/11×3+1/ Muscle
「まてまてまて、俺の勝ちだろ」
杏奈は喘ぎながら、俺の方を見る。痛いのか? 削られた箇所を手で抑えている。同時に、シューと、煙を出している。
しかし同時に、彼女の髪は白く変わり、目は赤く染まる。破れた服はゆらゆらと、彼女の姿は白い獣、赤い炎を彷彿とさせる。
嫌な予感がする。フレンドリーファイアがオフになったからMpは満タンに、Hpも全回復した。だから杏奈も回復していると思うが、様子がおかしすぎる。本当に回復しているのか?
しかし杏奈の髪は再び毛先から黒く戻り、煙もおさまる。
何が起きたんだ。彼女にはまだ隠している形態があると。あの姿を見たらそう判断するしかない。
杏奈は「ふー」と溜息をし、こちらに近ずいて来る。
攻撃されるんじゃないかと思い、構えるが、彼女は頭を下げた。なぜ?
「また、ごめんなさい。やり過ぎちゃいそうになっちゃいました」
彼女はなぜそんなに謝るのだろう。なにか昔そうなるような事があったのか。聞いてみるか。いや、ここは聞かずに。
「今後謝るな。これはゲームなんだから勝敗がつくのは当たり前。それに負けたろ? な? 俺が勝ったんだ。謝るならこっちだろ」
いや、まて、これだとなんか嫌な風にとらわれそう。そんなつもりじゃないのに。まずい。
しかし彼女は笑い、笑顔で言った。
「うん!」
彼女のかっこいい姿とは反対に、どこか可愛らしさと、美しさを感じた。新しい一面を知り、嬉しかった。
すると後ろから頭を何かに打たれた。
すぐ後ろを見ると、そこにはロボット。いや、柊木がいた。
「もう5分前だ。行くぞ」
そう言って彼はロビーへと戻る。
その姿を見て、俺と杏奈はロビーへと戻った。
戻った先には多くの人はもうおらず、最初に目に入った人は柊木だった。
彼の姿は以前と同様、沢山の超レアなパーツで見に纏われたロボットスーツ。しかし以前とは違うパーツの種類だ。前回とは反対に、スタイリッシュでは無く、とってもごつい。
黒と白を基調としたデザインは、収まりがあり、重厚感も目立つ。さらによく見ると、追加された周りの白い武器たちは、以前のスタイリッシュなロボットスーツの上に付けてある。まるで戦車のようだ。今回のために沢山準備してきたのだろう。
そんなことを思いながら、3人で受付まで走った。
受け付けのNPCに尋ねると、「あちらです」と言われて指を指したのはポッドだ。1人専用のポッドだが、すぐ転送されるので”専用”にする必要性を未だに感じない。二人で入ってもなんの問題もないからだ。
すると柊木がまず最初に入り、転送されて姿を消した。続いて杏奈は俺の腕を掴み、中へ入る。
中へ入ると2人いるので流石にキツい。
ポッドの中で杏奈の表情を盗み見た。その瞳の奥に一瞬、冷たい光が走った気がした。さっきまでの感情はどこへ。ポッドは動き出し、目的地に到着した。
「おー、まだいるってことは、まだ来るってことかな?」
転送し、着いた先には男の人。丸太に座る、筋肉質の男性がいた。服は破れ、腰に巻いている。オレンジ色の髪と黄金の目は、強者ということを理解させた。気がする。
周りを見渡すが、杏奈もいなければ柊木もいない。ただ俺一人が、この筋肉と一緒にいる。早くここから抜け出したい。
でも、抜け出す前にどういう事なのか、説明を聞きたいところだ。
聞こうとすると、彼は語り始める。
「ここはな、俺が作った島だ。他の奴らは別の場所に転送されてるだけでこの島にいる。でだ。今からお前たちにやってもらうのは、知っての通りバトルロイヤル。なんと今年は参加者126名。今のところはな。で、TOP10に入らなかったら入部不可。TOP10の決め方はキル数もしくは部員、つまり俺たちの誰か1人を倒すこと。分かったな?」
まぁ、一応知ってるからいいが。というか、この人部員なんかよ。勝てる気しない。
続けて彼は話し始める。今度は嫌味な気がする。
「いやぁ本当は5分前にこの説明終わってたんだけど、また話すのだるかったなー。なんでもう一度話さなきゃいけなかったのかなー」
なんだろう。腹が立つ。
〖開始1分前〗
空中で秒数を刻み始めた。しかしなんだ、こいつ、俺の元を離れようとしない。まさか、開始までここに?
すると強者の筋肉は言う。
「逃げてみろ」




