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ひどい言われよう。しかし、何かしら文句は付けられるとは思ったが。
まさか本気でこの可愛さが理解できない人だったとは。感性が貧しいなあ。
「もっと普通のカップはないのか! こんなのでお茶なんか飲めるか!!」
もう、全否定である。
なんか……。初めはケンカを買う気満々だったんだけど、もうバカバカしくなってきて。
私は立ち上がって、他のカップを探した。
これでいいか、百均のカップ。味も素っ気もないが、これで十分だろう。
「全く! お前のセンスは本当にサイアクだな!」
ぶつぶつとくさしながら、王子先輩はようやくお茶を一口飲んだ。
「私のお気に入りのカップ……。カワイイのに」
ボソッと呟いたら、
「どこがだ! 思い出させるな!」
速攻、怒鳴りつけられる。地獄耳。
「もう! いつもいつも全否定」
さすがに私も腹が立った。
「そりゃあ、王子先輩のセンスには合わないのかもしれませんけど。そこまで否定しなくてもいいでしょう? いくらなんでも、失礼ですよ」
そこまで言って、気が付いた。王子先輩は、何か気になることでもあったかのように、じっとカップを見つめている。
これは、もしかして。私にも、反撃の機会が訪れたか?
「どうしました? そのカップ、そんなに気に入りました? あ、それともお茶がおいしかったですか? 奮発してちょっといい紅茶買っちゃったんですよー」
なにしろ、ティーバッグじゃない!
ちゃんとした、葉っぱで入れる紅茶を買ったんだから。
私は勝利に酔いしれた。王子様然とした先輩が、百均のカップを気に入るのは意外だったが、それも良し。
「でも、もう遅いですから。それ飲んで、そろそろ帰っていただけませんか? 私、明日も一限目から講義が入ってるんです」
王子先輩はなおも黙りこくっている。そこまで感動にうち震えているのだろうか。
「王子先輩?」
声をかけてみる。
「何が……」
ボソッとした声が聞こえた。
「ハイ?」
「何がちょっといいお茶だ! 安い茶葉買いやがって」
そう叫んだかと思うと、王子先輩はティーポットを引っつかみ、私に向かって思いっきり投げ付けた!!
「ひいいいい?!」
古い少女マンガみたいな悲鳴を上げながら、私は咄嗟にティーポットをよけた。
壁に当たったポットは、がしゃんと派手な音を立てて砕ける。ポットの破片とこぼれた紅茶が、そこら中に散らばった。
「きゃあああ! お友達にもらったお気に入りのティーポットがあああ」
私は悲鳴を上げた。
「知るか! キモチ悪い食器ばっかり揃えやがって」
王子先輩も怒鳴り返す。魔王か、この人は。
それに、キモチ悪くないもん。ゾウの形をしてただけだもん。
この人を部屋に入れたりしてはいけなかった。この時、私はそれを思い知ったのだった。




