表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/81

*19 I can win

私は、罪を犯していない。


目から涙を流した。しかしそれは黒く、まさに、ペネレイトだ。私はそれを隠すが、「もし本当にゲームの力があったのなら」と考えてしまった。


今までの恨みをぶつけるため、黒い涙(ペネレイト)を佐々木と神威に向かって勢いよく発射させた。

しかしあの時のように、時音の目の色が変わる。


「ほら、言ったじゃん。こうなるって」


ペネレイトは佐々木と神威の鼻先で止まり、また、赤、青、緑の3色がペネレイトの周りで歪んで見えている。


時音か


時音の方を見るが、「パン」と鳴り、その姿は見えず、代わりに最初にいた体育館に戻ってきた。


3人の姿は周りを見ても居ず、私1人がぽつんといた。

私はペネレイトを目の中にもどし、姿勢を低くして構え、次に起こる危機に備えた。


「パン」という手を叩く音がし、振り返るが誰も居ず、背中から重いパンチをくらい、少し遠くまで飛ばされた。


「ぐはっ」


こんな打撃は初めてだ。

私を殴ったと思われるやつ。佐々木が元の場所におり、「殴った」構えをしている。恐らく殴ったのは彼だろう。


「もし、これがゲームと同じなら」


私は手のひらを佐々木へ向け、一歩前に出てペネレイトを出そうとしたが、出てこない。

なんで? 私はゲームと同じ能力を手に入れたんじゃないの?


「パン」とまた鳴ると、後から刃物で背を切られた。

後ろをチラッと見ると、神威が刀を持っていた。

紙で切ったときの痛みが全身にあるみたいで、痛すぎる。


切られた刹那、私の背中は冷たくなり、傷口が塞がった感覚があった。

驚き、背中を触るが、本当に傷口が無くなっている。後ろを見ると、神威も驚いており、私はすぐ彼へ1発殴った。苦しそうな彼を見て、少し快感を得た。


「パン」となると、彼はいなくなっていた。その代わり真後ろに時音がおり、私の肩を掴んだ。


「じゃあな」


目の前が歪んで見える。気持ち悪い。どこかがおかしい。視点が回転する。体の感覚がない。

歪みが無くなると、視点は一気に下へ落ち、時音と神威を下から見上げた。神威の刀には血が付いており、私の顔にも血が流れてきた。

流れてきた方を見ると、そこには私の体があった。


「あ、ああ、なんで、なんでぇ」


私、死ぬの?


「うわ、こいつ、意識あるぞ!」


神威が焦っているのに対し、時音は冷静だ。人が死ぬのに慣れているのか。


「そりゃそうよ。首を切ってもさっきまで通ってた血は頭に残っているんだから」


早く、死にたい。


まって、そもそも私がこんなになったのは、彼らのせい。


私のせいじゃない。


私に罪は無い。


私は罪を犯していない。


どうせ死ぬなら、彼らも道連れに。



私は頭の切断部分からペネレイトを出し、勢いよく上へ飛び出した。佐々木がそれに反応し、ジャンプして私を殴ろうとするが、瞬時に横へ避ける。


同時に、体の切断部分から目くらましとしてペネレイトを出し、直ぐに走って私の頭へ向かうよう、とにかく意識した。頭の中で、走るのをイメージして。


回転する視点の中、下を意識して見ると走ってくる自分の体があった。

その切断部分どうしからペネレイトを出し、結びつけて勢いよく頭の方へ向かって切断部分同士をくっ付け、2階の柵がある道に足をつけた。


「おい、あいつ不死身かよ」


神威がなんか言っている。


「私は、あんたらを許さない。あんたらのせいで私の人生はめちゃくちゃになった。だから、責任を取って死んでもらう。拒否権は無い」


ペネレイトを出す条件が分かった。だが現実とゲームの条件は違う。これを理解した私は、負けない。

あんな奴らはゴーレムと比べたら、弱い。


「お前、俺らのこと舐めてるだろ? 俺らはあんたを死なせたくないんだ。か弱い中学3年生だからな」


佐々木は煽っているのだろうか? よく分からない。


「パン」という音が鳴る前に、私は自分の両手と頭を、何度も何度も壁に打ち付けた。

私はただ、勝利を確信し、手で口を抑えたが、笑いを抑えられなかった。


「ああああ、楽しみだぁお前らを、殺せる。呪縛(しゅばく)の根源を、殺せる。これで私はぁ解放される くはははははははははははははははははははははは」


何か分からない。ただ開放感だけが感じられた。さっきまでの絶望はなかったかのように。その事に何故か私は、喜びを感じた。


そして私は柵に背を向け、準備した。


「パン」という音が鳴った。

その瞬間、私の周りには佐々木、時音、神威が、構えた状態で右、左、目の前にそれぞれ現れた。

私は笑みを隠しきれず、笑う。


「待ってましたぁ!」


手から、頭から、首から、「血」が出ている所から鋭くしたペネレイトを勢い良く出し、彼らの胸に突き刺した。


彼らの動きは死んだように固まり、ただその事に喜びを感じた。


「佐々木、神威、時音ぇ、ずいぶんと、弱かったな? こんな弱いと思わなかったよ!!」


彼らは苦い顔をしており、私を憎んでいることがよく分かる。


神威が手をたたこうとするが、私は彼の手をペネレイトで抑え、体に巻き付けた。

時音の顔は、今にも私を殺しそうな顔をしている。珍しい。あの冷静さはどこへいったのだろうか。


「我々は、君を助けようとしたんだぞ!」


「じゃあ言うのが遅かったね。もっと早くその事を言うべきだった。そしたらこんな事にはなってなかった。ね」


佐々木の自分の罪を受け入れない言動に、怒りを感じた。


すると3人が急に居なくなり、無傷の姿で下に現れた。佐々木と神威の顔には笑みが、時音はいつも通りの冷静な顔をしている。


「なんで、なんで無傷な、それにさっきまでここに……」


自分で驚いた。私の声は震えている。彼らが恐ろしい? まさか。1回殺したも同然なのに。なぜこんなにも、震えが止まらない。


「あんなぁ、俺が手じゃないと瞬間移動出来ないとでも思ってんのか? 俺はな、太ももでも瞬間移動出来るんだわ。どっかのアニメを見すぎだ」


私は下へ飛び降り、彼らと向き合った。


「再戦といこうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ