94: Touch
ーー「僕はもう寂しくない。だからこれ以上犠牲者を出さないで。君じゃなくて、未来の僕に伝えて欲しい」
俺はそれを聞いて、笑った。
「自分なんだから自分で言えよ」
すると幼少期の柊木はため息をつき、言う。
「自分でも分かってるんでしょ? 僕は君が作り出した柊木慶彦の姿をした人形であり、今このように僕が話しているのは、実は全部心の声なんだって」
俺はつい、「は?」と声おもらした。
「だ、だって、君は僕たちを吸収しているけど、それは実際には僕たちの記憶を引き継いでいない。証拠として、混乱しないからだ。大体のアニメや映画は、記憶が2つ以上なると混乱する。そうなると、僕がただの空想の人物で、この話をさせているのも自分自身ということに納得がいく。それにまずまず、こんな流暢に喋れないでしょ? この年齢の人が」
俺は顎に手を当て、少し考えてみるが、そうとなると納得がいく。
てことは、「もう犠牲者を出したくない」というのは、俺の心がそう思っている。と考えられることが出来る。
1回彼自身にやめれるか聞いてみるか。
俺が身を起こした瞬間、また口から黒い液体が現れ、俺の体を包んだ。
変なタイミングにきやがって。
包まれたと同時に、視界は一瞬にして真っ暗になったが、直ぐに光が見えた。
その光に手を伸ばすと、黒く染った視野が明るくなった。3度目の脱皮をしたのだ。
脱皮した元の場所から体を起こす。
今回は変な感じだ。身長が変わっていないのに、胸が大きくなっている。
俺は自身の胸を触って確認するが、その姿を白衣の男……柊木慶彦に見られた。
俺は咄嗟に胸を隠し、体を捻って自身の裸体を見えないようにした。
「なるほど……高校生ってところかな」
一体何を言っているのだろうか。恥ずかしいから早く出ていって欲しい。
「体調が優れたなら、次をお願いするぞ」
「何故ですか」
俺は咄嗟に言ってしまった。
「なんだどうした? 君が前言ったんだろう? 『もう一度行けば確認できる』だから行くって。それに乗り気だったくせに」
「それはもう分かっただろ!! 今の話だ! 今の!」
つい大きな声を出してしまった。
シーンと聞こえるくらい静まり返った部屋。
一体どうすればいい。1歩下がるが、少しの足音でもおおきく感じる
「……反抗期、か。めんどうだし、だるいな……一旦出ていくか」
すると彼は扉を開け、部屋から出ていった。
え? こんな呆気なく終わるものなのだろうか。
俺はとりあえず、ベッドに横たわる。
何も考えず、ただ照明を見ていると、首にチクッと痛みが走った。
何かと思い見てみると、それは少し大きな注射器であり、それが首に刺さっていたのだ。
「は?」
俺は何も抵抗できず、そのまま目を閉じた。
物音がするので、目を開けてみると、そこはどこか見覚えのある、殺風景な場所だった。
「やぁ、起きたか」
声がする方を見ると、そこにはいくつものアクセサリーを身につけ、包帯が巻かれた腕や顔、橙色がメインに見繕われた男が座っていた。
「ここはどこだ」
「ここはゲームの中さ。ゲームの世界じゃないと、君に抵抗されるし、勝てないからね」
男はそう言うが、一体なんのことなのか全く分からない。
「ちなみに俺は柊木慶彦だ。改めましてよろしく」
え? あれが? あれがあの白衣の男? 本当にそうなのだろうか。全く面影がない。
「俺は今から君に、ここは何なのか、君は何者なのかを教えようと思う。思春期でもあるからな。先に言っておくが、君の回答次第で君は死ぬ事になる。お気をつけて」
そんな理不尽な。一体彼は俺に何をしようって言うんだ。
「まずそうだな〜この世界を作った背景から始めよう」




