98; Going to win
「君を今から消す」
柊木は手を広げてそう言う。彼の声は震えず、さらに彼から感情を全く読み取れないことから、彼は真剣で、冗談を言っていないということが分かり、困惑した。
「なんで消すんだ。それにその周りの俺はなんだ。気味が悪い」
俺がそれらを指で指しながら問うと、彼は説明を始めた。
「これらは君が脱皮した皮で作った人形さ。この人形の中身はAIだから私の意のままに動き、そして壊れない。不完全ではない。最高の神を作れたのだ」
より気味が悪い。脱皮した皮をわざわざ取っておいていたのか。
「しかし君がいることによって、君が障壁となる可能性がある。だから実験も兼ねて君を消す。いけ、神よ」
そう柊木が言った瞬間、彼らは一斉に俺へ向かって走り始めた。
来る。
攻撃の体制になった時、なにか違和感を感じた。
彼らの動きは、頭を前に出して走り、彼らは口を開き、黒い液体を出し始めたのだ。
まじかよ。
俺はそれを見てすぐさま走り出し、直角に曲がって彼らの攻撃を避けた。
あいつらは所詮AI。彼の指示がなければ動かないんだ。なら、あいつを先に倒せば良い。
俺は拳を作り、片手の爪でその拳を傷つけ、その傷から黒い液体を放出して拳を黒く染め、彼に拳で殴ろうとした直前、彼はなにか言った。
しかしそんなことは気にせず、彼の頬を殴った。
案外簡単だったな。
そう思った刹那、俺の頭と胴を横へ何かに引っ張られた。
俺はすぐに床を殴って穴を作り、その穴の中に足を入れて耐えた。
引っ張るものを見るが、それはあまりにも衝撃的で、見ることすら怠るほどのものだった。
今まで脱皮した俺の皮たちが、混ざりあっていたのだ。
柊木は自分を犠牲にしてまで彼らをこの状態にしたかったのか。
彼らはひとつとなるが、それぞれの顔が別々の場所にあったり、手足が何本もあったり、胴の内側がうねったりと、とても人の形をなしてはいなかった。
『エラー発生。1種取り込み失敗。強制的に取り込みます』
そう言うと、彼らから俺にドスドスと音を立てながら走り近づいてきて、彼の腹は引き裂かれ、中では黒い液体が波打っていた。
ここまでか。
ーーそう思った瞬間、どこからか声が聞こえた。
「七海杏奈です。趣味は映画鑑賞です。よろしくお願いします」
え? いつの間にか俺はどこかの学校の教室に立っていた。周りの人は皆俺のことを見ており、何故か後ろから強い視線を感じる。
「長谷川和也です。しゅ、趣味は、映画鑑賞です! よろしくお願いします!」
きっと視線の正体は彼だ。理由は無いが、何故かわかる気がする。
そう思った瞬間、次は俺はその元気のある人の所の席に座っていた。
なんだこれは。何が起きている。こんな経験なんてしたことない……いや、そうだ。俺はしていないが、吸収した人たちが経験したことなんだ。
以前もあった。暗闇に閉じ込められた時、柊木慶彦と一緒にいる人の記憶が蘇った。
恐らく、自分が必要な情報が呼び起こされるんだろう。
なら、彼らは?
「七海杏奈と長谷川和也。」一体なんの意味が。
すると俺はまた別の場所におり、杏奈が白い髪になって沢山の人と戦っていたり、また別の場所になると長谷川和也が舞台の前に立ち、拍手で賞賛されていたりした。
「彼らはおそらく俺にとって必要なんだ。なら、完全に取り込まなくては」
俺はすぐに長谷川和也、七海杏奈の所へ行き、口から黒い液体を出して取り込んだ。
取り込んだ瞬間、彼らの記憶が全て重なり、負荷がかかり苦しむと同時に、理解した。
「俺の腹を原点とし、ビームのグラフををy=0とする」
そう言った瞬間、現実に戻った。
俺の腹は撃ち抜かれているが、同様に混合された彼らの腹もビームにで撃ち抜いた。
いける。
「勝ちに行きましょう」




