93: laugh
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
本日から、再びテスト2週間前になりました。なので、次回は来週の金曜日。次の次は再来週の金曜日に更新しようと思います。
ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。
「お願いします」
そう言って俺は目を閉じたが、何かが変だ。
そう思い目を開けてみるが、まだ転送されておらず、先程と同じ景色だった。
「どうしたんですか。早く行かないと」
居場所を作ってあげられない。
「君はなぜ行きたいんだ?」
「俺が行きたい。というより、まずまずあなたが行かせてるんでしょ?」
すると白衣の男はより深刻そうな顔をする。
「あれは、柊木悠斗。16歳。俺の息子だ」
え? あの姿で16年も生きているようには見えない。
「今は高校1年生だ。だが、さっきの姿は明らかに小学生の時の悠人だ」
「何が言いたいの」
白衣の男は頭を抱える。
「俺も分からない。1回だけでこれだから、まだ確信は持てないが、恐らく君の姿と同じ位の年齢の世代まで時を遡るんだろう。それが偶然俺の息子が小学生の時代だったってことじゃないか?」
「じゃあ、もう一度やれば確証を得るかもしれないでしょ? やろう」
俺はそう言って再びヘルメットをかぶり、目を瞑った。
さっきと違う音がする。
目を開くと、そこには俺を囲うように人集りが出来ていた。
鼻を伸ばして俺を見る男子や、不思議そうに見る女子たちが居た。彼らの服はどれも黒がメインの服で、金色のボタンが真ん中に1列に並んでいる。学ランだ。
俺はその中で1人。見覚えのある顔を見つけた。
「おい柊木。あいつお前のことずっと見てるぞ」
「なわけ……ほんとだ」
目が合った。悠斗は成長するとあんな姿になるのか。しかし惜しいな。悠斗の成長した姿をよく見れない。
俺はヘルメットを外し、椅子から降りると、背中から「ジュー」と音を立てた。
「っっつ!」
立ち上がった瞬間、男子からの「おー」という声が聞こえ、後ろを見ると、座っていた部分が無くなり、裸になっていることが分かった。
男の声がうるさいが、俺は気にせず悠斗の所へ行った。
すると悠斗は走って俺から逃げて行った。
「なぜ逃げる」
そう言って俺は走って悠斗を追いかけた。
幸い彼の足は遅く、すぐ追いつくことが出来たので、背中に乗って動きを封じた。
「助けてー!」
「うるさいぞ悠斗」
俺はそう言うと、大声で返してきた。
「俺は悠斗じゃねぇ! 慶彦だ!」
え? 悠斗じゃない?
人違いだったか……まぁでも、俺の中の人を増やせるんだったら、良いか。これで寂しくならないだろう。
俺がそう思った瞬間、慶彦は黒い液体となって溶け、同時に口から、手から、様々なところから黒い液体を出し、2つ目の世界を黒で包み、取り込んだ。
再び人影がなくなってしまい、すこし寂しさを感じる。
そんな中、再びヘルメットを被り、椅子に座って目を瞑った。
少しして、機械の音が聞こえ始めたところで目を開けると、白衣の男のいる場所へ戻ってきた。
「戻りました」
無表情の女性の声で白衣の男は反応し、俺を見た。
「どうだった。一体いつの時代だった」
「なんか、学ラン着てました」
「中学かー、まぁだよなぁ」
あれが中学校。もう少し見てみたかった気もする。
「でも、あれ。柊木悠斗じゃなかったです」
「え?」
「あれは、柊木慶彦って言ってました」
すると白衣の男はおかしくなったのか、急に笑いだし、最後には倒れた。
「嘘だ……嘘だろ? それ、俺だよ。俺、柊木慶彦」
白衣の男=柊木慶彦だったのだ。
「え? じゃあ悠斗はどこに?」
「最初から悠斗じゃなかった。最初から俺だったんだ。あまりに似ていたから、自分でも気づかなかった」
え? そんな事……まぁあるのだろう。
俺は立ち上がって休憩室へ行き、ベッドの上で寝転んだ。
ふと柊木のことが頭に思い浮かび、幼少期の柊木を呼び出した。
「君は、人の気持ちを理解するのが苦手なんだね」
「お前にはいわれたくないね」
俺がそう言うと、柊木の動きは止まった。
「僕はもう寂しくない。だからこれ以上犠牲者を出さないで。君じゃなくて、未来の僕に伝えて欲しい」
俺はそれを聞いて、笑った。
「自分なんだから自分で言えよ」




