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未亡人を守ると決めた異世界転移の微能おじさん……突きだけ得意  作者: めのめむし
第1章 異世界転移

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第6話 銀髪母娘

「パパ、どうしたの」


 ダークブラウンのボブヘアの元気で可愛い少女、杏果は伊吹の顔を覗き込む。

伊吹はその普通よりは整った顔を少し慌てさせる。

 

「お、杏果。動物園は楽しい?」

 

 杏果が満面の笑みになる。


「うん、象も迫力あるし、ライオンもかっこいいし、小動物も可愛いのばっかり」

「そうか、じゃあ来てよかったな」

「うん! でも、一番は三人で来れたことが一番楽しいかな」

「え? 三人?」


 伊吹の疑問に杏果はきょとんとする。


「あはは、パパどうしちゃったの? 私とパパとそれと」


 杏果が伊吹の後ろを指差す。


「それと、ママでしょ」

「えっ?」


 伊吹は慌てて後ろを振り返る。

そこには確かに絢音がいた。

 

「あなた、もしかして私を忘れちゃったとか?」


 絢音が頬を膨らませる。

杏果も一緒になって言う。


「ひどーいパパ。もしかして、他の女の人のこと考えてたの?」

「そうなの、あなた? 私は悲しいわ」


 絢音が目に手を当てて泣き真似をする。


「ああー、ママ泣いちゃったよ。パパ、どうすんの!」


 惚けていた伊吹は我にかえる。

そして、慌てて弁解した。

 

「ああ、ごめん。絢音も杏果も。そうじゃなくて、俺は幸せもんだなって思ってな」

「あら、あなた。どうして、幸せなの?」

「私も聞きたいな〜」


 絢音と杏果がイタズラっぽく言う。

伊吹は、これはきちんと伝えておきたいと思い、二人を見てはっきりと言う。


「絢音と杏果っていうこの世で一番の奥さんと娘と動物園にこれていることがだよ」


 そういうと、絢音は頬を緩め微笑む。杏果ははにかんだ笑顔になった。二人ともとても可愛い。

それを見て、なおさら幸せな気持ちになる伊吹。


 絢音はとろけるような笑顔で、伊吹に告げる。


「私もとっても幸せよ。だってーー」


 伊吹はその先の言葉を期待して待つ。

絢音は無表情になり続けた。


「だって、微妙な能力しかないあなたと別れて、才能に溢れて本当に好きな人と結婚したんだもの」

「ッ!?」

 

 伊吹は心臓を鷲掴みされたような心地になる。

絢音は続ける。

 

「だから、もう連絡してこないでね。杏果にも、もう会わせないわ。杏果にはあの人に本当の父親になってもらうから、邪魔しないでね」

「な、何言ってるんだ。そんなの認められるわけ……」

「パパ」


 伊吹の言葉を杏果が遮った。

最愛の娘を縋るように見る伊吹。


「私は新しいパパと仲良く楽しむから、邪魔しないでね。パパ、いや、福山伊吹さん」

「そ、そんな。杏果」

「そうよ、何度も言うけど、邪魔しないでね。微能の福山伊吹さん」

「な、なんで」


 伊吹は声が掠れてうまく言葉にできない。

絢音と杏果が無表情で同時に言う。


「「さようなら。微能の福山伊吹さん」」


 伊吹は自分が立っているのかどうかもわからない感覚になった。


 絢音と杏果が去っていくが、追いかけることも声を上げることもできなかった。


 

 と、急激に意識が浮上していく感覚がする。


 浮上しきった時に、今のことが夢だったと知る。


 目を瞑ったまま思う。


(今のが夢だからといって、現実も絢音に捨てられて、娘に会わせてもらえない微能おじさんに変わりはないか)


 起きているのに、目を瞑っていても仕方なく、目を開けることにした。


 見知らぬ作りの部屋に寝かされていた。

ここにどうやってきたのか、全く覚えていない。


(ああ、こういう時こう言うんだっけ)


「知らない天井だ」

「ププッ、本当に言う人いるんだ。知識としては知ってたけど、初めて聞いたかも」


 吹き出すような声が聞こえてきたことで、この部屋に他に人がいることを知る。

伊吹は、自分の発言に恥ずかしくなるが、声の主を確認するしかない。

 

 声がした方を見ると、桜色の髪と瞳を持つ16歳くらいに見える絶世の美少女が座っていた。


 伊吹は驚いて少女を見つめる。

少女はその表情を見てつまらなそうな顔をして言った。


「言いたいことはわかるけど、言わなくていいから。むしろ言ったら後悔するよ」


 少女からなんともいえぬ恐ろしさを感じた。原理は不明だが、おそらく少女が意図的に発している威圧なんだろう。

伊吹はそれを受けて、何も言えなかった。


(美しいということも許してもらえないなんて理不尽な……でも、散々言われていて、俺なんかが言っても何も価値がないのだろうな。あ、いやそれよりも……)


 その時、部屋の扉が開いた。

その隙間から少女が顔を出した。


 少女は銀髪にエメラルドグリーンの瞳で整った綺麗な顔をしている。歳のころは杏果と同じくらいに見える。

この少女が伊吹が助けた少女なのだが、伊吹はその時は朦朧としていたためによく覚えていない。

 

「※※!」


 銀髪の少女が伊吹を見て嬉しそうに叫んだ。

桜髪の少女が銀髪少女に声をかける。


「※※」

「※※!」


 銀髪少女はそれに応えて、タッタッタッと、その場を離れた。

桜色の少女はそれを見送ってから、伊吹に言った。


「今、あの子のお母さんが来るわ。ちゃんと、助けてくれたお礼を言うのよ」

「やっぱり助けられたんだ。もちろんお礼はする。でも、あの子は何語かわからない言葉だった。

なんで君は日本語が喋れるんだ?」

「あはは、やっと気づいた? でも、それは後で話してあげる。来たわよ」


 すると、扉から先ほどの少女と少女と同じ銀髪でエメラルドグリーンの瞳をした美女が入ってきた。

桜色の少女も美しいが、この女性も現実離れをした美しさだった。


 女性は、伊吹を見るなりニコリと微笑む。


 その可憐で美しい微笑みに、伊吹は息を呑んだ。


「※※?」


 女性が、何か声をかけてくれるのだが、言葉が分からなくて、申し訳ない気持ちになる。


「すみません、言葉が分からないので。君、助けていただいてありがとうございますって、伝えてもらえるかな」


 伊吹が桜色の少女にお願いをする。

すると、桜色の少女は思いついたように言った。


「ああ、そうだ。これじゃあ、話せないから、お前に翻訳魔法をかけるわ」


 桜色の少女が指をパチンと鳴らした。


「ほら、これで言葉が通じるから、挨拶しなさい」


 と、少女が伊吹に促す。


(え? これで、言葉が通じるのか? 何も変化がない気がするけど……。とりあえず挨拶をしよう)

「はじめまして、私は福山伊吹っていいます」


 すると、銀髪の女性が驚いた顔をする。


「まあ、言葉がわかるわ。素敵だわ、ねえティナ」

「うん、すごいね。おじさんがなんて言ってるかわかるよ」


 それは、伊吹も同じで、二人が話したことが、わかる言葉になって頭の中に聞こえる。

そこに桜の少女は銀髪の二人に微笑み、優しく伝える。


「うふふ、不思議でしょ。こういう魔法だと思え合いいよ。それよりも自己紹介を続けたらどうかな」


 言われて気がつく銀髪の女性は、失敗しちゃったというような楽しそうな笑顔を作る。

そんな顔も可愛い。


「ごめんなさい、フクヤマイブキさん。自己紹介の途中だったのに」

「ああ、いえ、いいんです。あと、伊吹が名前なので、それで呼んでいただけると嬉しいです」

「わかりました、イブキさん。私の名前はエリシアって言います。薬師をやっているのよ。こっちはティナです」

「ティナだよ。よろしく、おじさん」

「エリシアさん、ティナちゃんよろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします。イブキさん」


 三人は自己紹介は終わったが、桜色の少女は何も言う気がないようだった。

そこで、伊吹は話を振ってみる。


「三人はこちらで暮らしているんですか?」


 すると、エリシアが応える。


「いいえ、この家には私とティナの二人暮らしよ。こちらは……」


 エリシアが桜色の少女を見る。

桜色の少女は人懐こい笑みをエリシアに返して、話を引き継ぐ。


「後の話は私が引き継ぐわね。だいたいわかってるから。でも、その前に」


 少女は伊吹を見た。表情はエリシア母娘を見る時より硬い顔だ。


(なんか、エリシアさんたちを見る時より、俺を見る時の方が冷たい気がするんだよな)


 すると、すかさず桜色の少女が言った。


「気にしないで。私、だいたい男に対しては冷たいから」

(心を読まれた!?)


 伊吹は恐る恐る聞いてみる。

 

「心に思ったことを読んでるってわけじゃないよね」


 すると、桜色の少女が喋りはじめた。


「あなたの状況をこの二人に話してもいいかしら」

「スルーされた!」

「それで、どうなの?」

「さらにスルー……、はぁ、進まないな。状況はどこまでわかっているか知らないけど、話してもいいよ」

「わかったわ。それじゃあ、私は三人の視点を入れ替えて説明するね。できるだけエリシアちゃんとティナちゃんにわかりやすくする。ついでに伊吹にも説明するね」


 と、エリシア母娘に微笑んで言った。

あくまでも、伊吹はついでらしい。

少し、落ち込む伊吹。


「さあ、少し長くなるから、二人はこの椅子に座って」


 さっきまでなかったはずの豪華な椅子が2脚おかれていた。


 (いつの間に出てきたんだ?)


 その思いはエリシアとティナも同じで驚いている……が、受け入れて座ったようだ。


(この二人の順応性が高いのか、この少女の特異性にこの二人が慣れてしまったのか……)


 伊吹がそうこう考えているうちに、少女が話しはじめた。


「ことの起こりは、伊吹が日本というところの、動物園という施設に一人でベンチに座っていたところからなの」


 伊吹は息を呑んだ。


(な、なぜ、彼女はそんなところから知っているんだ……)


 

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