」
『でも』
「?でも?」
『飲み込まれないで』
「……承知しました」




