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で、家まで送ってもらうことに。
私の借りているアパートは、大学から電車で二駅。駅前の商店街を十五分ほど歩いた後、狭い路地に入って五分ほど歩いたところにある。王子先輩のバイクに乗ったら、深夜だったせいもあるけど二十分ほどで路地の入口まで着いてしまった。
そこからは、狭くてバイクでは走れないから、ここまででいいです、って言ったのに。
「何を言ってんだよバカ。そういうところが一番危ないんでしょうバカ。最後まで送ってくよバカ」
わざと言ってるだろう。バカバカ言わないでほしい。
あと、いいから私のことなんか放ってさっさと帰ってほしい。それでも、バイクを引きずりながらついて来る。ホント、ウザい。
「街灯もなくて真っ暗な路地を歩いた突き当り……」
なんか、私の後ろでボヤキが聞こえる。
「ど貧乏な物件に住みやがって」
「ハイ? 今、何かおっしゃいました?」
ムカつくのでツッコんでやると、
「何? 何も言ってないけど?」
とか。白々しー。
私が頼んでついて来てもらってるんじゃないんですけど! むしろ、一貫して「帰ってくれ」ってお願いしてるんですけど!
で、アパートの真ん前までなんとかたどり着いた。
「ここまで来れば大丈夫だろ。じゃ」
王子先輩はノロノロとバイクを方向転換させる。重そう。見栄張って、大きなバイクに乗るから。
「明日も練習するから。ステップをちゃんとさらっておけよ」
「あ。王子先輩」
私は先輩を呼び止めた。
「ここまで送って来ていただいたんですから。上がって、お茶でも飲んでいってください」
「はあ?!」
あれ、珍しい。あの王子先輩が、超ビックリした顔してる。
「ク、クズひま。お前、何言ってるのか分かってるのか?」
その呼び名、やめてほしい。
「ハイ? 何ですか? 分かってますよ?」
何を言ってるのだろう、この人は。あと、この時間にその大声は近所迷惑だからやめて下さい。
「って、お前??」
なんか、ものすごく焦った様子で私を見る王子先輩。ホント、意味不明だな、この人は。
「何でそんなヘンな顔してるんですか? お綺麗なお顔が台無しですよ」
私は首をかしげた。
「ちゃんと分かってますよ。おもてなしもせずにお帰りいただいたら、王子先輩は後でまたネチネチと文句をおっしゃるでしょう?」
送ってやったのに礼の一つもないとか。
こっちが頼んで送ってもらったわけでもないのに、そういうことを言い出すに決まってるのだ、この底意地の悪い人は。
「あれ、王子先輩? 何で黙ってるんですか?」
王子先輩は、キレイな薄茶色の目でキッと私をにらみ。
いきなり、無言で私の頭をはたいた! 痛い!
「イタイ! イキナリ何するんですか?! ヒドイです!」
抗議をすると。
「ウルサイ! ヒドイのはお前だ、このバカ女!!」
罵りかえされた。
「余計な気を回してソンした! 分かったから茶でも何でも淹れてみろ! その代わり、まずかったらもう一回ぶっとばすからな!!」
超不機嫌である。何なんだ、イッタイ。
ホントにもう、ワケが分からない。気を回したって、何に?




