四十二の曲〜過去に秘められた偽りの魔女〜
虐待、流血(たぶんいつもよりはぬめっと来るかな…?)要素有り。ご注意ください。嫌いな方は過去編が終わるまで待機お願いします!
ー数年前 ある小さな都にてー
「なんでっ!あんたなんかっ!生まれて来たのよ!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
まだ幼く、少年のような少女のような中性的な姿をした子が怒り狂う女に虐待を受けていた。暗い部屋の中、子に女がつけた傷が増えていく。
「あんたが!女だったらっ!悪魔様の生贄にしようとしてたのに!男のあんたじゃ話しにならない!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい男に生まれてごめんなさい女じゃなくてごめんなさい…女になるから…母さんの言う女の子になるからもうやめて……イヤだぁああああ!!!!」
誰にも子の叫びは聞こえない。
『……ボクは、虐待を受けていた。母さんに』
女は悪魔崇拝者だった。家の財産を全て悪魔…いや、悪魔様につぎ込むほどに狂っていた。女には元恋人がいた。が彼は女の異常なほどの悪魔崇拝を気持ち悪がり、遠ざけた。結果、破綻。だがそれは両者共に嬉しいことばかりであった。女は子を身籠ったのだ。女は「悪魔様の生贄は女。生まれたらこの子を生贄に。そうすれば…アハハ!」と。
だが生まれたのは女とは違う、男。女は怒り狂った。女が生まれなければ悪魔様に生贄を渡せない。なんで男なんか。そうか、悪いのは全部この子だ。この子が原因だ!
そして女は自分の怒りを子にぶつけ続けた。もはや子は女の怒りをぶちまける道具として存在しているようであった。都の者は子の存在を知らない。なぜって女が住民登録を怠ったからだ。まぁ知っていたとしても存在しない者として扱っていただろうが。
『次第にボクの心は』
「ごめんなさい…母さん…ごめんなさい…」
「あああ!なんて五月蝿いし要らない子なの?!生まなければよかったわ!」
女が子に背を向ける。暗い部屋の中、ランランと光る2つの瞳。
嗚呼、貴女のために努力したのにそれでもダメなの?愛してくれないの?都の女の子みたいに髪伸ばしたし、捨て物だった道具でオシャレだってした。それでも……それでも貴女はボクを男だと、要らないと言うの?ヤダよ、ヤダよ!愛して欲しいし必要とされたいよ!例えそれが、偽りでも、悪魔っていう化け物の力でもなんでもいいからっっ!!!
ーーー憎らしい、目の前の奴。
子は近くにあった棒切れを手に背を向けた女に向かって振りかぶった。
『壊れていった』
『人間が持つ、欲望によって』
真っ赤に染まったこの女は誰だっけ?嗚呼、ボクを虐めていた女だ。ごめんね母さん。でもボクね、
「愛されたいの♪」
欲望を求めて魔女は家を、都を、出て行った。




