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と、ちょうど坊ちゃん先輩が私たちの傍を通りかかった。
「久住さん。良かった、探していた」
「坊ちゃ……高原先輩」
ああ、坊ちゃん先輩の顔を見ると落ち着くなあ。もはや癒しの領域。
だって、フツウのヒトだよ!
「ん? 少し顔色が悪いか? 体調でも悪いのか?」
「あ、イエ!!」
のぞきこまれて、なんだかドキドキする。
フツウの反応だ……。素敵すぎる。
「何でもないんです。お気になさらないで下さい」
「そうか?」
坊ちゃん先輩は怪訝そうに言った。
「体には気を付けろよ。昼間はまだ暑いが、朝晩は冷え込むこともあるしな」
「あ、ハイ! 気を付けます!」
私は力いっぱい返事した。ああ、フツウのヒトだなあ。癒されるなあ。
「坊ちゃん先輩。ヒマワリに、何かご用だったんですか?」
麻美ちゃんが尋ねる。
あー、麻美ちゃん。坊ちゃん先輩のことは、名前で呼んであげて。
「ああ、そうだった」
坊ちゃん先輩は細かいことにこだわらず、うなずく。ホント、いい人だなあ。
「坪田のヤツが、朝から俺を呼びつけてな。何かと思ったら、何だか知らんが、君にメッセージを渡せと」
「王子先輩が!?」
現実に引き戻された! サーーッと血の気が引く気がする。
坊ちゃん先輩は生真面目にうなずいた。
「行ってみたら、あのバカ高熱を出してぶっ倒れていてなあ。何でも、シャワー上がりに裸でウロウロしていて風邪をひいたらしい。この上ないバカだろ?」
それって……。
「王子先輩、お風邪ですか? 大丈夫なんですか?」
麻美ちゃんが心配そうに言う。麻美ちゃんは、基本王子先輩のファンである。本当の姿を知らないから。
「ああ。アイツは基本、丈夫なヤツだから。大丈夫だろう」
「でも、シャワー上がりに裸でウロウロなんて、いくら何でも」
麻美ちゃんは不意に、クスクスと笑った。
「想像できませんよ。湯冷めなさったんですね。何となく病弱そうですものねえ」
「君。君は二つ、カン違いをしている」
坊ちゃん先輩は麻美ちゃんを見て、キッパリと言った。
「はい?」
目を丸くする麻美ちゃん。
「一つ。あのバカが弱いのは頭だけだ。病弱とか一切ないから。アヤシイ食べ物を食べてもケロッとしているぞ」
「あ、はあ」
麻美ちゃんは困っている。坊ちゃん先輩に話しかけられる、ということ自体がレアな上に、内容が内容なので、ムリもない。
「二つ。アイツは基本、オカシイ。この世でどんなに有り得ないと思われることでも、ことアイツに限っては有り得る!」
あの外見にダマされるな! と、熱心に説く坊ちゃん先輩。麻美ちゃんは呆然としている。まあ、信じられないのも無理はない。
真の姿を自分の目で見ないとねえ。
「あのう、それで?」
私は口をはさんだ。聞きたくないが、聞かないで済ませるわけにもいかないだろう。
「王子先輩のメッセージというのは?」
「ああ、スマン。これだ」
坊ちゃん先輩は、カバンの中から封筒を取り出して渡してくれた。
いったい何が入っているのか。私は、ビクビクしながら封を開けた。




