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最終的に、他の組はフロア脇によけ、ナルさんコンビと王子先輩コンビだけが中央に残った。誰かが合図したとかじゃなく、二組が上手すぎたのでみんな自然に遠慮したんだろう。
新しくかけられた曲に合わせて、四人が踊り出す。
これは、みんなから大喝采だった。
ナルさんたちのひたすら派手なパフォーマンス、王子先輩の華やかで流麗なステップ。
どちらも魅力的で、どっちを見たらいいのか迷うくらい。
ダンスって、本当にステキなんだな。なんか、興味ないとか思ってて損したかも。
結構深い世界なのかもしれない。
曲が終わるとともに、この突発的なイベントは終了した。
また新しい曲が始まり、みんながフロアに戻ってきて、ダンスパーティーは通常どおりに戻る。
その中で、ナルさんが王子先輩たちに声をかけるのが見えた。
二言、三言話し、王子先輩が礼子さんの手を離す。ナルさんがその手を取り、またダンス会場に引っ張っていく。
王子先輩も、坊ちゃん先輩のお母さんと二、三言話したが、すぐに別れ別れになった。
面倒くさそうな動きでダンスの輪をはずれた王子先輩は、私たちの視線に気付いてこっちに寄って来た。
「いーい度胸だな、貴様。俺の母のダンスの誘いを断ったな?」
坊ちゃん先輩が声をかける。
王子先輩は、いつものように無気力に答えた。
「ああ。僕は母としか踊らないんです、って言ったら快く納得してくださったよ」
どいて疲れた、と坊ちゃん先輩を押しのけて、ベンチに腰を下ろす。
「あと、理事長さんや、息子さん方とダンスなさった方がいいんじゃないんですか、って言ったんだ」
飲みかけのスポーツドリンクを坊ちゃん先輩から奪い取り、ゴクゴクと飲む。
坊ちゃん先輩が目を丸くした。
「お前! 俺たちに振るなよ、この年で母親とダンスとか俺はゴメンだぞ?! お前みたいなマザコンとは違うんだ」
と怒鳴るが。
王子先輩はどうでも良さそうに言った。
「じゃあ、さっさと踊ってくれば?」
はあ? と聞き返す坊ちゃん先輩。
王子先輩はそれを無視して私の方を向いた。途端に顔がキツくなる。
「おいクズひま! お前、そんなところで何をしてるんだ?!」
「は、はい?!」
突然の攻撃に、満足に返事が出来ない私。そして、そこに更に襲いかかる王子先輩。
「せっかく僕が一か月も貴重な時間を使って特訓してやったのに! お前、一曲も踊らないで帰るつもりか? 許さないぞ」
ヤバい、矛先が完全にこっちに向いた。
「いえ、でも私。ほら、パートナーもいませんし」
「だから! せっかく、僕が服を買ってやったんだから、そんなのこの場でつかまえろ、って言っただろ!」
そんなこと言われても。
「あのですね。そういうことのコツというか、ノウハウというものが私、さっぱり分かりません」
逃げ腰になる私。
「ていうか、何でお前、久住さんに服とか買ってやってんの?」
唖然とする坊ちゃん先輩。
そうだよねえ。フツウ、ビックリするよねえ。私が一番ビックリしてるけどね。
「だってしょうがないじゃないか! この女の私服のセンス最悪なんだ!!」
とおっしゃる王子先輩。
「イヤ、しょうがないの意味が分かんねえよ」
ウンザリしたような口調でツッコむ坊ちゃん先輩。
「お前ら、どういう関係なんだ」
それ、私も知りたいです。真剣に。




