十四の曲〜魔王様の思惑1〜
「シータ、ガンマ」
2人は次期魔王候補者及び魔王軍第六部隊隊長、つまりは自分の主の声にひれ伏した。
「「ハッ、なんでしょう?」」
2人は声を合わせて主に答えた。2人の主はそんな彼らを見て言う。
「さっきの報告は本当か?」
それに2人はそっくりな顔を見合わせ、「「はい」」と言った。それに主は笑い出した。
「ハハハハハハハッ!!やっと……やっと見つけた!!」
主は座っていた椅子の背もたれから背を離し、少し前のめりになって言った。
「その戦士を、連れて来い。その仲間だっていうもう一人は殺してもいい。他はどうでもいい」
「お伺いしてもよろしいですか?」
シータが聞くと主はいいと顎で示す。それにシータはありがとうございますと一度こうべを垂れてから言った。
「何故、その戦士を連れて来るのですか?」
いつもみたいに楽しそうに、おもしろそうにせず、真剣な表情だ。逆にガンマはすでに暇に、退屈になったらしい視線が空を舞っている。
主は嬉しそうに笑って言う。
「俺の勝手だろう?お前達には関係ない」
それにシータは納得がいっていないようだったが頷いた。するとガンマが「主ー」と腕を挙げた。
「なんだ?ガンマ」
「兄さん達も連れて行っていいですかー?」
「なんでだ?理由があるんだろう?」
「はいー。この前僕たちの宴を邪魔したんでぶっ殺☆したいんでー」
めっちゃくちゃ笑顔で殺気を放って言う。それに兄弟であるシータがうっと顔をしかめた。
この前の(シータとガンマで言う)宴はあの2人の戦士のせいで魔物が全滅し、主に捧げられなかった。だからこそ今度は主の命令でその片割れを連れて来ることになったとしてもどっちかはこの前の復讐くらいはしたいのだ。
「嗚呼、その戦士以外は要らない。だから思いっきり殺っていい」
「わーい!ありがとうございます!」
「あっガンマ!もぉー…では、失礼します」
勝手に兄達を呼びに駆けて行ったガンマを叱りながら、シータは主に一礼し、後を追った。
一人静かになった部屋、というよりも広間で主こと青年は喜んでいた。
ずっと一緒にいると約束した“あの人”、大好きで愛していた“あの人”。その人がやっと…。
だが彼の言う“あの人”はとうの昔に亡くなっている。それでも彼は“あの人”の面影を誰かに求めているのだ。身勝手な、哀れなほどに。
“あの人”がいればいい。“あの人”を奪ったカミも世界も要らない、壊れれば…いい。
例え、本物でなくとも………