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不思議な異世界人  作者: 高橋みお
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まずは、出会い

音が夢の中で鳴っている。


私の夢は、今日も音楽だらけ。


側で聴いてくれているのは、私の初恋の人。


3つ歳上の彼。


あの人は今、元気でいるだろうか…?


私は、今夜も鮮明にあの1年間のことを覚えています…。





高校1年の夏休み。


ジリジリと肌を焼くように照りつける太陽が、自室の窓からその熱と共に眩い光で私を起こす。


あぁ…。


良い曲が出来たと思ったのに…。


また、夢の中だけのことか。


瞼を閉じて『彼』と一緒にいる時は完璧なメロディーが、一度その目を開いてしまうと、ボロボロとその「作品」の欠陥が見つかる。


まるで、『彼』がいなくなった直後の私みたい。


もう、4年も前のことになるのか…。


私がボーッと物思いにふけっていると、部屋のドアがノックされた。


コンコン。





「お父さん、おはよう。」


父の秋一だ。


「おはよう、優子。今日は以前から言っていた通り、私の知り合いの息子さんが挨拶にやってくるから、しゃんとして家にいなさい。」


私は、無意識に自分の赤みがかった茶色い癖っ毛を撫でつけながら、コクリと頷いた。


同じ年頃の男の子が、近々同じ屋根の下で暮らす。


何だか、少女漫画の展開みたいだ。


だけど私は、その父の「知り合いの息子さん」がどんな人なのか、あまり興味が沸かなかった。


例え、その男の子がとてもカッコ良い容姿をしていても、性格が完璧に近いほど良くても、興味が沸くことは、殆どないだろう。


私の心の中にいるのは、あの男性だけ。


今は、夢の中でしか会えなくなった、クィナットさん。




(本当にイケメンだった……。)


目の前にコーヒーを置かれ、遠慮がちに「いえ、お構いなく。」なんて、スマートに言える17歳の男子高校生なんて、日本に何割いるのだろう……。


滝沢大地と名乗ったその少年は、私と目が合うと、にっこりと微笑みかけた。


「俺の1つ年下だと聞きました。名前は、なんと言うんですか?」


礼儀正しい男の子だ……。


「前の家」で、きちんと教育されていたのだろう。


それとも、両親がもともとしっかりした方々だったのか。


「あ、優子です。優しいに、子供の子で、優子。」


私は、大地さんに向かって、ぺこりと会釈しながら答えた。


「優子さん。良い名前だね、優しそうな君にぴったりじゃないですか。」


ちょっとキザっぽいけど、女の子が喜びそうな言葉をよく知っている。


相当モテそうな感じだ。


「ありがとう…ございます。」


私は、一応お礼を言ったが、クィナットさんならこんな言葉は、恥ずかしくて言えないよーなんて、照れるのだろうと、別の男性のことを考えてしまっていた。


「こらこら、大地くん。娘の名前を褒めてくれるのは嬉しいが、口説かないでおくれよ。」


父が、笑いながら困った顔をした。


「あはは、いえ、そんなつもりは!」


大地さんは、大袈裟に両掌で静止するポーズを取って、周りの笑いを誘った。


「そういえば、大地くんは向こうのお家でも同じ年頃のお嬢さんと一緒に暮らしていたとか。そちらのお嬢さんの方が、好きだったんじゃないかしら?」


ふふ、と笑いながら母の美春がからかうような口調で言った。


「いやっ!そんな、あいつはっ、別に!」


今まで穏やかに返しをしてきた大地さんが、急に必死に返答した。


(ああ、この人も好きな人と離れちゃったんだな……。)


そう思うと、急に親近感を覚えた。


「…どんな人だったんですか?」


今までボーっと父母の話を聞いていた私だったが、会話に入ってみる気になった。


「優子さんまで!いやいやいやいや、やめてくださいよー。ははっ。」


顔を真っ赤にした大地さんは、その後も私達家族にいじられ続け、帰りには第一印象とはすっかり違ったイメージを私に残して、我が家を後にした。




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