/3^3/ We forgot
俺たちは、いや、”俺は”すっかり忘れていた。
柊木は覚えていただろうか。
「あ、ごめん。忘れてた」
おい。やはり”俺たち”はすっかり忘れていた。杏奈のことを。
ラウンド1のゲームが終わったと同時に杏奈が現れたってことは、ゲーム中に彼女が参加して、観戦してたってことか。
すると杏奈は黒い液体を手の平から出し、俺たちに言った。
「勝負よ」
その姿はおぞましく、彼女へ恐怖を感じる。緑色の目は、俺らを突き刺すような目をしていた。その恐怖は、彼女の強さ故だと、思う。
杏奈の明るい服と対照的な禍々しさが漂っていた。
その禍々しさに怯まず、柊木は杏奈に聞いた。
「どっちでタイマンする?」
杏奈はそれに対し、答える。
「2対1で、私が1」
舐めてんな。でも、逆に燃えてきたぞ。
柊木と視線を交わした瞬間、言葉は不要だった。それでも、俺は心の中で彼に言った――『やるぞ』
〖Game ready go〗
新しいゲームラウンドだからHp、Mpは全回復した。存分に戦える。
勝負だ。
砂が風でなびく。コロンビアなので映画のようだ。
そんな中、杏奈は2人のうちの1人。俺に目を向け、言う。
「礼節が」
杏奈の周りから、広がるように地面が黒い液体でそまる。
「人を」
コロッセオの中心にいた我々を囲うように、ドーム状にし、黒い液体で天井を作り始める。
「作る」
その天井は、隙間なく閉じ、一瞬真っ暗になるが、すぐに周りの松明が自動で火を灯し、不気味でかっこいい雰囲気が作れた。
「意味が分かるか?」
俺はその意味を理解しているので、すぐに柊木に伝えた。いや、伝え忘れていた。
「来るぞ!」
言うのが遅かった。俺が「来るぞ!」と言い、柊木の方を見た時には既に、彼女の手から伸びる液体が、彼を貫いていた。
「柊木!」
杏奈は2つの黒い玉を浮かせながら言った。
「一度でいいからやってみたかったんだよね。『礼節は人を作る』」
俺が悲しむ間もなく、彼女は2発目を打ってきた。今度は弾丸のように早い、2つの黒い塊だった。
俺はすぐに槍でその玉2つを弾く。しかし、弾いた玉は爆発し、その爆風の勢いで杏奈のところまで飛んできてしまった。
その爆風はただの風ではなく、後ろから、黒い液体に押されるように移動した。
彼女の構えはまさに、殴り慣れたかのような、無駄のない。整ったフォームだった。槍でガードしたが、勢いまでは抑えきれず、また元の位置まで返された。
くそ、柊木はまだ倒れたまんまか。
柊木への心配が仇となり、前を向いた時には彼女が目の前にいた。
俺は自分でも驚くほど早く動き、槍をナイフに変えて彼女の腹を刺した。
すると彼女は刺したところを抑えながら、後ろへ下がっていく。痛みでも感じているのだろうか。でも、だいぶ前のアプデで痛みは無くなったはずじゃ?
それに「痛みを感じる」ということで問題が起き、一時騒然としていたし、やはり痛みを感じるのはおかしい。演技でもしているのか?
杏奈は傷口から手をやっと離すが、傷口はすっかり無くなっていた。自己修復も持っているのかよ。
するとまた、彼女は俺へ向かって殴り掛かる。今度は、反応できない。
「バン!」という音が、周りに鳴り響いた。
杏奈の腹は先程よりも小さいが、鋭く、赤い何かが彼女を貫通したのが分かった。
後ろを振り返るが、誰もいない。
「俺だよ」
俺はその声が聞こえた、斜め下に目を向けると、柊木が彼女へ銃口を向けていたのだ。
「柊木お前早く立ち上がれや」
俺は思わず言ってしまい、柊木は俺の言葉に反応してすぐに立ち上がり、言った。
「はぁあ? タイミングみてたんだよタイミングを!」
そんな口論をしている中、杏奈は傷口を押えながら、俺たちに背を向け、逃げるように歩いていた。
「へっ、やっぱり2対1なんて言わなきゃ良かったんじゃないか?」
おい、柊木言うなよそういうの。まぁ、俺も思ったが。
その柊木の言葉に反応し、杏奈は立ち止まり、俺らの方を振り向いて言った。
「んん、何のためにこのステージにし、何のためにドームを作ったと思う?」




