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「大体、そんなこと言うんなら。相手は確保してあるんだろうな?」
根回ししたんだな、とキレイな顔で凄みをきかせて確認してくる王子先輩。確保って。刑事ドラマで犯人つかまえてるんじゃないんだけど。
「あのですね。この一ヶ月の私に、そんな時間があったと思うんですか?」
聞き返す私。
「毎日毎日、ほとんど全ての日、講義が終わるとすぐに王子先輩に拉致られてダンスの特訓。そんなヒマなかったですよ!」
「何だと」
唖然とした表情で私を見る王子先輩。
「ということはつまり。お前、明日のダンスパートナーが決まってないのか?」
「ハイ」
うなずく私。
「バカかお前! それじゃあ、何のために特訓したんだよ!」
怒る王子先輩。
だから。私はダンスには興味がナイ、と何度も言ったじゃん。
先輩は、「あーもう、何やってるんだよ」と呟いて、ソファーの上で寝返りした。
「何なんだよ。一番大事なところが抜けてるじゃないか」
ウダウダしながらブツブツ言う王子先輩。
「何のために僕が、一カ月も時間を潰してやったんだ。無意味じゃないか」
また、上から。
だから、私は頼んでないっ。
「それはどうも、申し訳ありませんでしたねえ~~!」
怒りながら言う私には目もくれず、王子先輩はため息をつく。
「まあ、いいか。当日申し込みされる可能性もまだ残ってるし。お前、服は用意してあるんだろうな。ちょっと見せてみろ。お前のセンスは最悪だから、心配だ」
服って。
「用意してませんよ」
社交ダンス部の人たちは、ダンスパーティーの華だから、みんな素敵なドレスで着飾るんだけど。
一般参加者はもちろん平服だし、そもそも私はダンスパーティーに参加する気持ち自体がナイ。
そんな私が特別な服を用意しているなどと、どうしたら思い込めるのか。
「よ、用意してない?!」
なぜか愕然とする王子先輩。
「用意してないってどういう意味だよ?!」
「ですから。私はダンスパーティーに参加するつもりも予定もないとあれほど」
言ったんだけど。聞く耳を持ってなかったからなあ。
「それに、私、役員ですから。裏方が忙しくて、そんなヒマありませんよ」
文化会連合会のメンバーは、ほとんどが大学祭実行委員会の役員も兼ねている。
私も明日は、いろいろな催し物の裏方で、分刻みのスケジュールで動かなくてはいけない。
「そういうわけですから。ムリですよ」
「ムリって!」
ガバッと起き上がる王子先輩。
「どうするんだよ! それじゃあ、この一ヶ月の僕の努力がカワイソウすぎるじゃないか!」
知るか。そんなの。




