92: Tired
俺は立ち上がろうとすると何故か、体が重くなりその場に倒れた。
目を覚ますと、俺はベッドの上にいた。
その近くに、椅子に座っている白衣の男と、少し奥で立っている無表情の女性がいた。
「目を覚ましたか。疲れたんだな。とりあえず何もせず休もう」
さっきのが、疲れるということなのか。
「じゃあ1人にして下さると助かります」
そう言うと、2人はすぐドアを開けて出ていった。
姿が見えなくなった時、起こったことを整理することにした。
あれは、一体なんだったんだろうか。俺はただあの子を助けたかっただけなのに。
もう一度彼に会いたい。申し訳ないと伝えたい。
「どうしたの?」
すると聞き覚えのある声がした。
声が聞こえた方を振り向くと、そこにはいじめられていた子が居た。
幻覚だろうか。まぁそれでも、伝えたい。
「ごめんね。君をいじめていた子と君を同じ場所に入れてしまった。同じ依存先じゃ、また君がいじめられちゃう。このようなことになってしまい、本当に申し訳なく思ってる」
俺はベッドに寝ながらも、彼に俺の気持ちを伝えた。
「良いんだよ。僕は好きでいたんだし。ひとつ聞かせて、僕は一生あの暗い場所に居なきゃいけないの?」
「暗い場所?」
なんの事なのかさっぱり分からない。
「僕は君が僕を救ってくれると思ったから近寄ったんだ。でも、虐められるよりも酷いところに居るようなものだよ。あんな暗くて何も無いところ……お母さんに会いたいよぉ……お」
しまいには泣き始めてしまった。
そんな……すべてはこの子を助けるためにやったのに、なんで……こんなこと言われなきゃいけないんだ。
すべてはこの子のためだったのに。
そう思った瞬間、再び体から煙が出始めた。同時に唸り声を上げてしまったからか、白衣の男が扉から現れた。
するとこのいじめられっ子は白衣の男の方を見る。
「お父さん!」
「な、なんでお前がいるんだ悠斗」
この子の名前は、悠斗って言うのか。
しかし白衣の男にとって子供には気にしないのか、全く気にもとめず俺の方に来た。
「さぁ、脱皮しろ。脱皮すれば容量が増える。それに姿も変わるんだ。頼む」
俺は自身の皮を脱ぎ捨てると、前回と同じように黒い液体が飛び散り、布団に着いてしまった。
今回違うのは、悠人がその黒い液体となり、俺の口の中に勢いよく入っていった。
それを見た白衣の男は、俺を恐ろしく見るような目をした。
「なんですか」
「いや……なんでも。体調が優れたら扉を開けてくれ……」
そう言って、彼は扉を開けて姿を消した。よく見ると、扉の向こうは前回座った椅子と同じだった。
扉が閉じると、無表情の女性は俺に黒い箱を渡した。
「胸の下にそれを当てて、箱の真ん中を押してください」
言われた通りやろうとするが、胸のせいで見えない。先程まではこんなに大きくなかったのに、脱皮でここまで変わるか。
片手で片方の胸を押し退けて胸の下に箱を当ててボタンを押すと、その箱から先程の黒い液体が現れ、俺を包んだ。
手を握って開いてを繰り返すが、なんとなく動きやすい気がする。
そろそろ体調も良くなってきたので、俺はベッドから降りて扉を開けた。
すると白衣の男は普通の椅子に座って頭を抱えていた。
「ああ、やるか。やるか」
悠斗は暗居場所だと言った。暗い場所はもしかしたら、俺の容量なのかもしれない。なら、もっと人を集めて寂しくしないようにしなきゃ。
俺はヘルメットをかぶり、言った。
「お願いします」




