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「僕さ。ヒトに詮索されるのもキライだし、プライヴェートを言いふらされるのはもっとキライなんだ」
先輩はニコニコしたまま言った。
ニコニコしているのに、声の温度は氷点下だ。
「分かるよね。脅迫なんかする人は、人間のクズだと思うんだ」
「ちょ。ちょっと、やめてよ」
モモさんは真っ青になった。
「カズヒト。冗談でしょ?」
「ああ」
王子先輩は更ににっこりする。
「僕が信じられないなら。試しにちょっと、送信してみようか」
スマホに指を走らせようとする。
「やめて!」
モモさんがものすごい表情になって叫ぶ。あのスマホにいったい何が。知りたいけど知りたくない。
そこへ、
「何の騒ぎだ」
という、坊ちゃん先輩の声がした。
気付くと、校舎の隙間からたくさんの人がこっちをのぞいていて、この空間は修羅場ショーみたいになっていた。
「やあ、高原。今日もいい天気だね」
王子先輩は、坊ちゃん先輩の顔を見て嬉しそうに言った。この状況で明るく挨拶できる、その神経が理解出来ん。
「また、お前か」
坊ちゃん先輩は苦々しい表情になった。それから、モモさんと私を等分に見た。
「えーと。久住さんは、なぜここに?」
不思議そうに言う坊ちゃん先輩。何と説明したものか。
「この女がさ。僕がクズひまと付き合ってるとか言い出すんだ」
王子先輩は思いっきり不快そうに言った。失礼だな! そもそも、アナタの謎の行動が全ての原因なんですが。
「ひどいよね。僕が、コイツのこと大嫌い、ってことくらい、見れば分かりそうなものなのに」
そして、私、嫌われてたのか!
いや、好かれてると思ってわけじゃないけどさ。
ありえないくらい、ストレートに言われたし!
「坪田お前な! そういう言い方すんな、久住さんが傷付くだろうが!」
坊ちゃん先輩が真っ青になって叫んだが、えーと、もういろいろ手遅れです。
「久住さん。とりあえずこっちへ。そして、あー、えーと、そっちの人」
モモさんを見る坊ちゃん先輩。
「君。こういうことに第三者が口を出すのもどうかとは思うが。ソイツとは、スッパリ別れた方が身のためではないだろうか」
イヤホント、クズだからソイツ。
と付け足すように言う。
仮にも親友に、そこまで言わなくても。……と一瞬思ったけど。
いや、私でも言うわ。坊ちゃん先輩の立場だったら。
モモさんの目に、涙が浮かんだ。
そして、不意に身を翻し、泣きながら走り去った。
うわあ、最悪の別れ方。トラウマになるわ、これは。
「また坪田だよ」
「毎度毎度、ヒドイよな」
ギャラリーの男子学生の中から、そんな呟きが聞こえた。




