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その後。みんなとご飯食べたり、しゃべったりしながら、待ったけど。坊ちゃん先輩からも委員長からも、メールは来ない。あの二人のことなんだから、王子先輩が見つかったらすぐに連絡をくれると思うのに。
メールも、電話も来ない。
だから、落ち着かない。楽しくないよ。
坊ちゃん先輩から聞いてしまった、王子先輩のことが頭の中をグルグルする。
あんなに仲良さそうな家族に見えたのに。
あんなにお母さんが大好きだ、って言ってたのに。
わけがわからない。
何がどうなってるのか、ちっともわからない。
気が付くと、みんな席を立って、会計の用意をしていた。
四年の先輩が代表でお金を払っていて、三年の先輩がみんなからお金を集めてる。
「お酒飲んでない子は二千円でいいよ」
割り勘すると。王子先輩を思い出す。王子先輩なら、問答無用で平等会計だ。
それで、ますます暗い気分になってしまった。
みんなはカラオケに行くって言ったけど、そんな気分になれなくて、一人で帰ることにする。みんなには、疲れたから、って言った。
電車に乗って、二駅。駅前の商店街は、もうほとんどシャッターが閉まっている。その道を、一人で歩く。
(明日は、僕じゃない男がきっとお前を送って来るからさ……)
そう言って、王子先輩は私の髪をくしゃっとなでた。
王子先輩の嘘つき。そんな人、いないよ。
なでられた辺りの髪を、そっと触った。
心配し過ぎだ、っていう委員長の言葉にうなずきたいのに。
坊ちゃん先輩の不安そうな顔が、私の中に陣取ってしまって離れない。
角を曲がって路地に入る時、立っていた女の人が私に声をかけた。
「アラ。今夜はひとりなの?」
「ええ。あのヒト、もう来ないんですよ」
「そうなの? 仲良さそうだったのに。まあ、あんまり気を落とさないでね?」
「イエ、別に仲良くはないんですけどね。でも、ありがとうございます」
通り過ぎて振り返ると、もうその人の姿はない。だって、「一部のヒトにしか見えないヒト」だったから。
王子先輩がいたら、鳥肌立ててものすごいカオするのに、と思った。
笑うつもりだったのに、笑顔にならない。
もし、本当に王子先輩がこのままいなくなっちゃったら。
そう思ったら、淋しくてたまらなくなった。
いつかは、別れて会わなくなる。そんなの分かってる。私と王子先輩の縁は細い。きっと、先輩が卒業しちゃったら、それまでだろう。
けど。今はイヤだ。そんなの、早すぎる。
まだいなくならないで、王子先輩。王子先輩がいないと、楽しくないよ。
私は。足を止める。アパートはもう目の前、だけど。
こんな気持ちのまま、家でゆっくりなんかしていられない。
くるりと踵を返して、来た道を戻り始めた。
どこにいるかなんて、分からない。
王子先輩が行きそうなところも、私は知らない。
だけど、探す。探して、見付けだして。
みんなに心配かけるんじゃない、って言ってやらなきゃ。
でなくちゃ、私は今晩、眠れない。
本当に、あのヘタレ男、いつもいつも迷惑ばっかりかけて。
オバケが怖いくせに、夜の町をほっつき歩いてるんじゃない!




