3
「でも、同じ体質の父が、そのチカラは『一部のヒトからしか見えないヒト』と『誰からも見えるヒト』との橋渡しをするためにあるんだよ、と言ってくれて、気持ちが楽になったんですよ」
それは、すごい発想の転換だった。
それまで、「見える」ことは私にとって負担でしかなかった。
そんなもの、見えなければいい。ずっとそう思っていたのに。
その力が誰かの役に立つかもしれない。そう言われたことで、世界がぱっと広がった気がした。
王子先輩は相変わらず、そうですか、そんなモノを橋渡ししてどうなるのかな、とか呟いている。
もー。いい話なのにー。
私はため息をついた。
「でも、やっぱり一部のヒトからしか見えないヒトが見えないヒトからは理解していただけないことが多いので。最近は、こういう体質だということは他のヒトには言わないようにしていたんですよ」
アアそう、と無表情にうなずく王子先輩。
出来れば僕にもヒミツにしておいてほしかったな、永遠に。とか言ってる。
聞く気ないな、完全に。
「だけど、やっぱり本当の自分を隠してるのってツラいですよね。今日は、聞いていただけてスッキリしました」
たとえ、あんまり真面目に聞いてくれてなかったとしてもね!
「何だか王子先輩になら、分かっていただけそうな気がしたので」
「何でだよ?!」
間髪入れずにツッコミ返された。なんだ、この超反応。
今まで興味なさそうだったくせに、何で急に。
「ア、イエ。王子先輩は、他のヒトから理解されにくい変じ……。いえ、ちょっと個性的な方なので。マザコ……イエ、他のヒトから理解してもらえない性癖をお持ちなので、そんな淋しさとかが分かっていただけるかなーと」
言葉を濁す。
「何がだよ! お前らみたいな、いかがわしいヤツらの気持ちなんか分かるかあ!」
わめく王子先輩。あ、ヒドイ。
「いかがわしいとか、そんな言い方。一部のヒトからしか見えないヒトが聞いたら気を悪くしますよ?」
「するか! 大体、そんなヤツら実在するわけないだろう?!」
先輩は大声で言った。だから、何度も言うけど夜中の大声は勘弁してもらいたいんだけど。
「いい加減にしろ。僕をからかってるんだろう。何が不満だ、言ってみろ! ティーポットだってちゃんと弁償してやったろう?」
「不満だなんて、そんな」
あえて言えば、その上から目線のところですが。
「からかってなんかいません。ホントのことです。信じて下さいよ」
「信じられるわけないだろう! いいか、クズひま。この世にオバケなんていないんだよ!」
全力で否定。
「オバケじゃないんですけど。一部のヒトにしか見えないヒトですけど」
「フザケルな! そんなのオバケ以外の何ものでもないだろう?!」
力説。
「いいか! オバケなんか、この世にいないんだよ、分かったか!」
…………。
「ホントにバカだな、お前は! そんなオバケ話なんかで僕が怖がると思ってるのか。僕はそんなクダラナイ、いかがわしい話になんか興味はないんだよ! やめろ、バーーカ!!」
バーカって。また小学生並のことを。
それにしても。どう考えても、オバケを怖がってるとしか思えないんだけど。




