九の曲〜都での一日〜
のんびり投稿〜です
「ーーーーーっ!!!」
手を伸ばし、片手で布団を握り締めながらユーリは目を覚ました。ゆっくりと起き上がり、何事もなかったように「うーん」と背伸びをする。
一番辛いのはナオなのだ。それをよく、ウチは知っている。
ユーリはベットから降り、バシャ!とカーテンを両手で開ける。外から眩しい太陽の光が入ってくる。ユーリはすでに賑わい出している商店街を見て笑うとナオが寝ているベットに飛び込んだ。
「なおみーーーーん!!!!おっきてぇえええ!!!!!」
「………………うるせぇええええ!!!!」
ナオ、不機嫌にご起床です。
***
ナオが不機嫌そうな顔で朝食のスープを飲む。
今、2人がいるのはあの村の人々が言っていた都、第三都市の一つ、ロクドーヴァだ。商売や漁業、そして『冒険者』が集う都である。
2人は一応、ギルド登録のため、「ギルド連合」の建物に行った。するとなんと登録されていた。カミサマがやってくれたらしい。ここだけは感謝だ。
「ギルド連合」が『冒険者』に提供している宿がある。しかも三食付きで料金はどの部屋も同じで100ギーク(1円=100ギーク)。これほどいいことはない。2人が持っていたお金は現実のゲームでも裏側でも同じらしく、2人にしてみればとても便利だ。多額のお金があるので、ね。
2人がいるのは「ギルド連合」が提供している宿、「太陽の館」だ。そこの食堂で朝食中だ。
「…………………」
「ごめんってばーなおみんー」
「……………………」
「ごめんー」
ユーリが今だ朝食を食べるナオにテーブルを挟んだ反対側から両手を合わせて謝る。朝食をすでに食べ終わっていたユーリはひたすらに謝っている。
ナオは謝り続けるユーリが可哀想になってきた。ので朝食を食べる手を止め、ため息をつきながら言った。
「もう、いい。分かった」
「ホント?!ホントに許してくれるの?」
「嗚呼、ほらもういいから」
ナオが許してくれてユーリは嬉しそうに笑い、「ありがとう」と言う。それにナオは何も答えずに再び朝食を食べ始めた。が、
「オイ、そこは俺達のところだぜぇ?退けよ」
男の、ひどい声。それにナオは「あ"あ"?」と怒気を含んだ低い声を発した。ユーリは頬杖をつく。
男は仲間連れの『冒険者』のようだ。4人の男が女子2人を囲んでいる光景は周りの『冒険者』及び人々にとっていい気はしない。女性の『冒険者』達は心配そうに2人を見ている。
「なんだお前ら。ここは今、俺達が使っている。それにここはお前らだけのところじゃねぇ」
怒気を含んだ低い声を響かせ、ナオは下から男達を睨みながら言う。一番最初にナオとユーリに口出しした男が少し狼狽える連れを尻目にハッと鼻で笑って言う。
「女のくせに生意気な。この俺達、『キングドラゴンズ』と知ってのことかぁ?」
それに周りがざわめく。
『キングドラゴンズ』、『冒険者』のギルドの一つでルールの守らないならず者や暴力的な輩が集まるギルドだ。今はそのメンバーの殆んどが他のギルドに移っている。もちろん、良心的な人物になって、だ。所詮、暴力等で寄せ集めたギルドだ。そういう認識が『冒険者』の中でも『キングドラゴンズ』は強い。
だとするとこの男は『キングドラゴンズ』のリーダーということになる。
「知らん。俺は弱い奴らには興味ない」
それに男は血が頭に登ったらしい、なんと短気なことだ。男はダンッと手をテーブルに強く叩き付け、言った。
「おめぇは俺に殺されてぇのか?!」
「うわー短気ーめっちゃ短気ー。なおみんはただ、“興味ない”って言っただけなのにね」
クスリと笑うユーリ。それにかッと男は顔を赤くし、怒りをあらわにした。
「さっさと失せろ。迷惑だろうが」
ギロッと睨むナオ。それに男はそのまま出て行った。連れも慌ててついていく。
きっと奴らとは“大会”で当たる。そう思いながらナオは再び、朝食を食べ始めながらユーリの話を聞いていた。
***
2人は朝食を終え、都の『冒険者』のギルドのみ出場を許された大会、『冒険者トーナメント』に出るために控え室にいた。
これが先ほどの“大会”である。
ルールは『冒険者』、2人〜10人のギルドのトーナメント形式で大会名そのままだ。男女混ざっても構わないし、魔法、スキルを使っても構わない。相手ギルドのリーダーに「参った」と言わせればいいだけだ。殺すのはご法度だが。
ちなみに優勝賞品は1万ギークと「太陽の館」1年間無料券。2人はこれからの予備金として1万ギーク狙いだ。
さてさて、貼られたトーナメント表を見上げる2人。最初の対戦相手は?