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未亡人を守ると決めた異世界転移の微能おじさん……突きだけ得意  作者: めのめむし
第2章 決闘

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第44話 修行の仕上げ

 ダンジョンから帰ってきた翌日。(決闘まであと1日)


 草原の訓練場では剣戟が響き渡っていた。

リリとルルを同時に相手して伊吹が訓練をしていた。


 いつも木剣を使っていたりりも今日は木剣ではない。


 リリの斬撃が降ってくる。後ろからはルルが狙っていて、退がれない。


 伊吹は『居つかぬ足』を使って右に避ける。そこにルルが横凪に払ってきた。

斬れたはずだが手応えがない。


 『認識ずらし』でさらに右前方に移動していたのだ。


 空振りをしたルルに伊吹は反転し、「流突き」。移動しながら、同時に複数の刺突を繰り出す。

ルルがそれを捌いていると、リリが袈裟斬りをしてくる。


 それを状態はそのままに90度体を反転させ、リリに向き合い、そのまま『流突き』

流突きとは上体はそのままに、流れるように移動しながら、突き続ける伊吹がダンジョンで培った技術だ。


 伊吹は自信を持って披露する。

しかし、リリは伊吹の『流突き』と同じ移動の仕方で斬撃を繰り広げてくる。

さらにはルルまでも『流突きの』型を使ってきた。


 伊吹はたまらず、『認識ずらし』でリリとルルの斬撃から逃れようとするが、認識をずらした方にリリの斬撃が待ち構えていた。それを慌てて反対に避けようとすると、ルルが双剣を振ってきた。


 ズバッ!


 伊吹は背中を斬られるが、浅い。

わざと最低限に斬られることで、致命傷を防いだ。


 だが、


 シャキン!


 伊吹の首元にリリの大剣が突きつけられる。


「ま、まいりました」

「ああ、ここまでだな」


 リリが笑顔で模擬戦の終了を宣言する。


「伊吹さん、ずいぶん強くなったねぇ」


 ルルは双剣をしまいながら、感心したような顔で言った。


「うむ、一週間前とは見違えて強くなっている。これだけの成長は普通できないぞ」


 リリも同意する。

対して伊吹は、ルルに斬られた背中を3頭身の騎士型ゴーレムのアイに回復ポーションをかけられながら答える。


「ここは、まだまだですって答えるべきかもしれませんが、皆さんのおかげ様で一週間前とは確かに違っています。

師匠と先生相手では手を抜かれてこれですが、今ならこの世界に来た時にあった盗賊くらいだったら、一蹴できそうですよ」

「いやいや、確かに手は抜いていたけど、2人がかりの攻撃も捌いていたし、かなりの実力はついているよ」

「そうだな。自分で発見した流突きも中々のものだった」

「あ、なんでリリさんもルルさんも流突きの動きができたんですか?」


 リリとルルがそれを聞いて、顔を見合わせて笑う。


「あれは、今回の修行の進化系で後で教えようと思っていたんだ」

「教わらなくても、突き詰めればあそこには辿り着くんだけどね」

「え? す、すでにあったんですか? ……は、恥ずかしい。自分で『流突き』って名前つけちゃいましたよ」

「うーん、いいんじゃないのか? あれには名前がついていなかったから、これからは『流突き』で」

「つかぬことをお聞きしますが……、名前がついていない理由は」

 

 ルルが笑いながら答える。


「あはは、あれはすり足と居つかぬ足を突き詰めれば、当然できるものだから、名前はついていないんだよ」


 伊吹が真っ赤になる。

厨二病が女子にバレてしまった高校生のような気分だ。


「は、はっず。なんか、ダンジョンのテンションで自分で開発したって気になって、『流突き』なんて名前つけちゃった。

いや、でもあまりにも痛い名前は避けて、控えめな名前にしたんだけど、そこはセーフっていうか、いやでも、ドヤ顔で名前をつけた時点でアウトか」


 伊吹が早口で口走りながら悶えている。

それを微笑ましく思いながら、リリがフォローする。

 

「いや、いいんじゃないか。名前はないよりあったほうがいい。それにぴったりの名前じゃないか

突きが『流突き』だから、斬撃は『流斬』でいいんじゃないか。福山伊吹命名の技として、美羽様に報告しておくよ」


 伊吹は頭を抱えて、首を振る。


「やめてー、恥ずかしい……、あれ、美羽様に報告するってことは、今まで教わった技術は美羽様の流派とか?」

「ああ、言ってなかったか。美羽様が作った『神桜流武術』というんだ。魔法を含めたあらゆる武術が含まれている複数の世界で最強の武術だ」

「そ、そんな、最強の武術に『流突き』は……」

「ああ、もちろん登録申請するぞ。通れば名誉なことだぞ」

「は、恥ずかしすぎる……」

「あはは、面白い。恥ずかしがらないでいいよ、伊吹さん。自分で身につけたんだもの。あなたの努力は確かに身になった証拠だよ」


 ルルが慰める。

バカにする雰囲気は全くないのが、伊吹にとって救いだ。


「まあ、そういうことだ。さて、訓練は終わりにして戻ろうか」


 今までスパルタだったリリにしては、ずいぶん控えめな訓練量だ。まだ昼にもなっていない。


「あの、まだ俺は訓練が足りないんですけど……」

「なあに、昨日までのダンジョンで十分訓練はしている。今日は確認のためだけだったんだ。根を詰めすぎてもいけない。疲労は間違いなく溜まっているはずだからな。それにルルの最後の認識ずらしの伝授もさっきやったし、今は教えることもない。今日は残りをのんびり過ごして、明日の決闘に備えればいい」


 しかし、伊吹は不安な顔をする。

明日の決闘は間違いなく格上であり、命すらかかっている。

訓練をすることで気が紛れていたが、それをしないとなれば不安が頭をもたげてくる。


「不安なのはわかるが、かと言って無理をしすぎても良くない。この時間を有意義に過ごせば、不安など忘れてしまうぞ」

「そうだよー、エリシアさんとデートとかすればいいんだよ」


 ルルの爆弾発言に伊吹は中学生のように動揺する。


「エ、エリシアとはなんでもなくて、そんな気もなくて、だから、デートなんて、そんなことは考えてなくて……そ、それにエリシアは未亡人で、まだ旦那さんのことが……いや、わからないけど」


 ルルは、そんな伊吹を見て、呆れたような、しかし優しい目で諭す。


「何も、エリシアさんと付き合えって言ってるわけじゃないんだよ。でも、今まで散々お世話になっているでしょ。

お礼を兼ねて一緒に出かけてもいいんだよ。明日の決闘でどうなるかわからないじゃない?

勝負は水物だからね。伊吹さんが死ぬかもしれない。そうしたら、この世界に来て支えてくれたエリシアさんに心からのお礼っていつ言うの? そのためにデートに誘うんだよ」


 ルルの言い分に伊吹も納得した。

考えてみたら、今までお礼は言ってきたが、それは軽い挨拶みたいなものだった気がする。

心の底からの感謝は伝えられていないと思う。

明日の勝負で自分が敗れたら、それは伝えられないし、エリシアはギルバートのものになってしまう。


 もちろんそうならないように全力を尽くし、必ず勝つが、万一敗れたら、このままでは真心を伝えることができないまま、エリシアはギルバートの下に行くことになってしまう。


 伊吹は、ルルの言う通りデートに誘うべきだと思った。


「ルル先生、ありがとうございます。お礼をするためにエリシアとデートに行ってきます」

「うん、そうだね。行っておいで」


 と、答えるルルの口角がわずかにヒクヒクと動いていた。


 そのルルを見てリリは呆れたようにため息を吐く。


「ルルのやつ、楽しんでるな。まあ、ルルの言うことは確かに正しいから、何も突っ込まないでおこう」


 リリは小さく呟いた。


 草原の訓練場を解体して、ルルが収納したら、街に戻った。


 エリシアの店に行くと、エリシアがちょうどポーションの客を見送ったところだった。


「あら、イブキさんにリリさんルルさん。今日はもうお帰りですか?」

「ああ、リリ師匠とルル先生が今日はもうのんびり過ごすようにと」


 伊吹の声は硬くなっている。これから誘うのだから緊張する。


「まあ、そうなのね。おやすみも必要ね。それじゃあ、お昼ご飯を作りましょうか」


 そう言ってエリシアが店の中に入ろうとする。

伊吹がそのまま見送ろうとしていた。


 ドン!

「グエッ」

 

 伊吹の脇腹にルルの肘打ちが突き刺さる。

 

「どうしたの?イブキさん」

「ぐ、うう、なんでもないんだ。エリシア。それよりも、お昼は2人でどこかに食べに行かないか?」

「お昼を?」


 エリシアが首を傾げる。

その仕草があざとい。

伊吹は赤くなる。


「外でお昼食べて、ちょっと街を散歩しないか。市場に行ったり、あと夕陽が綺麗なところに行ったり」


 エリシアが嬉しそうな顔をして手を合わせる。


「まあ、それはデートみたいねぇ。」

(デートに誘ってるんだけどな)

「私も行きたいわ。連れて行ってくれるかしら。あ、リリさんとルルさんは……」

「私たちは問題ない。こっちで適当に済ませるからな。楽しんでくれ」

「それじゃあ、お言葉に甘えるわね。お店を閉めちゃうから待ってて、伊吹さん」

「ああ、俺も手伝うよ」

「ありがとう」


 30分後、今日の訓練で汚れた服を着替えて店の前にいた。


「うーん、綺麗な格好なんだけど、デートにはラフすぎるねぇ」

「でも、これしか持っていなくて」

「まあ、仕方ないか」


 伊吹がルルとそう話していると、チリンと音を立てながら、店のドアが開いてエリシアが出てきて、店に施錠する。


 伊吹が手を差し出した。


「じゃあ、行こうか。エリシア」

「ええ、よろしくね。イブキさん」


 エリシアが伊吹の手を取った。

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