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「ええと、あの。とにかく、お昼にしましょう」
私は言った。
「お肉も野菜も、いい具合に焼けて来てますから」
「ああそう」
冷たい声で王子先輩は言った。
「じゃあさ、もう面倒くさいからお前全部脱いじゃえよ。いいや水着じゃなくても」
えええええ?! すごい直球のセクハラ発言キタ!
「やめろって言ってるだろうが! このセクハラ大魔王が!」
坊ちゃん先輩はカンカンになった。
「いい加減にしろ! そんなものが目的で、久住さんを誘ったわけではない!」
そ・ん・な・も・の?
いや、確かに大したものではないんだけど。
けど。
王子先輩から罵倒されるのは慣れてるけど、実直な坊ちゃん先輩にそう言い切られるのは、想像以上にダメージがキツイよ?
「久住さん? どうかしたか?」
ダメージが顔に出ていたのか。坊ちゃん先輩はあわてて私にフォローをしようとしだした。
「す、すまん! 俺、何か、失礼なことを言ったか?!」
「あ……いいんです別に」
本当のことですから。
そしてフォローしようとしないでください、なんか余計に傷付くから。
「ああ、ヤレヤレ。これだから女慣れしてないヤツは」
王子先輩が分かったような顔(推定)で口をはさんだ。
「ダメだよ高原。そんな、露骨にカラダに魅力がないみたいなことを言っちゃったら、いくらホントのことでも女の子は傷付くでしょ?」
いや、アンタの直球な言い草の方がムカつく。
坊ちゃん先輩はあわてた。
「イ、イヤ、俺はそんなことは言ったつもりはないぞ? 単にだな、お前が言うようなイヤらしい下心からお誘いしたのではないということをだな」
言いかけて、何かに気付いたように坊ちゃん先輩は口をつぐむ。
次の瞬間。
「って! お前が言うな!」
はい。ノリツッコミ? 完成。
「今まで散々言いたい放題! セクハラ発言から失礼な値踏みまでしておいて、何を言ってやがるかこの野郎が!」
「ああ。僕はいいんだよ」
王子先輩はのんびりと言った。きっと、マスクの下では笑顔を浮かべてる。
「はあ?! 何がいいんだ?!」
「え? だってさ。今さら、僕が優しくしたり、紳士的にふるまったりするなんて、クズひまも期待してないでしょ?」
とか爽やかに言い切りやがりましたよ、この先輩は!
まあそのとおりなんだけど、違う! 何かが違う!!




