*2 There is a place
ーー1年前
中学3年生。日当たりの良い教室。グループで1つの机に固まる同級生。セーラー服と学ランで、教室は黒く染まり、明日から冬休みということで盛り上がっている。
私たちのグループは、は私含め3人。3年4組で話をしていた。
「そういえば、最近話題のあのゲーム知ってる? あのー……なんだっけ」
と、真由美が言葉がでず、戸惑っていると、愛菜が反応する。
「ああ、あれっしょ?『Our legends 』だっけ?」
真由美は「そうそう」と言わんばかりに愛菜に指をさしながら上下に動かし、目を大きく開ける。嬉しそうだ。
「何それ?」
話題に入るために私は質問をする。
「ほう、説明しよう!このゲーム。えーっと?」
また忘れてしまい呆れたのか、愛菜が腕を組み、ため息をついて言う。
「Our legends」
真由美は「あーーも〜う」と言って顔に手を当てる。そして説明を始める。
「で、そのゲームね? すっごい面白くて、なんだろ、自分がその世界の人になって敵を倒していくっていうロールプレイングゲームでね。そんでそれが本当にリアルなわけよ。まじで。視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。どれも本物って言っていいと思う!」
「は、はぁ」
私はあまりゲームに興味が無い。今までゲームをやったとしても「友達の家で」とかでしかない。
愛菜と真由美は私に目を向けて同時に言う。
「じゃ、やろっか!」
強引だ。私は既に推薦入試で市内では良い高校に合格している。しかし、彼女らは違う。これから一般入試がある。彼女らの本番はまだ先だ。そういう面で大丈夫か不安だが、まぁ、彼女らがやろうと言うのだ。
「しょうがないな〜」
すると愛菜は嬉しそうに口を開け、目を輝かせながら私の手を握る。
「じゃあ! 明日の朝8時30分! 百均の後ろのゲームセンター集合ね! 学生証忘れずに〜」
あまりに喜びながら言うので反論出来なかったが、時間早くない?
私は家に帰る道中、前にいる男子軍団の話を小耳に挟んだ。
「おい! お前ら、今どんな感じよ? どこまで進んだ?」
前髪が長い男子が答える。
「まぁ、俺は一応新ステージまで」
すると、明らかに陽キャと言える男子がそれに反応する。
「え! まじ!? お前、わりと動けるんだな!」
そんな会話を聞きながら、どんなゲームかを想像して楽しんで帰った。いつもより時間が早く感じた。
ーー土曜日の朝8時、私はあまりにも寒いので自動販売機で暖かい飲み物を買いながら向かった。
「は?」
私は目を疑った。こんな朝早くの時間なのに、ゲームセンターに百均の入口を塞いでしまう程の長い行列ができていたのだ。すると前から4番目に愛菜と真由美の姿が見えた。
「愛菜! 真由美!」
私の声に驚き、周りの人もこちらを見ると同時に彼女らも私を見て、真由美は答えた。
「おー!きたきた。あとちょいだよ〜」
それにしても、彼女らは一体いつから並んでいたのだろうか。
そう思いながら周りの人を確認する。見てみると、中年の男性。タバコを吸う女性。髪の毛が寂しい男性。若い男性など、様々な年代の人達がいた。
彼らのほとんどはスマホを触っており、暗い顔をしていている。あまり関わりたいとは思わない。
「この列って、もしかしてあのゲームの列?」
真由美はキョトンとした顔で「そうだよ?」と答えた。
朝9時になると、ゲームセンターの自動ドアが開く。一斉に先頭から動き出す。ほぼ先頭なので直ぐに入れた。
中に入ると、左右2つの扉がある。左側の扉の先には普通のクレーンゲームやメダルゲームなどが見える。しかし、暗いのでやっていなさそうだ。
右側は布で隠されているが、真由美と愛菜について行くと、右側へ入り、エスカレーターで登る。
到着し、目の前のカウンターすぐの横の道を見た瞬間、そこは本当にゲームをしに来たのかと疑った。見た目がまさにカラオケの通路だったからだ。
「私たち、これから何するの?」
真由美と愛菜は振り向き、落ち着いた声で口を揃えて私に言う。
「ゲーム」