/11×2/ Will you be the professional ?
「第二山辺中学校出身の、七海杏奈です。趣味は映画鑑賞です。よろしくお願いします」
彼女は、他の人とは違う、冷静さが感じられた。その人は俺の斜め前の席。斜め後ろからの姿だが、分かる。美人だ。
久しぶりに、自分の鼓動が高鳴った。これが、一目惚れというやつだろうか。いや、趣味が一緒だ。これはもしかしたら運命かもしれない。
そんなことを考えていると、自分に回ってきた。
周りの人が自分のことを見ているかバレない程度に周りを見るが、あの人も、周りの人も俺のことを見ず、ただ先生だけが俺のことを見ていた。
「陽光中学校出身の、長谷川和也です。しゅ、趣味は、映画鑑賞です! よろしくお願いします!」
失敗した。これから高校生活が始まるというのに、出だしがこんなにも悪いとは。先が思いやられる。
周りに顔が見られないように、俺は顔を伏せた。
俺が緊張して失敗したからか、その後の人達の声は小さく、より緊張してしまっていることがよく分かる。
知っている人はいないか、よく耳をすませ、記憶を辿るが、今のところ全員聞いたことがない。
すると隣の人の自己紹介が始まった。彼の自己紹介は、何故か印象に残っている。
「皆さんこんにちは。第二山辺中学校出身の柊木 悠斗です。将来はプロゲーマーになりたいです。よろしくお願いします」
お前、普通科に来たのにプロゲーマー? まぁ、将来が決まっていることはいい事だが、言うこと他にあったんじゃないか? こんな事考えてるの俺だけ?
これは笑った方がいいのだろうか、みんなは……笑うどころか静まってるぞ。これは、滑ったで良さそだな。
こいつは緊張する様子もなく、ボケなのか本当なのか分からないことを言っても動じないという、凄いやつだ。多分。凄いやつ?
沈黙の中、彼の椅子を引いて座る音だけが響いた。
その後の空気は、まぁ地獄で、その後の人、俺の後だった人たち以上に声が小さい。まぁ、俺より上の失敗したやつができたから良かった。
あの人が見ているか確認するが、見ていた。俺の時は見ず、彼の時は見ていた。
紛れもない事実。俺はそのことに悔しさを覚えた。
「さーって、じゃあ隣の人と仲良くなれー手段は問わん。好きにやれー」
問題が起こりそうな言い方をするなよ。先生だろ。
俺は横を見た。するとそこにはさっき逆に目立っていた奴がいた。
「名前なんだっけ」
印象強いのに名前を忘れてしまう。行動の方が優先度が高いのだろう。
「柊木 悠斗です。そちらは?」
返された。相手も俺のことを覚えていないということだ。まぁ、仲が良くなるためだ。少しおちょくろう。
「なんだと思う?」
「分からないから聞いたのですが」
腹立つー。なんなんだこいつ。印象強いし印象悪いな。
いや、怒るな。ここは、冷静に。
「ああ、俺は長谷川和也って言うよ。そういえば、プロゲーマーになりたいって言ってたけど、なんのプロゲーマー?」
「ぶふっ」と両隣が反応した。お前らは反応するな。我慢しろよ。俺だって我慢してんだ。
「Our legends っていうゲーム」
ああ、俺もよくやってる。今流行ってるらしいしな。でも、なんか最近問題あったよな。そんなことはどうでも良い。
俺はそれで話題が尽きたので、無難なやつを聞いた。
「そういえば、なんでここの高校に入ろうと思ったの?」
悠斗は、彼が掛けている眼鏡のように目を丸くし、驚いた様子だ。何故そこまで。
「いや、だって、ここにはOur legends 部があるじゃん」
え? こいつ、プロゲーマーってまじだったのか……




