#88 Your child
は?
「なぜだ、何故なんだ。なぜ皆死を恐れる。なぜ死ぬことが怖いんだ? なぜ死にたくないんだ? 少し考えればわかるだろう」
すると副社長は手を広げて言った。
「人は皆、永遠・完璧を求めるからだ。君は違うのか? 私は全ての人はこの答えに辿り着くと考えている。ならば、私が完璧にしよう」
「馬鹿げてる。そんなの単純じゃない。皆大切な人と離れたくないんだよ。死んだ先の場所が分からない限り、死後に大切な人と同じ場所に入れるかどうかなんて分かんないんだよ」
副社長は長いため息をついて言った。
「面白い発想だ。なら今回の私個人のこの作戦も、君からなら新しい視点を得られるかもしれない」
すると彼は走って壁まで行き、壁に付いている赤いボタンの入ったケースを壊してボタンを押し、すぐこちらへ戻ってきた。
「話の続きをしよう」
赤いボタンを押した途端、ブーという音や機械が動く音が鳴り響いた。
「一体何を」
「まぁまぁ、とりあえず話を聞いて欲しい。これが最後かもしれないからな」
彼がそう言うと、彼の顔は途端に暗くなったが、すぐに戻って話し始めた。
「では話そう。私の歴史を」
副社長は私の前に椅子を持ってきて、それに座った。
「まず、どこまで伝えたか……ああ、あそこからか。
一応最初から話すか。
君も知ってる、ペネレイトを生成する能力を持った少女がこの世界に現れた。彼女は我々の仲間を殺し、同時に新人をペネレイトへと変えた。
これがまぁ、私の研究が始まったきっかけだ」
「ん、どこが?」
「新人がペネレイトになったところだ。で、その新人のペネレイトだが、今ここにある」
な、まさか。そんな……確かに見つからなかったが、副社長が持っていたのか。
「ペネレイトは素晴らしい。その後私の研究ではペネレイトのおかげで並行世界の存在を証明した。並行世界が実現するとしたら、君はまず何をする?」
「え、分からない。何するんだろ」
彼はため息をついて言った。
「残念だ」
そう言った瞬間、ゲームに入るためのピンク色の液体のタンクが私の右に下から現れた。
「まずは並行世界の自分自身と会うだろ。
実際私は会って、研究の成果を共有したさ。そしたらどうなったと思う?
どの世界の私も、杏奈にペネレイトを生成できるように能力を発現させたのさ。面白いだろ」
「そんな、だからどの世界の杏奈も能力を持っていたの……」
私はその事実を聞き、少し吐き気を催した。
「まぁ、私はそんなのは許さないさ」
「え?」
「だってそうだろ? 私の成果なのに、私が特異点だったのに、皆私に感謝しようとせず自分の成果にして研究し始めようとしたんだ」
「駄目なの?」
私が聞くと、彼は歯ぎしりをし始めた。地雷を踏んでしまっただろうか。
「駄目に決まっているだろ! 私が、私が特異点だぞ!? どの世界の中でも、たった一人、この私が人類を動かす技術を発明したのに、それを横取りされそうになった……」
すると私の後ろにもう1つ、液体のタンクが現れた。
「だから私は奪ったのさ。その研究を利用させない為にな」
「まさか、ずっと私たちが探していたのって……」
「そう、並行世界の私さ。私は嘘など付いていないぞ?」
そんな、平行世界の存在を考慮していれば、私達は騙されなかったのだろうか。
「でだ、知っての通りペネレイトのスキルを回収してもらったさ。だが、どうせならそのペネレイト。全部使いたいよな?」
一体何を考えてるんだ。これは止めなきゃ……
私は体を動かそうとしたが、お腹が急に痛くなり、倒れ込んだ。
「な、なんで」
「おお、動くな動くな。動いたら苦しむのはお前だぞ?」
「一体何を」
「話の続きで分かるさ」
すると左側にまた、液体のタンクが現れた。
「まぁ利用したいわけで、どう利用するかと言うと、並行世界を無くし、全て1つにするんだよ」
「は? そんなことしたら、別の世界の人、この世界の人はどうなるんだ」
「大丈夫さ。ペネレイトには死者を具現化する力を持っている。一旦地球全てを飲み込んで、統合するのさ。そしてその地球を別世界の地球と飲み込ませ、死者を全て具現化すれば、死者は0さ。完璧だな」
「狂ってる」
すると副社長は笑いだした。
「まぁそうだな。そう言ってられるのも今のうちさ。ペネレイトをどうやって増やす? 私はまだそれを伝えてないだろ?」
彼は私の腹を指さして言った。
「君の子供だよ。君の子供をペネレイトの源にする」




