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謎の王子先輩  作者: 宮澤花
シンデレラの魔法
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 講堂の入り口まで来た時。中から、すごい歓声が聞こえた。

「ん? なんかやけに、にぎわってるな」

「ダンスは例年盛り上がりますから」

 とは言ったが、この若い女の子のキャーキャー言う声。

 確かに、芸能人が来てるのか、と思うくらいの騒ぎだ。


 その原因は、会場を見たらすぐに分かった。

 真ん中のの目立つところで、一組のペアがクルクル回っている。

 優雅な身のこなし。複雑なステップ。そしてあでやかなルックス。着飾った社交ダンス部員の中で、Tシャツジーンズなのにものすごく目立っているあの人は。


「王子先輩……」

 今日はひときわ王子度が高いな!

 そりゃあ、女の子がキャーキャー言うわ。


「相変わらず、ムダに派手だなアイツは」

 坊ちゃん先輩が渋面を作った。

「学祭では踊らないんじゃなかったんですか」

「そう思ったんだが」

 言いかけた坊ちゃん先輩が、何かに気付いたように言葉を止める。そして、すごい勢いで私を見た。

「久住さん?! まさかと思うが、アイツをダンスに誘ったりとかしたのか?」


「何をおっしゃるんですか!」

 思わず叫んでしまう。

「そんな恐ろしいこと! するわけないじゃないですか!」

 というか、もうコリゴリだし。


「ところで、王子先輩と一緒に踊ってるのって」

 先輩と同じく、Tシャツにジーンズのラフな姿だが。

「礼子さん……だな」

 坊ちゃん先輩はうなずいた。

 まさか、あのマザコン発言を公衆の面前で現実にするとは! 王子先輩、侮りがたし!!


「本当に踊っちゃうんですねえ。確かに、学祭では誰と踊るんですか、って聞いたら『お母さんと踊りたい』とおっしゃってましたが」

「そうなのか」


 坊ちゃん先輩は、コホンと咳払いする。

「あー、あのだな、久住さん。あのアホウとずいぶん親しげに学祭の話をしていたようなんだが?」

 ああ。そうか。

 ダンス特訓までは、坊ちゃん先輩のいないところで王子先輩と私が話をするなんて、ほとんどなかったし。


 言っちゃっても、いいかな。

 王子先輩には、「学祭が始まるまでは絶対に」特訓のことを言うな、と言われてただけだし。ということは、学祭が始まったら解禁、でいいんだよね?

「実はですね」

 決めた。いいや、話しちゃえ。


「何だか分からないんですが、一か月ほど前から王子先輩が『学祭に備えて特訓だ!』とかおっしゃって、毎日毎日、講義が終わると私を連れ出して、ダンスの特訓を」

「はあああ? 何だソレ?」

 坊ちゃん先輩は、あんぐりと口を開けた。

「アイツ、最近つかまらないと思ったら、そんなことしてたのか?」

 そうなんです、と私はうなずく。


「私はダンスとか興味ないですし、丁重にお断りしたんですが、『お前の意志なんか聞いてないんだよ! 僕がやれと言ってるんだ!』と強引に押し切られてしまって」

「イヤ。それ、強引というより、もう人権を認められてないよな?」


「それで毎晩毎晩、王子先輩と血のにじむような特訓を」

 思わず足をさすってしまう私。

 本気で血がにじんだもんなあ。ステップ間違えると容赦なく足踏んだり蹴られたりするし。


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