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15 友情と年齢確認


「さ、そろそろ帰ろうぜ」

「急にしゃがみこんで、どうしたの?セオドア?」


するとベスが嬉しそうに、セオドアの首に手を回す。

「ベスと約束したんだよ、今朝約束破っただろ?だから今日屋敷に帰る時は、おんぶするってな」

よいしょっと掛け声を出しながらベスを背負い直す。


「まぁ、そうなの。良かったわね、ベス」

「だけどこのちびちゃん、ちっちゃい割にちょっと重いんじゃないか」

「レディに何てことを言うのよ」


セオドアの揶揄いに、ベスは文句を言いながらも楽しそうだ。


「ほら、ベス、しっかり掴まっとけ。じゃあ、アンナ、先に行っとくな」


セオドアがベスを背に乗せたまま走り出す。

ベスが、オレンジ色の光に包まれながら、きゃあきゃあと笑いながらはしゃいでいる。

そんな二人の後をゆっくりと歩けば、涼しい風が吹いてきて気持ちがいい。


「・・・本当に、ここにきてからベスが楽しそうだ」


アルバート様が私に笑いかける。


「アンナ嬢、君たちのおかげだ。本当にありがとう」

「・・・いいえ。私は特に何もしていませんわ」


改めてお礼を言われると、なんだか心がじんわりと温かくなる。


「ベスが一緒にいると、私もとても楽しいです」


アルバート様が来てから余計な仕事も増えて忙しいが、忙しい分ヘンリー様のことを考えなくて済む。

何よりベスが可愛くて愛しくて、一緒にいると幸せな気持ちになれるのだ。


アルバート様がくるりと私に向き直る。

西日が当たっているせいか、心なしか顔が赤い。

それとも外に出ていたから、アルバート様も日焼けしたのだろうか。


「アンナ嬢、どうか私と友人になってもらえないだろうか?」


「えぇ!?」


「ダメかな?」


アルバート様の顔はいつもの無表情だったけど、今日は心なしか表情が柔らかいように感じる。

(友人って私でいいのかしら?貧乏子爵家の私と?この佳人が?)


自分との差に尻込みするが、アルバート様は真剣だ。


こんな風に真摯に友情を求められたことがないので、多少気恥ずかしい。

顔が自分でも赤くなるのがわかる。


「あ、では、こちらこそよろしくお願いします」


何となく照れながら返事をする。


「じゃあ、友情の握手を」


アルバート様が真っ直ぐに手を差し出してきた。

(あ、握手ね、握手・・・・・・握手?)

こんな場合、世間一般では握手をするものだろうか?


よくわからないままに、そっとアルバート様の手を握ると、セオドアがぬっと顔を出した。


「おい、何やってるんだよ」

「わぁ、びっくりした!何もないわよ、ただ、アルバート様と友人になっただけよ」


セオドアがちっと舌打ちをする。


「なら、俺も入れてくれ」


無理やり私の手を剥がしてアルバート様と握手をするが、何だかアルバート様は迷惑そうだ。

「じゃあ、私も」

セオドアの肩から手を伸ばして、ベスも二人の手の上に自分の手を重ねる。


「えっ、じゃあ、私も」

何となく仲間外れになったような気がして、私も慌てて上から手を重ねる。

アルバート様は苦笑いだ。


「・・・・・・今夜は、4人の友情を記念して祝い酒だな」


「あ、ごめんなさい。私、まだお酒は飲めないので。無理です」


水を差すようで悪いと思ったが、一応伝えておく。

成人は17歳だが、お酒は20歳になってからだ。


アルバート様が驚いたように私を見る。


「アンナ嬢、いくつなのだ?」

「えっ、何言ってるんですか?17歳ですよ。アルバート様、私を何歳だと思っていたんですか?」

(そんなに老けてるかしら?)


「いや、領主だし、しっかりしているから、てっきり私と同じくらいの年齢かと・・・」

「同じって、アルバート様こそ何歳ですか?」

「私は21歳だ」


『えっ!!』


私とセオドアの声が重なる。


「何だ?その反応は?」


「いや、あの、ほら、あんまりにも美しいから年齢不詳だなぁって思っていまして」

「俺は、何か父親感漂うから、てっきり30くらいかと・・・」


「父親感ってなんだ!?失礼な!私はまだ若い。そんなことを言うが、セオドア、君はいくつだ?」

「えっ、だって、ベスとめっちゃ親子してんじゃん。ちなみに俺は16歳だ」

「16歳!?それでか?」

「それでって何だよ。もしかしてあれか?俺が小さいからって、もっと年下だと思っていたのか?」


「いや、春から入団って言ってたから、14か15かと・・・」

「あっ、うちが人手不足のため、セオドアはオリバーの卒業後に入団することにしてくれているんです。だから年齢は16歳なんですよ。言ってませんでしたか?」

「そういう問題じゃないだろ?今、明らかにこいつ、俺のこと、小さいって言ったぜ?」


「いや、15も16も変わらないだろう。そもそも私は君の背が小さいとは、一言も述べてない」

「あぁん?『うどの大木』って言葉、あるよな!?」

セオドアがアルバート様にガンを飛ばす。


「もしかして、それは私のことを指して言っているのか?」

二人が段々とヒートアップしていく。

(ダメだ、せっかく仲良くなったと思ったのに)


「アンナ、本当だね」

ベスがセオドアの背中の上でしみじみ言う。


「えっ、ベス?何が?」


「大人も子どもも変わらないね。外だけお兄さんで、中身は子どもだ」


その一言で、二人が大人しくなったのは言うまでもない。

(ベス、えらいっ!)


◇◇◇


「遅かったですね、心配したんですよ」

クララがエプロンで手を拭きながら出迎えてくれた。


なんだかんだとあったおかげで、もう陽が沈みかけている。

(急いで夕食を作ったら、ベスたちの帽子も探さなくてはいけないわね)


こんなに白い、陶器のような肌なのだ。

日焼けなんかして家に戻らせたら、ご両親がびっくりするかもしれない。


セオドアがベスを地面に下ろしながら聞いてくる。


「アンナ、明日の視察はいつ行くんだ?」

「お昼食べたらでいいかしら?」

お菓子を作って差し入れをすることを考えると、そのくらいの時間が妥当だろう。


「りょーかいっ!遅れんなよ」


セオドアも軽やかに駆けていく。

後ろ姿に手を振り、ベスと手を繋いだら、きゅっと握り返してくる。

(こんな可愛い子がいなくなって、ご両親はさぞかし心配しているでしょうね)


明日、工事がどのくらい進んでいるか、また、費用がいくらかかるのかも見極めなければならない。

(どうか少しでも捗っていますように)


祈る思いで屋敷に入った。


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