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謎の王子先輩  作者: 宮澤花
王子先輩と坊ちゃん先輩と私
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 ダンス特訓については、面白くもなんともないので割愛する。というか、思い出すのもイヤ。要するに、私がひたすら罵倒されていただけだからだ。


 代わりにここで、坊ちゃん先輩について語りたい。

 坊ちゃん先輩は、王子先輩と並ぶ学内の有名人である。当然、これも本名ではない。

 王子先輩が王子様みたいだからそう呼ばれているのと同じく、坊ちゃん先輩は坊ちゃんだからそう呼ばれているだけである。

 本名は、高原康介さんという。うちの大学の理事長の息子さんで、正真正銘のセレブである。

 なんで私が坊ちゃん先輩の本名を知っているかというと、この人とは友人だからだ。


 坊ちゃん先輩はいい人だ。優しいし、真面目だし、折り目正しい。

 王子先輩みたいに超絶美形ではないけれど、目はパッチリしてるし、だるまさんとか獅子舞みたいで親しみのもてる顔なのではないかと思う。

 成績も優秀らしいし、学生主催の行事などには積極的に参加。先頭に立っていろいろなことをやってくれるタイプだ。面倒見も良くて、親分肌というのか、いつもやたらといろんな人の世話を焼いている印象がある。


 暑苦しいという人もいるけれど、私は本当にいい人だと思う。

 そんな人だから、人気も高い。学内どこに行っても、いろんな人に声をかけられている。

 将来の玉の輿を狙っている女性もいっぱいいるという話だ。

 男の人にも人気があるところが、王子先輩と違うところである。


 で、この真面目で立派な坊ちゃん先輩と、顔だけキレイな王子先輩は、なぜか親友同士というヤツなのだった。

 というか、坊ちゃん先輩の行くところに、いつも王子先輩がまとわりついている。そのせいで、女子学生の間では「王子先輩BL説」まで囁かれているほどである。

 まあ、王子先輩はいつも彼女がいる人なので、それはないのだが。

 で、そんな坊ちゃん先輩と友達になったことによって、私は自動的に王子先輩と関わる破目になったのだ。


 坊ちゃん先輩と私の出会いは図書室だった。

 思い返すも恐ろしい、王子先輩との初の接近遭遇から半月ほど経った時のこと。


 私が用がある棚の、よりによってすぐ傍に、王子先輩と坊ちゃん先輩が座って何やら勉強していたのだ。

 あ、訂正。勉強していたのは坊ちゃん先輩だけで、王子先輩は思いっきり眠っていた。

 しかし、その時の私はそれでも怖かった。

 近寄ったら、突然むっくりと起き上がって怒られそうな気がした。

 イメージ的には、遊園地のお化け屋敷である。


 で、さんざん逡巡していると、坊ちゃん先輩が私に気付いた。

「何だ? この棚に用か? すまない、邪魔だったかな」

 わざわざ席を立ってまで、場所を空けてくれた。

 さすがに、そこまでしてもらって逃げ出すわけにはいかない。私は意を決して、棚に近付いた。


 つまり、眠っている王子先輩に。

 それでも足がすくんでしまった私を見て、坊ちゃん先輩は怪訝そうな顔をした。

「どうした? 本を探してるんじゃないのか?」

「あ、いえ、あのう」

 どうしようもない。


「ええと。王子先輩は、眠ってらっしゃるんでしょうか?」

 私は、おそるおそる聞いた。



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