4
「もういい! サッサとシャワーを浴びて帰る」
王子先輩は立ち上がった。
「ああ、そうですね。話し込んじゃって遅くなりましたね」
と言う私に。
「違う! お前が一人で勝手に話してたんだよ!」
僕はこんな話興味ないんだよ、と王子先輩。
「いいか? オバケがコワいんじゃないからな。バカバカしい話がキライなだけだ」
そんな、強調しなくても。
何か見てて痛々しくなって来た。
こんなキレイなカオしたカッコいい人が、こんなヘタレたことを。
つくづく、ラッピングだけキレイな粗悪品みたいな人だな、王子先輩。
私はいつか、深い深いため息をついていた。
廊下に出かけていた王子先輩は振り返って、青筋を立てる。
「何をため息ついてるんだ! 何かヤな感じだな」
そんなこと言われても。自業自得です、王子先輩。
先輩がシャワーに行ったので、私はお茶の後片付けにかかった。
使い終わったカップとポットをキレイに洗って、拭いて、食器棚に戻す。
これについては、王子先輩購入の高級品のため、未だにビクビクしながら触っている。
「はあ、ヤレヤレ」
今の内に、明日の準備でもしておこう。
ダンス練習でこりかたまった肩をほぐしながら、振り返る。
すると。
目の前に立っている人が!
上半身ハダカで、首からタオルをひっかけた王子先輩が無言で突っ立っている!!
「き・きゃああああああああ?!」
怖! オバケとかよりこの人が怖い!!
何でそんなところにいるの!
何で黙ってるの!
そして何より、なんでハダカなのお!
「あはは。ヒドイな。そんなにビックリしなくても」
先輩はヘラヘラと笑った。何がおかしいんだ!
「ビックリしますよ! シャワーに行ったんじゃないんですか。そして何でそんなカッコウなんですか」
先輩はやっぱり色白で、細くて長い首筋から鎖骨の線がきれいに見えている。
ほっそりしているからガリガリなのかと思っていたら、胸から腹の辺りには意外に筋肉がついていた。
おへそのくぼみは深く、上が平らな三角形をしている。って私、何をじっくり見てるんだ。
目のやり場に困って、慌てて下を向く。
「脱いでる途中で気が変わってさ」
「何が? どう、気が変わったんですか」
床を見つめたままで言う。
シャワーを浴びないなら服を着てくれ。頼むから。
「ウフフ。ヒ・マ・ワ・リ・さん?」
王子先輩は笑った。
次の瞬間。目にもとまらぬ速さでスルリと私のすぐ傍に近付いた。キレイな顔が近付いて、私の耳元に唇を寄せる。
優しい、低い声がささやいた。
「僕と一緒にシャワーに入ろうか?」
「はあ?!」
私はまじまじと王子先輩の顔を見返した。
「何を口走ってるんですか? 気は確かですか?」
「あははは。失礼だなあ、お前は本当に」
先輩は明るく笑ってから、私の両肩をがっしりとつかんだ。
「来・い」
完全命令形。目が座ってるんですけど!
「行くわけないでしょう! アホですか? て言うかどれだけオバケ怖がってるんですか!!」
コドモじゃあるまいし! 自分の年齢を考えて行動してくれ!!
「一人でシャワーに入るのがそんなに怖いなら、私のウチじゃなくて、ご自分のおウチに帰ってお父様かおじい様と入ればいいでしょう!」
抵抗する私。王子先輩は眉を逆立てた。
「何でウチの狭いオフロにお父さんと二人で入らなきゃいけないんだよ! むさ苦しくて、想像しただけでキモチ悪いじゃないか!」
知るか! そんなこと。
「ちなみに、おじいちゃんはもう寝てるよ!」
もっと知るか!
「そんなの、女の子と入った方がいいに決まっているだろう!」
意味不明!!
なんか、頭がクラクラして来た。(色っぽい意味ではなく)




