表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Overwrite -オーバーライト-  作者: もちぷよ
This is the end of start

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/100

95: Known

「少し話そう。A-1」


 その呼び方に、胸の奥がざらついた。


「俺はA-1なんて名前じゃない」


「じゃあ何と名乗る? まさか“柊木慶彦”なんて言わないだろ?」


 自分の名を口にして否定する──意味がわからない。

 混乱する俺を見て、慶彦はあっさりと言った。


「まあ、名前なんてどうでもいいさ。話に入ろう」


 彼の軽さに、薄い違和感が走る。


「この世界──ゲームの世界は、私ともう一人の男で作った。なぜ作ったと思う?」


「知らねえよ。話したいなら勝手に話せ」


「そうだな」


 苦笑しつつ、彼は続けた。


「君は、このゲームの“集大成”なんだ」


 意味が取れない。だが、どこか懐かしさだけは心の端に残る。


「私たちの世界は、進化をやめた。人は成長せず、ぬるま湯の中で腐っていく。他の生物は弱さを克服するために形を変えるのに、だ」


 慶彦の拳が震える。激情と悔悟の入り混じった声。


「だから、弱い立場を人工的に作った。極限状況なら、人は変わると信じた。ここはその実験場だ」


 俺には理解できない“熱”だった。

 だが、ウソを言っている熱さではないとだけはわかった。


「ゲーム依存症……その病がきっかけで進化を遂げた者たちもいた。だが、その“進化した人間”に、私の相棒は殺された」


 彼の目に涙が浮かんだ瞬間、少しだけ見直しそうになった。


 ──だが、次の言葉で凍りつく。


「嬉しかったよ。私より先に進んでくれた。だから私は、自作のバグを他人に踏ませた。現実で、そいつは進化して、相棒を殺してくれた」


「……ふざけるな!」


 胸の奥が爆ぜたように熱くなる。


「人の死を笑うな! “殺してくれた”ってなんだよ。人の人生を玩具みたいに扱うんじゃない!」


「お前も同じだろうが!」


 一瞬だけ怒鳴り返し、彼はすぐに冷たい表情へ戻る。その落差が不気味だった。


「さて、話を戻す。“彼”がいたせいで止まっていた計画を再始動した。“全知全能計画”。君を神に仕立てる計画だ」


「……はずだった?」


「ああ。君は──あまりにも“人間的”すぎた。神は人であってはならない」


 その瞬間、身体が石に変わるように動かなくなる。


「全部、偶然じゃない。君は最初から、私の敷いたレールを歩くだけの存在だった」


「人間が人間で何が悪い! なら“神になるレール”を敷けよ!」


「それができないから言っている」


 視界が固定され、呼吸すら浅くなる。

 慶彦が近づき、静かに囁いた。


「君は私の“ゴミ箱”だ。蓋が閉まるまで、話を聞いてくれてありがとう」


 次の瞬間、彼は消えた。


 ──静寂だけが残り、世界が終わった音がした。

 要するに、俺は封印されたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ