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三十五の曲〜リーダー不在のお巫山戯パロディ〜

どんどん、どんどんと深い深い森を突き進む一行。と、ソラリスの足が止まった。目的地はまだまだ先のはずだ。


「…?ソラ?どうしたの?」


ルルの問いにソラリスは答えることなく、その手に杖を持った。それでようやっとルルも気づく。ルルも杖を持つ、とチラッと後ろを振り返った。そこには深い森が広がっているだけだ。というかさっきまで一緒だったユーリがまたいない。はぐれたのだろうか?

ルルは呆れながら、杖の先の紅いひし形に魔力を溜め始める。


ーガサガサ!ー


前方の木々が揺れた。一つ……二つ……三つ…敵は多くて5体いるようだ。と木々から黄土色をしたスライス状の魔物が飛び出して来た。


剣夢中ソード・ドリーム!」

「防御結界、物理攻撃防御率上昇!」


ガッ!と空中から現れた無数の剣がスライスを釘さしにして倒すが、別の魔物が2人を襲う。それにいち早く気づいていたソラリスが唱えた魔法によって2人の正面に紫色をした五芒星が描かれた結界が現れ、別の魔物の攻撃を防ぐ。


「!え?!うっそぉお!?」

「くっそ…!」


ルルの驚愕した叫びの理由はルルが倒したと思っていたスライス状の魔物だ。スライス状なため、無数の剣と剣の間に体をねじり込ませていたらしく攻撃を避けたのだ。スライス状の魔物は結界に攻撃している魔物と力を合わせて結界を壊そうとする。ソラリスはそれを防ぐために杖を地面と平行になるようにする。


「うわわ!どうしよ…?!」

「ルル!ユーリを早くっ!」

「う、うん!」

「っ!強い…」


ルルが後方を振り返った時、ソラリスが苦痛な表情で言った。防御結界、防御魔法と言っても魔力を使う。ソラリスはルルほど魔力が大量な方ではない。無くなるのも時間の問題だ。

魔物が全部、出てきた。5体でソラリスの結界を壊そうとしている。頭が良くないようなので横に回って来ないだけ幸いだ。

ルルは大きく息を吸い込み、ユーリの名を呼んだ。


「ふぅぅうう……ユぅううううううリぃいいいいい!!!!!」


深い森に響き渡るルルの声。魔物がもう一人仲間がいると気づき、結界を壊そうと、後ろに回ろうと動き出した。


「うぐっ?!」

「ソラ!!ユーリ!!何処なの?!」


徐々にソラリスが張った結界の威力が弱まっていく。そこに魔物が何度も何度も攻撃する。結界に傷つけられたダメージが結界と杖を通じてソラリスに伝わる。


「っ!ユーリ!」


ーザシュ…ー


何かが斬れた音に、途端に静まり返る。ビシャッと一体の魔物の脚が体から切断され、倒された。驚く魔物と2人。音の正体は魔物が出てきた所の前ら辺に立った、ユーリだった。


「呼んだ?」


クルッと顔だけで振り返り、言うユーリ。とその途端、魔物が全員、ユーリに襲いかかった。


「ユーリ!!」


ルルが悲鳴を上げる。がユーリは攻撃して来た小さな魔物を回し蹴りで飛ばすと腰に差した刀を引き抜く。顔の高さまで上げ、そしてピッと横に振るとスライム状の魔物と先ほどの魔物が途端に木っ端微塵になる。残り2体。ユーリは残りに向かってバッと刀を振り切ると魔物はいとも簡単に倒れてしまった。


「はぁ…はぁ…」

「〜〜〜〜〜!ユーリ!またどっかに行ってー!」


結界を解除し、息を吐くソラリスとユーリを怒るルル。ルルはユーリの様子が可笑しいことに気づいた。そして彼女の顔を覗き込むとユーリは恐怖に満ちた顔をしていた。


「!!??ユーリ?!」

「やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめておいていかないでおいていかないでおいていかないでおいていかないでおいていかないでおいていかないで」

「ゆ、ユーリ?」


不気味なほどに同じ言葉を繰り返すユーリ。ルルは戸惑いながらも気づく。ユーリも“過去”に囚われていることに。


「ユーリ、落ち着いて!大丈夫。ユーリのこと置いてったりしないよ」

「っ!……ごめんなさい、ウチちょっとネガティブ思考がたまに出ちゃうからさーごめんね?」


元のユーリに戻った。ルルとソラリスはほっとする。誰かに操られているというわけではないようだ。


「ウチさ、早くなおみんを助けたくて急ぎすぎちゃった」


あははと空元気に笑うユーリ。刀をしまいつつ言う彼女の頭をルルが優しく撫でた。優しい顔付きで、まるで下の兄弟を見つめるようだった。


「ル…ル…?」

「大丈夫大丈夫。ユーリはボク達の仲間で友達でしょ?ボク達が置いて行くわけないでしょう?まぁ、さっきの足並みはボク達も急いでて早くなっちゃったみたいだし、ごめんね?でも、大丈夫」

「ル、ル…」


ポロリ、とユーリの目から涙が零れた。涙はとどまるところを知らず、どんどん流れる。


「早くナオを助けに行こう」

「うん…うん!」

「その前にその涙、流しちゃえ。ナオと、大切な友達と会うのに涙は邪魔だろう?」


2人の近くにソラリスがやって来て言った。ユーリは吹っ切れたように笑い、ルルに縋り付くと崩れ落ちるようにしてナオを奪われた怒りと悲しみ、心細い思いを、あの時出せなかった鬱憤と憤りを涙と雄叫びで発散した。


「あ……あ…あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」


そんなユーリを見る2人の眼差しは彼女がナオとじゃれて楽しそうにしている時と同じ眼差しだった。



(…………ユーリの声が聞こえた気がした)

(…………無事でいて、ナオ)


頑張ります!

前回よりも長い物でね、この話。

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