#86 Why are you
体調が戻ったので投稿を再開します。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。
目覚めてから私は、沢山の杏奈のスキルを回収し、救った。
「これでちょうど90個目だな。すまないが、この問題が終わるまで頼む」
「もちろん、分かってます。そろそろ飽きが出てきましたよ。休みが欲しいくらいです」
私はそんな皮肉を副社長に言うと、副社長は「1日だけなら」と言い休みをくれた。
「大丈夫なんですか?」
「今回は試しだ。君の行動データを元にエアーに出力させてスキルを自動で回収出来るかどうかを試す。もし成功すれば君の休みも増えるだろう。だから休んでくれ」
…
久しぶりの休み。仕事をやりすぎて逆に何すればいいのか分からない。
会社の寮に住んでいるので、やはり仕事から抜け出せないのだろうか。
試しにカフェにでも行ってコーヒーでも飲もうかな。
会社を出てすぐ横のカフェ。そこで私は一般の人がいる中に紛れ、コーヒーを頼み、窓際の席に座り、流れるように移動する人々を眺めた。
中にははしゃぐ高校生、スーツを着た大人、ベビーカーを押す女性など、様々な人がいた。
なんであんなに楽しそうなんだろ。なんであんなに一生懸命に働いているんだろ。なんであんなに大切にしてるんだろ。
全部私のおかげなのに。私たちが世界の近郊を守ってるのに。何も分かってない奴らが。
「お待たせ致しました。ウィンナーコーヒーです」
横から店員がコーヒーを持ってきた。久しぶりのこの匂い。少し匂いと色が濃くなっただろうか。久しぶりだからか違って見える。
コーヒーを眺めていると、隣に座っていた人が私に話しかけてきた。
「どうしたんですか?」
「どうしたってどういうことですか?」
「いや、泣いてますけど」
え?
私は咄嗟に目を拭うが濡れず、鏡に反射する自分を見ても、私の目から涙は流れていなかった。
「君は泣いてないさっ、でも、君の心が泣いているのさっ」
よし、席を変えよう。やばい人が隣だった。
そう思い、コーヒーを持って席を立つと、
「いやごめんなさいごめんなさいごめんなさい。自分声掛けるのが苦手で……いや、あの、その、お話を聞かせてください」
「なんでですか?」
「暗い顔をしていたから」
私は席に戻り、彼と対話してみることにした。
どうせすぐ帰るから。
「私は精神科医になろうと思ってて、今悩んでそうな人に話しかけていたところなんです」
「ああ、なるほど」
あ、私悩んでるように見えたんだ。まぁ悩んでるのか。これは悩んでると言えるのか。
「自己紹介は大丈夫ですので、話だけ聞かせてください」
すると彼はバックの中から、私の目の前にシャーペンと消しゴム、白紙を置いた。
「ではまず、質問します。あなたは今、なぜ考えていたんですか?」
「え? いや、なぜ考えていたと言われても」
すると彼は私の目の前に出した紙を自身の前まで持ってきて、新しくシャーペンを取りだし、紙に「なぜ考えていたのか」と書き、その周りを大きく丸で囲んだ。
「で、なんでですか? 全然大雑把でいいですよ」
「えー、なんだろう、幸せそうな人を見て腹が立ったから? かな」
そう言うと、先程の大きな円から続く線を引き、「幸せそうな人への怒り」と書いて再びそれの周りを円で囲った。
「それでは、今している仕事の意義とはなんですか?」
「なんて言えばいいんだろ……」
世界平和って言ったら絶対引かれるしな。どうしようほんとに。
「世のため人のためみたいなですか?」
「あ、はいそうです」
流れでそうと言ったが、間違いではない。
「では、その仕事に対して、一旦最初から考えてみましょう」
初心に戻るみたいな感じかな。あるあるだけど、私のためになるんかな。
「では、今行っている仕事を大雑把でいいので教えてください」
「えーっと、そうですね。
会社のデータと従業員が盗まれたので、それの回収と共にそのデータの利用の妨害。二手に分かれて、私が妨害、もう1人がデータの回収という形でやってます」
「なぜ?」
え?
「あなた達がやるべきでは無いことをなぜやるんですか? 責任者が警察に通報したりして捜査をお願いはしないんですか?
もう一度聞きます。あなたはなぜその仕事をやっているのですか?」
確かに、なんでだ。なんでこの仕事をやっているんだろう。世界平和とずっと考えてきた。でも、何かおかしい。
何かが引っかかる気がする。
私は彼の目の前に移動した紙をこちらに移動させ、考えを小さな声で出しながら書き出した。
「そもそもなんで探しているんだ? 副社長が社長にバレたくないと言った。なぜ? 問題になるから。
というか、なんでペネレイトを回収しているんだ? 盗んだ奴らにデータの利用をさせないため。
でも一度もその『奴ら』に会った事がない。実際、時音もまだ見つけられていない。そもそも奴らは存在するのか? もし存在しないとしたら、あの鎧を着ていた奴は誰だ?
和也だとしたら?
じゃあ和也を探せば良い話になる。そういえば、監視カメラの時も和也が映っていなくて鎧の人だけが映っていた。だからあれが和也ということに納得がいくし都合がいい。
でも和也は能力が発現していなかった。
……いや違う。能力を発現させたんだ。となると、発現させられることの出来た人間は時音か副社長。
あの時、和也と2人きりにになれたのはその2人しか居ない。けれど、能力が発現し、成功したなら、普通は最初暴走する。
最初の鎧の被害者は副社長だ。
じゃあ、副社長が和也に能力を与えたのか?」
そう思っただけで鳥肌が立った。
否定したい。けれど、辻褄が合う。
否定したい。ならば、副社長本人に聞くしかない。
「すみません、この紙、持ってっていいですか?」
「シャーペンもどうぞ」
私はコーヒを飲むのを忘れたが後悔せず、そのまま会社に戻り、副社長の元へ行くためにエレベーターを降りた。
扉が開くと、ちょうど左から副社長が台車を押しながら現れたので、私はすぐに問いただそうとしたが、言葉を発せなかった。
その台車の上には、肌の上に所々赤い液体が飛び散ったような姿をした男性が乗っかっていた。
あれは、和也だ。和也は何度も何人も見てきたから間違いない。
そして先に声を出したのは、副社長だった。
「あー、みちゃったか」




