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未亡人を守ると決めた異世界転移の微能おじさん……突きだけ得意  作者: めのめむし
第2章 決闘

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第50話 レッサードラゴンの鎧

 ギルバートが伊吹の『閃歩突貫』で吹き飛び倒れた瞬間、観客席が沸いた。


「ウオオオ、あのおじさん微能じゃなかったのかよ」

「ドラゴンスレイヤーをやっちまったよ」

「おじさん、かっこいい」


 青くなったのは、ギルバートに賭けているものたちだ。


「ドラゴンスレイヤー!倒れるんじゃねえ」

「お前負けたら、俺の賭け金はどうなるんだ!」


 もっとも、そう叫んでいるものは周りから白い目で見られている。


 審判席の横にいたエリシアは固唾を飲んで伊吹を見守っていたが、この一撃で明るい表情になる。


「イブキさん!」


 観客席にいたティナはリリとルルに向かって、興奮して叫ぶ。


「おじさんやったよ! 勝ったよね」


 しかし、リリとルルは表情を崩さない。


「まだ、倒せていないな。あれは伊吹の必殺技と言っていいのだが」

「まさか、あれでもダメージが通らないとはね」

「え、それじゃあ、おじさんは……」


 リリとルルの言葉に喜んでいたティナは一転絶句する。


 当の本人の伊吹は『閃歩突貫』の手応えが、倒せた時のそれとは違うことに気がついていた。


(まだ倒せていない。追撃しよう)


 伊吹はギルバートに接近して追撃をしようとしたが、途中で足を止める。


「ちっ! ノコノコ近づいてきたところを足の一本でも切り落としてやろうと思ったんだがなぁ」


 ギルバートが、立ち上がってきた。

会場から、先ほどよりさらに大きな歓声が沸いた。


 ギルバートは平気な顔をして立っている。その姿を見て、伊吹は苦虫を噛み潰す。


「ダメージゼロかよ」


 伊吹の『閃歩突貫』はレッサードラゴンの鎧によって完全に防がれていた。

『閃歩突貫』はダンジョンでもダークナイト以外には効いていた。ダークナイトでさえ、傷を少しは与えられていた。


 それだけ、伊吹の力がこの世界で隔絶した力を持つ、ドラゴン種には通用しないという証拠だった。


 ギルバートは、静かに怒りを漲らせている様子だ。


「許さねえぜ、てめえ。こんな大衆の前で、てめえのような微能おっさんに倒されたんだからな。

もう、ちまちまとなぶってやるのは終わりだ。一気に貴様を消し去ってやる。

この怒りは、そうだな、エリシアを嬲ることで晴らさせてもらうかな」


 伊吹が負けたら、エリシアがギルバートの所有物になってしまう。

そうなったら、ギルバートがエリシアをどうしようがギルバートの勝手である。


 そして、彼女を嬲ることを宣言したのである。

ギルバートはいやらしい笑みを浮かべる。


「エリシアの泣き叫ぶ顔を見たら、どんなに興奮するだろうなぁ。あの顔はどう歪むんだろうなぁ。

どう思う?微能おじさん」


 伊吹はその言葉にキレた。


「ふざけるな貴様ー」


 『閃歩』で、一気にギルバートとの間合いを詰める。

挑発だとはわかっていたのだが、エリシアがギルバートに蹂躙されている姿を想像してしまったのだ。


 今まで冷静に戦闘を運んでいた伊吹がここにきて初めて冷静さを欠いた。

そして、その動きは単調になり、経験豊富なギルバートには読みやすい動きになっていた。


「バカめ」


 ギルバートが真っ直ぐに突っ込んでくる伊吹を見てニヤリと笑う。

大剣を横にして炎を纏い横薙ぎにする。


「フレイムスラッシュ!」


 ギルバートから放たれた斬撃と炎は広範囲に広がる。

普段の伊吹になら、なんとか『居つかぬ足』で躱わすこともできただろう。


 しかし、頭に血が上っている伊吹では避ける術がなかった。


 ズシャ!


 斬撃が伊吹を切り裂き、炎が身を焦がす。


「ぐあああああ」


 「イブキさん!」


 エリシアが立ち上がる。

その顔は青くなっている。


 伊吹は、その場に前のめりに倒れた。


「ワハハ、死んだか? ちょろちょろ逃げ回っていたが、当たればこんなものよ」


 ギルバートはそう言いながら、伊吹の髪の毛を掴み持ち上げる。

伊吹は槍を手放しながら、ギルバートに吊り下げられる。


 伊吹の革鎧は引き裂かれ、そこにごく浅い傷ができていた。


「あーん? 思ったよりも傷が浅いな? 加減しすぎたか?」


 伊吹の体は修行中の度重なるリリとルルの攻撃やポップビーンズの爆発、常走のネックレスの電撃によって、ダメージに強くなっていた。元のフィジカルでもダメージがつきにくい体になった上、無意識に魔力の防御を発動しているのだ。

そして、回復力も並外れている。


 それを知らないギルバートは、伊吹の傷口を吟味している。


『ダークボール』


 伊吹が至近距離からダークボールを放った。

爆発とともに、ギルバートは吹き飛ぶ。


「ぐお!?」

 

 いかにレッサードラゴンの鎧を着ているとはいえ、至近距離でダークボールの爆発を受けたのだ。

無傷というわけにはいかなかった。

 

 しかし、ギルバートは怒りの表情ですぐに立ち上がり、よろよろと立ち上がる伊吹の胸ぐらを掴み、持ち上げて地面に背中から叩きつける。


「ぐふっ」

「貴様、ふざけるなよ。微能の分際で、俺を傷つけるなど!」


 さらに、ギルバートは伊吹を踏みつける。何度も何度も。


「俺のような天才を貴様のようなちょっとだけできるような人間が傷つけるなんて、100年はええんだよ!

いや、あっちゃならねえんだよ」


 ギルバートは伊吹の顔面を蹴り上げる。伊吹の首はボールのように弾かれる。


「貴様は調子に乗りすぎたんだ。俺になぶられて死ね」


 ギルバートは短剣を抜いて、伊吹の右手の甲に刺し貫いた。

伊吹の手から鮮血が溢れ出す。


「ぐああああ」


 伊吹が右手の手首を掴み痛みに悶える。

 

「これで、槍はもう握れないだろ」


 ギルバートが醜悪に笑った。

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