/51/ Yeah
まじか、ここをどう抜け出す。俺一人は出ることができるが、柊木は動かないでそのまま流れていくし、化け物はずっと天井から伸びてくるペネレイトと戦って動いてるから、どんどん沈んでってる。取り込まれるのはまずい。
しかしあれじゃ呑み込まれるのも時間の問題だろう。
俺は神奈さんが取り込んだペネレイトを回収したいだけなのに、周りにいる他のやつが倒したら採取出来なくなる。だから俺が一番に彼女を行動不能にしなければ。
俺はナイフを出し、彼女へ向けた。
「ナイフの先を原点とし、先の縦をy、横をxとする。そのとき、ビームの座標はy≧x>0」
俺は刀の先にで無限に続くビームを現した。流石に目立ったので、天井からペネレイトが伸びてくる。
俺は刀を横に振りかざし、壁、天井を全て切り裂く。
ついでに中心にいる神奈さんも横へ切ったが、ペネレイトで再生する。
「くそ、まるでペネレイトのバーゲンセールだな……」
切り裂いた天井、壁は元に戻り、再び蟻地獄の姿へ戻る。
俺はすぐにビームを放つのをやめたが、既に神奈さんと目があってしまっており、ペネレイトで体を抑えられ、神奈さんの元まで連れていかれる。
『あなたぁ、どこかであった覚えがあるわね。あなたのスキル、気に入ったわ。私が強くなるために、ぜひ取り込ませて』
神奈さんは俺の体を隅々と見始める。さらに彼女の肩には猫が乗っかっていた。
なんだ、ギャップ萌えか? にしてもなんだ、今猫を置く必要などないんじゃ。
彼女はそのまま俺の体を見る。まさか、猫に気づいていない?
「ニャー」
あ、鳴いた。
その鳴き声を聞き、神奈さんは振り返る。
『猫!?』
やはり神奈さんのじゃなかった。じゃあ誰のだ。一体この猫は誰の猫。スキルで出したとするなら弱すぎる。てことは気を逸らすためにここに猫を置いたやつがいるのか。
「やあ、猫さん」
神奈さんの横から手が伸び、姿を現した。
彼女は紺色のポニーテール、水色の目。その髪と目と絶妙に似合う裏地が赤のロングジャケットを着ている。
神々しく光が差し込む場所にいて、なぜ気づけなかったのだろうか。
神奈さんはその人と既に目が合っているが、流石に驚いている様子だ。
『1体どうやってここに、なぜ私の黒は働かなかった』
するとその人の肩へうさぎが登ってくる。
「この『うさっぴ』に連れてきてもらった」
そのうさぎは、もふもふしている。今すぐに触りたいぐらいだ。
すると神奈さんは我に返ったように俺と目を合わせ、手を上にあげる。
『弔いの歌:埋葬(結)』
神奈さんが発した瞬間、地震が起き始め、天井と地面がそれぞれ動き、重なろうとしている。
潰す気か。
俺とうさぎの人は同時に武器で神奈さんを攻撃する。すると上手く行き、神奈さんの首を切ることに成功した。
まじか。
しかしそう簡単に勝つことも出来ず、切断部分同士からペネレイトが飛び出し、それら同士でくっついて再生する。
「猫:変化 丸呑み」
うさぎの人がそう言うと、先程の猫が人ぐらいの大きさになり、神奈さんを丸呑みする。
うわ、神奈さんがここに宙に浮く地面を作ってくれてなかったらどうなっていたことか。
変化した猫から目を離した瞬間、天井のペネレイトは針のようにその猫に刺さり、猫はその刺さった痛みで反響するこの場所で叫びだし、倒れる。
その猫の腹からは刀が飛び出し、横へ切れ目を入れ、中から人が出てくる。神奈さんだ。
神奈さんの体は唾液で透明な粘液が全身についている。服も濡れ、水が濡れた時のように飲み込まれる前とは全く違う濃い色へと変わっていた。
『腹立たしい』
神奈さんはうさぎの人の方へ顔を向け、刀を構える。
『弔いの歌……』
そうはさせまいと、スキルの詠唱をしている最中だが、俺は槍で彼女を貫いた。
「いやぁ、危ない危ない」
そのうさぎの人からは感謝の顔と、引く顔が見受けられた。
「なんで引いてんだよ」
うさぎの人は答える。
「いやだって、普通攻撃する? それ変身中に攻撃するのと同じぐらいやばいって」
「いやまぁ、あんたさっきので絶対死んでたって。さっきのは多分、電光石火だし」
「だとしても……」
俺と彼女との討論が続く中、徐々に蟻地獄で人が流されていくと共に、天井と地面の距離が近くなっていった。




