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「クーズーひーまー!!」
なんか、すごい声で怒鳴られた。
「何ですか?」
「おまえ……。お前、なんてことしてくれるんだよ!」
唇まで真っ青になって、ブルブル震えている。
「何かありましたか?」
「何かじゃないよ! 僕の皿に、こんなモノをよそりやがって!!」
こんなモノって。
「野菜とミックスベジタブルを入れただけですけど」
「それだよ!」
王子先輩はわなわなと震えながら主張した。
「こんなモノ、人間の食べるものじゃない!!」
「王子先輩、まさか」
私は耳を疑ったが。しかし気付くべきだったのかもしれない、この人に限っては「何でもアリ」なのだということを。
「ニンジンとピーマンは食べられない、とかおっしゃるんじゃあ」
子供か! アンタは!
「バカ言うなよ! そんなわけないだろ、僕は子供か!!」
あら、違うんだ。それじゃあ?
「これだよ、この緑のツブツブしたヤツ! キモチ悪い、なんでこんなモノを僕の皿に入れるんだっ」
グリーンピース。
そっちかいっ!
そして。
どっちでも同じだ!
「食べて下さい」
私は笑顔のままで言った。
「栄養あります。食べて下さい」
「ふざけるなっ。こんな、こんなモノ。海に捨ててやるっ!」
訂正。子供より往生際が悪いわ。
「礼子さんが入れてくれた食材なのに、いいんですか」
お母様の名前を出すと。あ、動きが止まった。
「そうだそうだ。残したら、俺が礼子さんにチクるからな」
坊ちゃん先輩も乗って来た。
「そ、そんなことないっ」
王子先輩は言った。
「お母さんはきっと、僕の言うことの方を信じてくれるさ!」
そして、豆ごと、皿の中のものを全部海に捨てた。あー、海はキレイに。
「礼子さんを思いきり裏切ってるのに、よくそういうこと言えますね」
「ああ。そして、こと豆については礼子さんはお前のたわごとなんかまず信じないだろ」
坊ちゃん先輩が頷く。
「そ、そんなことない! 高原のイジワル、どうしてそんなことを言うんだよ!」
「理由が分からないなら、胸に手を当てて真摯に考えてみろ」
あ。坊ちゃん先輩も、言う時は言うんだあ。
「もういい。食欲なくなった、僕はもう食べないっ」
あ。デッキチェアにふて寝した。つうか、どこまで子供よ、この人。
「いい。放っておこう」
坊ちゃん先輩はそう言って、サッサと食べ始めた。
「でも。いいんですか?」
「いいんだ。どうせ、アイツは大して食べない」
確かに、いつも学食でもちっちゃなパンくらいしか食べてないけど。
「構うと増長する。放っておきなさい」
すごいな。ガン無視してゴハン食べてる。
まあ、いいか。私もおなか空いてるし。
「おいしいのに。グリーンピースくらいで、どうしてあんな」
ミックスベジタブル、私好きだよ?
「久住さん。アイツはな」
坊ちゃん先輩の大きな目玉が、グルンと動く。
「大人なのは見た目だけだ。中味は、ほぼ子供だと思っていい。君もそう思って接する方がいい」
「はあ。コドモ、ですか」
確かに、私もそんな風に感じたが。
だとしたら、ずいぶん気合の入った子供だと思う。
「あの日焼け装備だって、どうしてだと思う? 去年、ナルさんの漁船を手伝って、あのバカ調子に乗って上半身裸で一日中はしゃいでたんだ」
上半身裸ではしゃいでいる王子先輩。また、想像力の限界に挑戦されるようなお題だなあ。
「その結果、日焼けしすぎて入院だ。少しは考えろと言うのだ、バカめ」
日焼けで入院!!
「そんなことあるんですか?」
「あるんだ。驚きだろう?」
私たちが話していると。
「ウルサイな! 僕は色が白いから日焼けしやすいんだ! 体質的なものだ!」
黙ってられなくなったのか、王子先輩は寝たフリをやめて言い返してきた。
「日焼けは怖いんだぞ! ガンの原因にだってなるんだ、甘く見てると痛い目をみるんだぞ! 気を付けて悪いことはないだろう?!」
「ああ。だから、その甘く見て痛い目にあったヤツがお前だろうが」
冷静にツッコみ返す坊ちゃん先輩。
そして言い返せない王子先輩。
ううむ、今日は次から次へと意外なものを目撃するなあ。
とりあえず、この二人の間柄はフツウの「親友」なんかじゃない。
それだけはハッキリ理解できた、そんな一日だった。
読んでくださってありがとうございます。
2話はここまでです。
3話は、また1週間後くらいに投稿を始める予定です。その際は、活動報告にも通知いたします。
(3話が始まったら、この文章は削除します)
またお付き合いいただけたら幸いです。




