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王子先輩は少し考えるように黙り込んだ。
「オイ、待て。それ、ホントにオイシイの?」
「ハイ? おいしかったですけど?」
「ホントに? お前の味覚とか信用できない。あんなマズイお茶を客に平気で出すようなヤツだからな」
失礼な!
「ホントにホントですってば!!」
今度は王子先輩がため息をついた。
「分かった。じゃ、こうしよう。今夜、いつもくらいの時間にお前の家に行くから、その時にソレ食べさせてみろよ」
細いあごをそらせて、いつもの偉そうな口調で言う。
「僕が食べてみて、お母さんに食べさせてもいいようなモノかどうか判断する。それで、ホントにおいしければもらっていってやるよ」
相変わらず、上からだな!!
でも。
「彼女さんは? どうするんですか」
「いいんだよ。家庭のある女だから、真夜中前には家に帰さなきゃいけないんだ。ホント、メンドクサイよね。何かって言うとワガママ振りかざしてさ」
家庭のある女って。
「ああ。不倫なんですか」
今度は年上かい。どれだけ守備範囲広いんだ、この男。
というか、リアルで不倫してるヒトって初めて見た。見たくもなかったけど。
「アレ? でも、一つだけ確認させて下さい。もし、王子先輩のお口に合わなかった場合、相田さん家の肉団子はどうなるんでしょう?」
「決まってるだろ?! そんな犬のエサ全部捨てろ!」
怒鳴られた! ひい、鬼ですか!
「あ。もしくは野良犬にでもやっちまえ」
何かに気付いたように前言を翻す王子先輩。
何に気付いたのか知らないけど、ウン、食べ物は大切に。
でも、とりあえず。あの肉団子を何とかする算段はつきそうだ。
「分かりました。じゃ、お待ちしてます」
小声で言うと。
「じゃあ、そういうことで」
王子先輩もうなずく。
「分かってるだろうけど、僕を満足させられなかったら」
ひいい。どんな罵詈雑言が待っていることか。
「全力を尽くします!!」
それだけ言って、私たちは「じゃ」と挨拶して別れた。
これは、大変な約束をしてしまった! 気合入れて料理しないと!




