表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
謎の王子先輩  作者: 宮澤花
オバケとヘタレと危ない夜
39/104

「その話はヤメロって言ってるだろう?!」

「やめません。私の力は、『一部のヒトからしか見えないヒト』と『誰からも見えるヒト』との橋渡しをするためにあるんです」

 私は言いかえす。それだけは、譲れない。


「自分の中に納まりきらないくらい思いが強い時。きっと、記憶があふれて来て、他のヒトからも見えるんです。それは嬉しい気持ちも楽しい気持ちもあるし、悲しい気持ちや怖い気持ちも……きっと、あると思います。私に見えるのは、その残骸だけ」


 あの路地に立っていた人の、儚げな笑顔を思い出す。

「彼が、来るの」

 そう言ったあの人は、どんな思いをあの場所に焼き付けたのだろう。


「先輩。コワいですか? 誰かの思いがそこにあるって。それは、先輩の大好きな人の思いかもしれないし、先輩自身の思いかもしれない。たとえ本物じゃなくても、残骸に過ぎなくても、誰かを大切に思ってた人の。誰かの大切な人だった人の思いがそこにあることが。そんなにコワいことですか?」


 返事はなかった。

 ただ、シャワーの栓を閉める音だけが、バスルームから響いてきた。


「先輩の思いだって、どこかに焼き付いて、形を成しているかもしれない。私の思いも、坊ちゃん先輩の思いだって同じです。もし、そんなものに出会えたら。先輩は、それでもそれをコワイって思うんですか?」


「クズひま。うるさい」

 低い、声がした。

「他人のことに口を出すな。もう黙ってろ」


 その声は。

 重くて。


 私は。調子に乗って偉そうなことを言ったのが、急に恥ずかしくなった。

「すみません」

 答えはなかった。


「王子先輩?」

 私はもう一度呼びかけた。やはり返事がない。

 気を悪くしたのかな。

 ちゃんと謝った方がいいのかな。


 そう思った瞬間!!!

「う・うわあああああああああああああああああああ?!」

 闇夜に響く男の悲鳴!!


「お、王子先輩?! いくら何でも近所迷惑です!」

 たしなめようとした時。

 バスルームのドアがものすごい勢いで開いて、王子先輩が這い出てきた。

 なぜか四つん這いとはいえ、ハダカ! まごうことなき、素っ裸!!!


「ぎゃあああああああ! 何てカッコしてるんですか! 服を着て下さい!」

 闇夜に響く私の悲鳴。

 ちょ、ホント、見えるから、せめて隠そうとして! 近付かないで!


「な、何かいた」

 先輩は、魂が抜けた感じの表情で、しきりとバスルームの中を指さす。

「窓から見てた」


「はあ? 何かって何です」

「目玉。窓の隙間から、のぞいてた」

 何?

 目玉?

 

 何言ってんの、このヒト?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ