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電車に乗った。大学とは反対の方に。
どうせ、行く先なんか分からない。だから、カンに任せる。
父から、「一部のヒトにしか見えないヒト」と気持ちを通じあわせるための簡単な方法を私は習っている。まあ、そんな方法使わなくても、私はフツウにしゃべっちゃうことが多いんだけど。「誰にでも見えるヒト」との区別がつけにくいんだよね。そう言ったら、父は呆れていた。
まあ、それはともかく。
その方法は、「一部のヒトにしか見えないヒト」と話すためだけでなく、第六感を研ぎ澄ます役にも立つ。
人は探したことはないけれど、この方法でなくなったモノを見付けたり、必要なモノを探し出したことは何度もあった。
だから、今度も絶対。確信がある。きっと、見付けられる。
県庁所在地の駅で電車を降りて、地下鉄に乗り換えた。そして三駅。地上に出ると、潮の香りがした。海が近いらしい。
そして、駅前に広がる歓楽街を、私はゆっくりと歩き出した。
足の向くままに、道を歩いた。
途中、目に付いた人に声をかけ、
「ここはどのあたりですか」
とか、王子先輩の特徴を話して、
「こういう人を見ませんでしたか」
と尋ねてみる。
大体が「一部のヒトにしか見えないヒト」だったので、場所の情報しか得られなかったけど。
「一部のヒトにしか見えないヒト」たちは、自分の抱えている問題でいっぱいいっぱいなので、他の人にはあんまり興味がないんだよね。
それでも。多分、道は外れていないと思うんだけど。
「誰にでも見えるヒト」ではなく、「一部のヒトにしか見えないヒト」が目に付くのは、多分。私の感覚が今、研ぎ澄まされているから。
だからきっと、王子先輩に近付いている。そう思いたい。
ギラギラと眩しいゲームセンターの看板が目について、中に入ってみる。
見て回ったけれど、王子先輩の姿はなかった。
一人でコインゲームをやっている男の人が目について、声をかけてみる。
「あのう、スミマセン。人を探してるんですけど。私より頭一つ分くらい背が高くて、顔がキレイで、王子様みたいな人、見ませんでしたか」
返事がない。聞こえなかったのかな。
私はその人の耳元に口を近付けて、もう一度大きな声で言う。
「スミマセン、あの! 人を探してるんですが!」
「っるっせぇな!! いきなり何すんだ!!」
怒鳴り返された!
しまった。今度もてっきり、「一部のヒトにしか見えないヒト」だと思っていたら、今度は「誰にでも見えるヒト」だった。
だってさ。「一部のヒトにしか見えないヒト」は、自分の思いに沈み込んでいる人が多いんだもん。こっちに注意を向けさせるには、結構自己主張しなきゃダメなんだもん。
「何だ、この女。ジャマしやがって」
「す、スミマセン。あの、人を探してまして」
「そんなの俺の知ったこっちゃないんだよ」
立ち上がって、凄まれた。そ、それはそうかもしれないけど。
「こ、こっちもせっぱ詰まってまして。おジャマをしてしまったのは、大変申し訳なく思うのですが」
「じゃあ、初めからゲームし直すから、金払えよ」
うわあ、困った。そんなにお金持ってないし。




