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その手紙の内容。
久住ヒマワリ様。
僕は体調を崩してしまい、残念ながら数日の間はお顔を拝見することが出来ません。
熱にうなされる中、思い出すのはアナタのおっしゃった言葉ばかりです。
母が僕に薬を盛ろうと待ち構えているので、回復するまでもうお便りを出すこともかなわないと思います。
でも、このことだけは忘れないでいて?
僕はアナタの言っていたことを忘れられそうにありません。(下線付き)
ではお元気で。またお顔を見ることが出来るのを、心から待ち望んでおります。
追伸:僕がアナタに言ったことを決して忘れないで
何……。コレ。
「きゃああ? 何コレ? ラブレター?」
手紙を覗きこんだ麻美ちゃんが、高い声を上げる。
「ヒマワリ! アンタ、王子先輩とどんなことになってるの?! 付き合うの? やっぱり付き合うの?」
「イヤ、あのね」
私は首を横に振った。
「これ、恨みつらみの詰まったイヤガラセの手紙なんだけど」
「どこが?」
きょとんとする麻美ちゃん。
それを説明するには全てを説明しなければならない。理解してもらうのは不可能だろう。
しかし、私が見たところ手紙の意味は大体以下のような感じ。
(手紙・ヒマワリ訳)
久住ヒマワリ様
お前のせいで熱を出しちゃったじゃないか! どうしてくれる!
お前がヘンなオバケ話をするから夢にまで出て来るし!
眠れなくなっちゃったじゃないか!
今度会ったらタダじゃすませないから覚えておけよ!!
追伸:ステップ忘れてたらコロス
(ヒマワリ訳終わり)
ああ。今度会ったら私、何をされるんだろう?
「あのー。『母が薬を盛ろうとしてる』って、どんな状況なんですか?」
麻美ちゃんが坊ちゃん先輩に聞いている。ウン、確かにヘンだね。
全てがヘンだから、もうツッコむ気もしないんだけど。
「ああ。アイツの家では、アイツかナルさんが倒れると、強力睡眠薬で強制的に安静にさせることになってるんだ」
坊ちゃん先輩が説明している。
「そうしないと、熱があっても何をしでかすか分からないらしい」
なんていうか、王子先輩の家だな。どうでもいいけど。
「久住さん。アイツは渡せば分かると言っていたが、大丈夫だったか?」
「ええ。まあ」
私は真っ暗な表情で答えた。
高熱を出しているのに、わざわざこんな手紙を書いてイヤガラセをしてくる王子先輩。その存在が、ウザすぎる。
ため息をつく私をじっと見てから。
「久住さん」
坊ちゃん先輩は、私の肩に優しく手を置いた。
「事情は分からない。が、もし万が一。あのドアホウに、無理や無体を強いられているなら、俺に相談してくれ」
きっぱりとした口調で言う。
「その時は、俺がアイツを責任もって排除する!」
それは、きっと心からの言葉で。
坊ちゃん先輩のマジメな顔をじっと見ている内、私の心はだんだん温かくなってきた。
ああ、本当にフツウだ。フツウに心配して、フツウに気遣って、フツウに力になろうとしてくれてる。
王子先輩と絡んでいると、何一つフツウに進行することがないだけに。
このフツウさが、限りなく貴重なものに感じられる。
フツウっていいよね! フツウ万歳!!




