99: See you my world
頭が痛い。
俺は混同する記憶に、息苦しさを覚えた。
今まで混同されず、重なるはずのなかった記憶。危機的状況になり、走馬灯として、本能として蘇ったのは、吸収した人の記憶。
こんなの、利用するしかないだろ。
ーー俺は自身の腹を原点としてビームを放ち、自身も貫く代わりに彼らも同時に貫いた。
「勝ちに行きましょう」
俺は杏奈の記憶から、自身の引き裂かれた身体どうしを結びつけることに成功した。
対して、混合した俺の皮たちは人などとはより言えない姿。とても醜く、真ん中にぽっかりと穴が空いていた。
『うう、うおあうぉう』
赤ちゃんのような喃語を発している。気味が悪い。
「こっちを見ろ」
柊木慶彦の声が聞こえた。その声の先には、腰に何かを巻いている彼の姿があった。
「やはり所詮、君の成れの果てだからゴミ同然だったな」
「失礼だな」
一応あれも元俺だ。侮辱されるとなぜかこちらも侮辱されているように思える。
「しかーーーーし、やむを得ないが、彼らはやはり私を必要としていた。私が、神に選ばれた歴史的人物であることは、間違っていなかったのだ!!」
彼はどこか興奮状態に陥っているように見える。
すると彼は、ポケットから注射器を取り出した。
「変身」
彼が注射器をベルトに指した瞬間、俺の皮たちはより液体化し、俺を避けて綺麗に彼の元へ集まった。
なんだ、眩しい。
俺は彼らから発する輝きから、思わず目を隠してしまった。
輝きが収まってくると、その輝きの中から現れたのは黒い液体を纏う俺だった。いや、俺に似た柊木慶彦だった。
「これが! 本当の神。やはり作り物ではなく、生きて、自分の意思があってこそ、神は確立される。やはり私が髪にならなければいけなかったのか……これもまた、歴史に刻まれる戦いになるであろう」
定義からして、俺も神と言っていい気がしなくもないんだけどな。
すると自称神は彼の周りに俺の化身のようなものを現した。
彼らの顔は無表情で、どこか悲しそうにも見える。
「これが神の力、人を完全に創造できるのさ。行け!人よ」
すると彼らは俺に向かって武器を持って走ってきた。
が、俺はそれ相応の技を繰り出した。
「微分」
俺は走ってきた化身一人一人を微分し、一瞬で消し去った。
いやぁ、微分強い。このままやつを殺して……
「微分、やれるならやってみろ」
突然、彼は俺の目の前に現れ、俺を黒い液体で突き飛ばした。
俺は欠かさず液体を微分させようとしたが、俺は人間では無いものについて微分していたため、黒い液体は微分されず、俺を封じ込めた。
「髪に抗うことなど出来ないのだよ。出来損ないめ」
俺が出来損ないか、ふざけやがって。
「この力があれば、俺は新しい世界を作り出せる。他の世界を壊して、私が望む世界へと変えるのだ」
俺は再び、なにか思い出さないかと目を閉じるが、何も新しく見えてこない。見えるのは彼ら2人の記憶だけだった。
なんでこんな時に何も見えないんだよ。くそ。
「君には特別に、最初にこの世界から消える人にしてやろう」
すると彼は俺の目の前で手を上げ、その上に大きな黒い玉を作り始めた。
「これが、これが世界だ! 私の世界となるものだ!」
彼の世界とは一体何なのだろうか。地獄でも作るのだろうか。
「そんな壊れた世界、誰も望まない」
俺は戦うのを諦め、杏奈の記憶を垣間見ながら妄想し
始めた。
彼女の戦い、彼女の人生を見ていると、何だか今の人生が逆に良く見えてくる。
別の世界の杏奈の記憶を見てみることにした。しかし彼女はなんの能力も持っていない。ただの平凡な女子高校生だった。
え?
俺はまた別の杏奈を見るが、彼女は能力を持っていない。さらに、幸せそうに見えた。
これは、俺らの世界、俺ら付近の世界がおかしいだけなのかもしれない。なら、俺はこの世界を壊して、みんなが幸せな世界を作る。
これは、不幸な世界だ。
俺は自分自身を黒い液体に徐々に変える代わりに、この世界を吸収することにした。そうでないと、彼が先にこの世界を壊してしまうからだ。
なら、先に壊してしまえ。
「なに馬鹿なことを、貴様は神ではない。神ではないただの道具のくせに、この世界を吸収などするな! 私たちの存在自体が消えることになるぞ!」
「俺はこの世界を吸収して、作り直す。他の世界と変わらない、俺達がいない世界だ」
俺は口から黒い液体を出すだけでなく、全ての体を黒い液体へと変え、世界を飲み込んだ経験から、直ぐにこの世界を飲み込んだ。
さようなら、俺の生まれた世界。
本当に申し訳ございません。投稿予約を設定したつもりが、つもりで終わってしまい、投稿していませんでした。
次で最終回です。最後にはこのようなことがないよう、努めます。




