第三章:正義の殺し方
盗難事件の騒動も一段落ついたある朝、協会から仕事の依頼がある、とメールが来た。ということで俺は自転車を飛ばしてストロース協会へ向かい、受付に第二会議室へと案内された。そこで待っていたのは若い女性の事務員だった。メリッサさんはまだ来ていないらしい。
淡いベージュのスーツがよく似合う栗色の髪のその女性に、一足先に依頼内容を聞くことにした。俺が加わってからの最初の仕事ということで簡単なものがあてがわれた、と前置きした。つまりメリッサさん単独の時だと来ないような仕事が回されてくるってことか。そういうことなら彼女の仕事を手伝ったことには、厳密にはならない。書類上ではサポートをしたことにはなるんだろうけど。
「あるマキナの親子のボディーガードをしていただきます」
「ボディーガード?」
「はい。依頼主は母子家庭なのですが、息子の命が何者かに狙われているから守って欲しい、という母親からの依頼があったそうです。報酬は二千ユニ出せるとのことです」
「それ結構内容としては重くないですか。相場がどれくらいなのかは知りませんけど」
「相場で言うと、五日間といったところでしょうか。メリッサを指定してのものならせいぜい二日でしょう。なお今回の件、母親は特に期間などの詳細を話し合わないまま帰って行きました」
「え、じゃあ本人と会ってから交渉が必要なんですか?」
「そういうことです。本来なら情報が不十分で無効にするのですが」
「暇な俺達に回されたと」
「身も蓋もない言い方をすればそういうことです。頼んだのに来てくれなかったと騒がれても厄介なので」
確かにそっちの方が面倒そうだ。依頼人はかなり自己主張が強いくせに間抜けのようだし。
メリッサさんが遅れてやって来て事情を聞くと、依頼書一式をそのまま持ってバイクに乗り込んだ。本来の審査手続きがされていない案件なので、協会の受領印は入っていない。当然俺達のサインもない。だからこれはいつでも破棄できる状態にある。まずそのことを依頼主に伝える必要があるのだ。
住所を頼りに依頼主の家を発見、マンションの三階に住んでいた。オオサさん、依頼書の名前と同じだ。チャイムを鳴らして出てきた母親の姿に俺は仰天した。まず若い。少なくとも見た目は俺の倍は生きていない。息子の年にもよるが、俺くらいの時に出産したんじゃないのかってくらい若い。さらに金髪、より正確に言えば根本が黒いプリン頭。眼の色はスカイブルー。一瞬マギカかと思ったがプリン頭と名前でマキナだと分かる。もしやカラーコンタクト?
「ワンダホー! マジシャンズカムトゥルー! ささ、メイアイヘルプユー?」
「無理しなくても言葉は分かるので」
「あ、はい」
発音も文法も間違っているあたりが決定打になった。メリッサさんの見た目はぱっと見じゃマギカだと分からないはずなのにどうして見破ったんだろう。あと俺も魔術師ということにされている。そもそもマジシャンはエンターテイナーの方だ。
「私カノコっていいます。バツイチ子持ち、今はパートやってます」
リビングに通されて、俺と同い年くらいのオレンジ髪の少年を加えての話し合いが始まった。こっちも染めてるのかよ。さて、まずは護衛の依頼が受理されたと思っている誤解を解かなければならない。
「お金が足りないの? それなら……」
話を聞くなり母親は食器棚の引き出しから通帳を取り出して、二千五百ならギリで出せると言ったが、もちろんそういう問題じゃない。
「嘘だと思うなら見てみなさいよ! これがうちの全財産!」
わざわざ突きつけてくれなくても疑うもんか。こっちは断りに来てるっていうのに。
「依頼料の件はともかくですね、オオサさん、一体何日間の護衛を希望されますか?」
「えっ、ボディーガードって日当制なの?」
何故定額使い放題だと思っていたのか。それよりこの息子、命が危ないっていうのに携帯ゲームに夢中になって話を聞いていない。というか学校はどうした。義務教育終えてるならあるいは仕事か。
メリッサさんがどんなに安く見積もってもそれじゃ十日、それも昼間だけが限度だと話すと、母親はがっくりと肩を落とした。
「ごめんねサタン、ママがもう少ししっかりしてれば」
息子のことをそう呼んでる時点でもうしっかりしてないわ。まさか本名か? しかも悪魔と呼ばれた(まあ悪霊に連れて行かれないようにそういう名前をつけていた文化圏はあったそうだが)ガキンチョ、いやご子息はまるで聞いちゃいない。表情一つ動かさない。楽しいのそのゲーム?
「せめて事情を聞かせて貰えませんか。事と場合によっては、もっとちゃんとした機関に頼むべきかも知れません」
「いいえ警察には頼りたくありません」
命を狙われるのは警察が原因ってことか? まさか指名手配犯?
「あれはもう二年前ほどのことです。息子が交通事故に遭ったんです。幸い後遺症はなかったんですがこんな性格になってしまって。もちろん殺人未遂として裁判になりました。結果、加害者が治療費などを払ってくれることにはなりましたが、相手はそれにマジギレしてるんです」
おい集中力を最後まで保て。そんなに丁寧な言葉づかいに慣れてないのか。
「何故ですか? 後遺症がないならそこまで多額になったとも思えませんが」
「裁判の間閉じ込められたせいで家族からも見捨てられ、仕事も失ったそうです。そのことでうちらを恨んでるんです、その人は」
逆恨みか。まあよくある話だ。それこそ警察頼みだろう。そんな人間を野放しにするほど阿呆でもないだろうし。
「では、その人のことを話して下さい」
「知りませんよそんなの」
「加害者と被害者という立場で裁判になったんですよね。知らないはずはありません」
「忘れました」
「命を狙うのがその人だと分かっているならより早く対処できるんです。多数から守るのではなく一人を攻めれば良いのですから」
すると母親は渋々といった表情で、ちょっと待っててと言って立ち上がるとどこかへ消えて行った。
「奇妙ですね」
聞かれては困ることを話すつもりなので、敢えてマギカ語で言う。
「そうだな。言っていることがちぐはぐで、まあそこは言い回しからも分かるとして、一貫性がない」
「ヒットマンに狙われてるってのは本当ですかね」
「嘘の可能性も考えよう。だとしたらチイの出番だ」
「とにかく、このガキを轢いたっていう加害者が分かれば話は早いです。その事故の記録も探れば何か分かると思います」
その時、母親がファイルを抱えて戻ってきた。
「このことは忘れたくて処分したものが多かったんですけど、これだけ見つかりました」
そう言って差し出したのは名刺だった。某大手自動車メーカー課長、ヒロミ・ムラサキ。名前だけじゃ男か女か分からないな。話の雰囲気から中年の男性であろうことまでは予想がつく。
「写真がないのは良いとして、もう少し特徴はありませんか。男か女か、年はどのくらいか」
「大きなメガネを掛けた、三十歳過ぎくらいの男性でした」
ビンゴ。思ったより年が上だった。
「他に何か覚えていることは?」
「いつも白いシャツを着てました。髪は黒で短かったです」
あてになるかそんな情報。
「では、事故当時のこと、詳しく聞かせて貰えますか」
「それ、護衛に必要なんですか」
「少なくとも、引き受けるかどうかの判断材料にはなります。ボランティアではありませんので」
まだ引き受けた訳ではないというカードは切り札になるようだ。これがある限り上手に出られる。
「はい。ほらサタン、話してあげて」
「駐車場歩いてた。おっさんの車が突っ込んできた。引きずられた。怪我した。俺怒った。終わり」
分かったお前にはもう聞かない。そういう訳で質問をする相手は母親になった。そういや俺さっきから全然喋ってない。
「飲酒運転だったんですか?」
「はい、そうです」
「駐車場とはどこの?」
「カルラモールっていうショッピングセンターです」
決して大手ではないけど、専門店が多くて個性の強いことが特徴の商業施設だ。ここでしか手に入らないアイテムもあるから俺も行ったことがある。でも、そこの駐車場?
「その時の用事は?」
「そんなこといちいち覚えてませんよ、毎週のように行ってるんですから」
「毎週二人で行っていて、事故の時もそうだったんですか」と俺が口を挟んだ。
「……そうですけど」
「では、奥さんが自動車の免許をとったのはいつですか」
「うちは見ての通り貧乏な母子家庭ですよ、免許を取る時間もお金もありません」
「息子さんも」
「もちろんです」
状況がなんとなく分かってきた。マギカ語に切り替えて話をする。
「メリッサさん、カルラモールは立体パーキングが併設されていて、歩行者とは入口が別なんです。つまり、車を持っていないこの親子がそこのパーキングを歩くことはあり得ません。それに、駐車場で怪我をさせるほどのスピードを出していたのも気になります。飲酒運転も嘘でしょう」
「なるほど、一旦出直そうか」
「それが懸命だと思いますが、彼がいつどこで狙っているか分かりません。もっとも、引き受けるならの話ですが」
「あれー二人ともマギカ語話せるんだ! ねえ後で教えて!」
何言ってるんだこの母親は。
「ところで、どうしてうちの協会に相談しに来たのでしょうか」
「ダチがストローに仕事頼めば確実に成功するってゆってたから」
これはあれだ、ネームヴァリューだけで物を考える典型的なダメ人間だ。
「じゃあアル、一仕事頼みたい。その鞄の中に電波探知機がある。それで盗聴器が仕掛けられていないか確かめた後、ここを監視してる影がないか見回ってくれ」
「メリッサさんは?」
「私は外から探す」
「引き受けてくれるの!?」
「まだ決まった訳ではありません。既に盗聴や覗き見がされていたらプライバシーの侵害で、刃物を持った男がうろついていたら銃刀法違反で現行犯逮捕できる、それだけです」
緊急性のある事件ならば警察に引き渡したほうが早いって言ってるんだけど、どうせ理解してないだろうな。
相棒が一旦出たのを確認して、俺は鞄をそっと開けた。中身は狙撃に必要なものばかりだから見られたらまずい上に探知機なんてあるはずがない。小型のトランシーバーを使い、探しているフリをしろということなのだろう。電源プラグから換気扇の裏、テレビのリモコンに至るまで電源の切れた通信機を振りかざす。
「念のため聞いておきたいんですが、最近買った電化製品や、誰かが侵入した形跡はありませんか?」
今さらそれを言ってどうするという気もするが、母親の答えはノーだった。仕方ない、ライフルのスコープを使って調査を続けよう。本当に監視しているなら不審人物が二人も家にいる時点で怪しいと思ってるだろうが。
リビングと寝室の窓からこちらを覗き見出来そうな位置を探ったがもちろん収穫はゼロ。不意にメリッサさんから電話がかかってきた。やはりマギカ語で会話する。
『ムラサキ氏を発見した』
「本当ですか」
『本人がそう名乗っているし、身分証明も確認した。今からそちらに向かう』
「今からこっちにですか?」
『そう。だから親子にはこう伝えておいて欲しい。この家に向かっているムラサキ氏を確保した。謝罪したいと言っているから、玄関のドアを開けて二人で待っていて欲しいと。チイは今すぐ荷物をまとめて帰れる準備を済ませろ』
「分かりました」
「で、今何て言ったの?」
いつの間に背後に立っていたのか。ともかく、俺は今言われたことを伝えた。だから依頼は無効、お金はいらないと。すると彼女はたいそう喜んだ。心配事がなくなったのだから。良かったですねと声はかけたが、メリッサさんの考えることだし、嘘を吐いてボディーガードを頼もうとしたこの親子にも謎が残るし、ムラサキ氏が頭を下げて終わりになるとは、到底思えなかった。
トランシーバーとスコープを片付けて俺は玄関に立ち、ドアを開け放つ。すぐ後ろには母親と息子(よく見ると似てない。子供は父親似なのだろう)が棒立ちになっている。さすがにゲームはやめたようだ。少し待っていると足音が響いてくる。やがてメリッサさん、その背後からグレーの服を着た痩躯の男が現れた。
「荷物はシエルに」
そう言われたので、俺は踊り場でホバリングしていた巨大ハチドリに鞄を渡す。するとまるで重さなど感じないかのような動きで降りていった。何故こんなことを?
「話した通りです、オオサさん。彼は自分の犯した罪を反省し、息子さんの人生を狂わせたことを謝罪したいそうなんです」
ムラサキ氏はコンクリートの床に直接座り込んで俯いていた。
「ここで話をするのもなんですから、どうぞ中で聞いてあげて下さい」
「そ、そうですね」
男はよろよろと立ち上がる。
「では、私達はこれで」
メリッサさんは俺に小声で走れと言った。階段を急いで駆け下りる。重い鉄のドアが閉まる音がした直後、ダッシュする音が聞こえた。俺がマンションの駐車場に着いた時にはバイクは既に走り出せる状態になっていた。シエル使ってショートカットしたな、俺には走らせて。それにしてもどうしてそんなに急ぐのか。
モーターの音に混じって悲鳴が聞こえたような気がした。
さすがに俺に黙ったままでいるほど俺を信用しないパートナーではない。協会に戻り依頼が破棄されたことを伝えると、パソコン室に連れて来られた。
「このニュースだ」
そうして見せられた記事に、俺は目を疑った。
ショッピングセンターで事故 少年意識不明
二十日正午過ぎ、トリア市のショッピングセンター「カルラモール」で、乗用車が少年とぶつかりけがをする事故が発生した。警察の調べによると、車を運転していたのは会社員のヒロミ・ムラサキ氏三十一歳。危険運転罪の容疑で逮捕され、容疑を全面的に認めているという。
事件当時は車の出入りが多い時間帯だった。目撃者によると、車は十歳の少年サタン・オオサくんをボンネットに載せたまま三十メートルほど走り、カーブで振り落としたという。少年は全身を打ち意識不明、現在は病院で治療中だという。
また事故当時一緒にいた少年らも、同じ車が原因とみられる怪我をしており、警察は事実関係を調査しているという。
「母親は一緒じゃなかったんですね」
「そういうことだ。被害者は複数いて、一番の重傷者があの少年だったという訳だ。問題はこのニュースの続報にある」
「続報?」
少年らに暴行未遂の疑い ショッピングセンター事故
二十日に発生した「カルラモール」での交通事故で、被害者となった少年らは事故当時、ゴルフクラブや金属バットなどを所持していたことが監視カメラの映像から分かった。少年らはこの駐車場で常習的に車上荒らしをしており、ショッピングセンター側も対応に追われていたという。
起訴されたムラサキ氏の車は監視カメラに映らない位置にあり映像は残っていないものの、少年らが襲いかかったところを車が急発進して怪我をさせたものと見られている。
「これって……」
おいおい、まさかそういうことかよ。
「そうだ、本来はあの少年が加害者だった。しかしメディアも司法も未成年である彼を擁護し、ムラサキ氏を加害者にして裁いた。そしてこれが最近出された、裁判の判決だ」
そこにはつい先日、ムラサキ氏が危険運転罪、暴行罪で執行猶予付きの実刑判決を受けたとの記事が表示されていた。
「復讐されると分かっていたから、身辺警護を依頼したのか」
「そして何らかの方法で彼が今日一時的に釈放されることを知った、だから急に依頼を持ってきた」
「事件のことを知られると自分達が加害者側であったことがバレて守って貰えなくなると考えて、あんな嘘を吐いたってことですね」
「もともと頭が弱いくせに無理に嘘を取り繕うからああなるんだ」
「じゃあメリッサさん、あの人はもしかして」
「今頃はあの親子を殺して警察に捕まってるだろうよ。上手く逃げたとは思うが、私達にも聴取が来るかも知れない」
翌朝の全国紙ユナイテッドおよび地方紙デクステラタイムズ、それにネットもこの殺人事件をトップニュースとして取り上げた。というのも、これが単に被害者二名の殺人に留まらないからだった。彼が犯行の直前にネットに流したとある動画が波紋を呼んでいるからだ。
どこかの薄暗い部屋に、ムラサキ氏の上半身が映っている絵から動画は始まる。背後には事件当時で止まったままのカレンダーがかかっている。
「どうも皆様はじめまして。私はヒロミ・ムラサキといいます。私が何者かということですが、これを見て下さい」
そう言いながら彼は事件当時の新聞、おそらくは縮刷版のコピーを見せた。
「この事件覚えていらっしゃいますかね? 駐車場でバットやゴルフクラブを持った少年らに囲まれて、逃げるために車を急発進させたら怪我をさせて、それで逮捕になった男です。私はこれを正当防衛だと頑なに主張して戦ってきましたが、裁判所は私が有罪だと判断しました。自動車は年間に何千人もの人を殺す凶器であるが、それを知った上で危険な行為に及んだかららしいですよ、ふざけてますよね」
ここから一気にトーンが変わった。
「つまり、私のしたことは、自らを守る行為ではなく、一方的な暴力だと見なされた訳です! 私が襲われていたのが明らかであるのにも関わらず!
ではあれが罪になるなら、私は何をすればよかったのでしょうか? 車の中でガラスが割られるのをじっと待っていれば良かったのでしょうか? なるほどそれは確かに罪にはなりませんね。でもその代わりに私の財産や命が奪われる危険性がありました」
一呼吸置いて、今度は肩を震わせる。音量注意。
「つまり裁判所の判決は、私の命が奪われるのが正しかったと宣言したも同然! 私は司法に生存権を否定された! 私の命などこの世界に不要だと、法律で決められていたのだ! ならば私は既に死んだも同然の存在である! だから私はこれからある人間を殺しに行く。しかしそれは犯罪ではない! 亡霊による復讐である! 死者の罪は生者には裁けない! それは人殺しではない! 私の命を見捨てた司法に対する虐殺である!」
直後画面が暗転し、ドクロ入りの顔写真と名前が次々現れては消えていく。後で分かったことだが、これは加害者の少年らと裁判長のものだった。どうやって手に入れたんだか。
事件の翌朝、カフェで新聞の記事をチェックしながら、俺はため息を吐いた。
「こうなることを知っていて止めなかったんですか」
「知らなかったら止めていただろうね」
「どうしてですか」
「私が裁判官だったら、たとえ何歳だろうと少年を有罪にする。私はムラサキ氏の正義に共感した。マキナ語だと正義は『正しい意味』という意味だろう? あれが正しいと感じたから止めなかった。何か不満があるようだね。じゃあチイがこの法廷での裁判長だったとして、罪はどっちにあると判断する?」
「それは――」
確かにこの事件、ムラサキ氏を罪に問うのは間違っている。だったら何故司法はそんな間違いを犯すのか?
「やっぱり少年が悪いと思います。でもだからといって、殺して良い理由にはなりません」
「チイは優しいんだな。そして優しい分、この世の悪を知らない。裁判の結果や法律の記述は絶対ではない。それは決して正義の象徴ではないんだよ」
「じゃあ正義って何なんですか」
「裏側から見た悪だよ。ストロース会長も言っていただろう、戦争は必ず起こるって。戦争は敗者にとって悪、勝者にとって正義。宣戦布告した側にとって正義、受けた側にとって悪。だから必ず起こると言えるのさ。エルはマキナと仲良くしようとするマギカの表の顔しか見せなかっただろうけど、いい機会だ、私との卒業試験のうちに裏側の顔も見せてやろう。それでも私についてこられるという自信はあるか?」
「あります。ぜひ見せて下さい。メリッサさんが知っていて、俺が知らないこと全部。そうでないと、俺はエルの隣にいる資格がないような気がするので」