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「で、お前はどうしてそんな話を久住さんにしてるんだ?」
と、私の後ろから声がした。
「いや。アイツはなんだかんだ言って、久住さんには気を許しているみたいだし、知っておいてもらっても良いかと」
答える坊ちゃん先輩。
「そんな状況でこんな話を聞かせて、後輩を不安にさせるだけとは思わないのか?」
「だって、久住さんもあの場にいたし、状況を知りたいだろうと……え?」
私の横を大股に通り過ぎる人影。
「高原、少し落ち着け」
そう言って、やってきた委員長は手に持っていた丸めた今日の台本で、思いっきり坊ちゃん先輩の横っ面を張り飛ばした!
ひゃあ、何ですか、この突然のバイオレンス!
「いた! 痛いぞ樫村! いきなり何をする!」
顔を押さえて抗議する坊ちゃん先輩。
しかし委員長は涼しい顔だった。
「だから落ち着けと言っている。バカか、お前は。何で、坪田なんかを探すのに後輩まで巻き込もうとしている」
言い返そうとする坊ちゃん先輩。
しかし、委員長は更に畳みかける。
「いいか。坪田はアレでも成人男性だ。たかだか二、三時間姿が見えないくらいで騒ぎ立てたら、警察でだって冷笑される。一晩や二晩帰って来ないくらい、珍しい話でもないだろう。そこを考えろ」
坊ちゃん先輩はぐうの音も出ない様子。
私、坊ちゃん先輩がここまでやりこめられてるとこ、初めて見たかも。
「だがな、樫村。アイツは」
沈痛な表情で、坊ちゃん先輩が反論しかけたのを。
「俺は坪田の事情にも坪田の家族ゴッコにも興味はない」
委員長はスッパリと言い捨てた。
「お前が深入りするのは勝手だが、久住さんまで巻き込むことはないだろう。ちょっと冷静さにかけているぞ、高原」
黙り込む坊ちゃん先輩。
「あ、あのう。樫村先輩は、高原先輩や王子先輩とは」
つい、口をはさんでしまう私。状況が読めない。
「高校の同期だ。男子寮で同じ釜の飯を食った仲だ」
そういうつながりだったのか! 意外な縁だな。
「そういうわけで、遺憾ながら坪田のメチャクチャぶりも、坪田の家族なんかがこの辺りに住んでいるわけがないことも知っているんだ」
委員長はそう言って、ため息をついた。
「しかし、高原までがこうも暴走するとは。お前が歯止めにならなくちゃダメだろう」
坊ちゃん先輩はうなだれてしまった。
「久住さん。朝も言っただろう。坪田の事情に深入りしない方がいい。君は他のみんなと、打ち上げに行きなさい」
委員長はそう言って、坊ちゃん先輩の横に立った。
私には、早く行けと言うように身振りで示す。でも。
「樫村先輩は? どうなさるんですか」
「どうするもこうするも」
委員長はため息をついた。
「坪田の行方なんか、どうでもいいが、高原には高校時代の借りがあるからな。手が足りないと言うなら、俺が手伝うしかないだろう」




