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謎の王子先輩  作者: 宮澤花
オバケとヘタレと危ない夜
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11

「じゃあ、ヒマワリさん」

 王子先輩はそう言って、私と向かい合って立つと、両肩に手を置いた。

「はい?」

 改まった言い方に、何だろうと緊張する。

 月の光に、茶髪が透けて見えて、王子先輩は異国の王子様みたいに見えた。


「あのね」

 ためらうように口を開く。

「暗いのコワいから、やっぱり家まで送っていって。一人で帰るのヤダ」


 って。

 こーのー、ドヘタレがあっ!!


「アホですかあ! 何を言ってるんですかいったい!」

「大丈夫、大丈夫」

 先輩は軽い調子で言った。

「そのままウチに泊まっていけばいいよ。僕の部屋に、高原が泊まりに来る時に使う寝台があるから、それを使えば?」

「何一つとして解決になってない! どこがどういう風に大丈夫なんですか!!」

 まったく! もう! ホント、サイテイ!!


「アハハハ。何を焦ってるの?」

 私が起こっているのに、先輩は相変わらずの口調。

 この男。私が一応女だと、理解しているのか?

「大丈夫、元々お前なんかに手を出す気ないから。お母さんがいる家の中で、他の女と何かしたりする気もないしさ。あ、それとも逆? 何かしてほしいの? そしたら、行き先を変えようか?」

 黙らんかい。このドスケベ男!


「ふざけるのもいいかげんにしてください! もう知りません、サッサとお帰りになって下さい」

 私は、断固とした態度でそう言い切ると、サッと背中を向けた。

「ああ、待ってクズひま。お前が気色悪い話をいっぱいするから、家に帰れなくなっちゃったんだろう?」


「知りませんよ! 勝手にコワがってるだけじゃないですか。いいですか、王子先輩」

 私は振り返り。

 王子先輩をまっすぐに見つめ、キッパリと言った。

「この世にオバケなんかいないんですよ! いいかげんにしてください」


 て言うか、そこらのオバケより王子先輩の方がよっぽどタチ悪い。

 そこのところを自覚してほしい!


 そのまま、憤然とアパートに向かって立ち去った私の背中を、

「待ってクズひま……暗闇に一人にしないで……」

 なんて、ヘタレた声が追いかけてきたけれど。

 私は二度と振り返らなかった。


 その後のことは、知らん。



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