表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎の王子先輩  作者: 宮澤花
シンデレラの魔法
81/104

「い、いや、いいんだ」

 ひきつりながらも笑顔を作ってくれる坊ちゃん先輩。

「久住さんは素人なんだし、気楽にいこう」

 うう。その気遣いが逆に胸に痛い。


 いっそ、王子先輩みたいに、

「何をするんだ、このどヘタクソ!」

 と怒鳴りつけてくれた方がマシな気がする。


「じゃ、次のターンから曲に戻るぞ」

 そう言って私の手を握り直してくれる。

 でも、何だかこれじゃ、ダンス教室の先生と生徒みたいだよ。全然ロマンチックじゃない。


 ゴメン、王子先輩。あんなにいっぱい、高いモノ買ってくれたのに。

 やっぱり、私には魔法なんかかからなかった。

 こんなところに来ちゃ、いけなかった。

 思い上がって、一瞬カン違いをしただけ。


 それをこんなところで、思い知らされて。

 みんなの注目の中で。恥ずかしくて、もう一歩も足が動かない。


「久住さん? ホラ、踊ろう」

 手を引っ張ってくれる坊ちゃん先輩。

 ゴメンナサイ。坊ちゃん先輩にまで恥をかかせて。でも、私。もう。



「はい。タッチ、交代」

 後ろで、大きな声がした。

 同時に私は、大きな手に腰を抱かれて、クルリと半回転する。

 ナルさんの日に焼けた顔がそこにあって、ニコニコと私を見下ろしていた。


「ちょっと! その人は俺のパートナーだぞ!」

 あわてる坊ちゃん先輩の声。

「ダーメ。時間切れ。女の子を楽しませてあげられない男は、かわいい子と踊る資格なんかないんだ。肝に銘じとけ、コースケ」

 そう言って、ナルさんは私を抱いたまま、クルリとターンする。


「あきらめな。オバサンで悪いけど、私が付き合ってあげるよ」

 礼子さんが坊ちゃん先輩の手を取るのが見える。

 坊ちゃん先輩は呆然とこっちを見ていた。いや、私もわけが分からないし。


 そんな私に、ナルさんは洋画の黒人さんみたいにニカッと笑ってみせた。

「そういうことで。楽しんでいこうぜ、ヒマワリちゃん。なーに、軽い気持ちでいいんだよ。こんなの、祭りの盆踊りと一緒だ」

 抱き寄せられると、白いワイシャツ越しでも海の匂いがした。

 ヨソのおじさんとこんなに距離が近くていいのかな、って思う半面、しっかり支えてもらえて、何だかすごく安心した。


「そう、体の力を抜いてな。俺がリードするから、それに合わせて動けばそれでいい」

 ナルさんは優しく声をかけ続けてくれる。

「ステップとか、難しいこと考えるな。音楽に合わせて、好きなように動きゃ、それでいいのよ。元々そういうもんだろ?」

 そう言うナルさんのダンスは、本当に曲に合わせてただ漂っているようで。

 それなのに、他のペアの邪魔になったりもせず、私たちはスイスイと進んでいる。不思議。


「どうだ? 音楽、聴こえるようになったか?」

 あ。そう言えば。


 私はうなずいた。

「は……はい。聴こえます」

「だったら、ちゃんと聴いてやりな。いい曲なんだから、聴かなきゃもったいないだろ」

 ウインク。うわー。何というか、王子先輩・父だなあ。こんなのが様になるオッサンが、一般社会に棲息していようとは。

 オジサン、侮りがたし!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ