表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎の王子先輩  作者: 宮澤花
食べ物は大切に
61/104

「ああ、もう。時間のムダだった。もう帰る」

 王子先輩は、音を立てて椅子から立ち上がった。完全不機嫌モード。

「ハイハイ。お呼び立てしてスミマセンでした」

 言っとくけど、私だって不機嫌だよ!


 すると。先輩は、黙って私の方に右手を突きだした。

 何のつもりだ?

 えーと、この体勢は。


 とりあえず、黙って王子先輩が差し出した右手を握り返してみる。

「違う! 何するんだ、バカ!」

 思いっきり手を振り払われた。

「違うだろ! 持って帰ってやるから、その肉団子をよこせ! いっぱいあり過ぎて困ってるんだろ?」


 え?

「だって、お口に合わなかったんじゃ?」

「だから、僕の口に合わなかったのはお前のド下手くそな味付けだよ! 食材自体は悪くないって言ったろ?」

 僕の話をちゃんと聞け、とプンプン怒る先輩。


 あれ、でも、それって。要するに。

 なんだかんだ言っても、私が困ってること覚えててくれたわけで。

 ヤバい。何だか頬が熱くなる。

「あ……ありがとうございます」

 素直に、嬉しい。


 私は冷蔵庫を開けた。

「どのくらいがいいですか? 四人家族だから、多めでもいいですよね? お父様とかいっぱい食べて下さいそうですし」

 そう言って、振り返ると。あれ、心なしか先輩の顔がこわばっているような?


「王子先輩?」

 声をかけると。ハッとしたように私を見て、それからきれいにそろった眉毛を釣り上げる。

「どれだけもらったんだ! いくらなんでも、もらいすぎだろう!」

 怒りだした。

「冷蔵庫の三分の二くらい、肉団子のタッパーじゃないか! こんなにもらって、どうする気だよ?!」


 いや、怒られても。

「ええと。相田さんも、実家から大量に送られて来て困ってるって言ってたから、つい」

「つい、じゃないだろ! どう考えても女一人で食べきれる分量を超えてるよ」

 呆れ果てたという目で、私を見下す王子先輩。


「だって、アパートの他の人にも全部配り終わったのに、いっぱい余ってるって言って、困ってたから」

「バカ! 他の住人は常識的な量だけをもらったんだよ、それくらい分かれ!」


 結局。

「もういい! 全部よこせ!」

 王子先輩はヤケになったように叫んだ。


「ハイ?」

「ハイじゃない! 僕のウチなら、近所の人におすそわけしたり、お父さんが漁に出る時にお弁当に入れていったりできるから、量がさばける。お前は、この」

  と言って、テーブルの上の料理を指す。

「犬のエサを地道に片付けてろ。一度料理してあるから少しはもつだろ」

 だから、失礼だな。これでも一生懸命作ったんだし。

 でも。全部、って。


「それで!」

 わめいた王子先輩の頬は、少し赤く見えた。

「明日はダンスの練習が終わった後、僕の家に連れて行くから。お母さんにお願いして、お前の分もこの団子を料理しておいてもらうから、ちゃんと味わって食べろ。そして自分の料理の腕の悪さをちゃんと認識しろ!」

 色素の薄い目で、ジロリとにらみつけられる。

「こんなんじゃ、高原がカワイソウだ!」


「ハイ? 坊ちゃん先輩がどうかしましたか?」

 王子先輩は私の言うことを全スルーする。まあ、いつものことだけど。

「とにかく! サッサとそれを全部包んで僕によこせ!」

 もはや、ただの命令。


 こうして、相田さんの奥さんの故郷の名物は、王子先輩の家で大量調理され、ご近所にふるまわれることになったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ