*18 I don't have the sin
その男の人は、あの時見た、拍手してた人。特徴的な服と奇行で覚えている。なぜ彼もここに一瞬で。やはり、そういう事か。あんな発言して、こんな都合よく現れるわけが無い。
「ほら、助けに来たよ」
手を差し伸べてくる。やはり、見たいのだろう。
見せる訳にはいかない。
私はすぐ右腕に重心を乗せ、肘で地面を押し、体を押し上げてすぐに立ち、ゲームセンターへ向かって走った。足音が自分のしか聞こえないので、後ろを見てみると、そこに人は居なかった。
入ってすぐ右へ曲がり、また受付のあのお姉さんに出会った。お姉さんは私に向かってニコっと微笑み、
「こちらです」と言って受付の奥の扉へ案内され、その扉の中に入った。
するとそこは非常階段になっており、お姉さんと一緒に下がった。
1F/2Fのところまで下がり、その看板の下の壁を彼女は押し、扉の先にはいつもの白い通路。白い廊下が現れた。こんなに簡単に入るのは初めてかもしれない。
彼女はすぐ入って進むので、私は慌てて扉を閉めて着いて行った。
廊下には珍しく、人の影ひとつない。
すると彼女は大きな扉の前で止まり、「ここです」と言って扉を開けた。
扉の先には、大きな広場。というよりも、体育館のような場所だった。防音壁のような壁であり、頑丈そうだ。
目の前には3人。先程の男と、佐々木、時音が居た。
佐々木は溜息をつき、私に言う。
「来ないかと思ったぞ」
私は何も言わない。
すると先程の男が、ポケットに手を入れながら私に問う。
「なんで俺の手を取らなかった? てかなんで俺が、能力を使ったと分かった?」
私は自慢したいので自慢げに答える。
「あんただとは最初1ミリも思ってなかった。でも私があんな変なことを言った途端に現れて、都合が良すぎる。今でも、あんただってことは分からなかった。」
佐々木と時音は彼を見る。
「なるほど。俺やらかしたのか」
時音は手を叩き、場の空気を落ち着かせる。
「ほら、話するんでしょ?」
佐々木は「ああ」と言い、さっきの男に何かを頼む仕草をすると、男は「パン!」と手を叩く。
その刹那、場所が一瞬で変わり、会議室へと変わった。やはり、一体何が起きているんだ。
佐々木は眼鏡を上にあげ、話し始める。
「話が長くなってしまうが、付き合ってくれ」
「はい」
これで私の生と死が決まる。と思う。
「まず、前提として君に拒否権は無い。それは伝えておく」
「は?」
不平等条約かて。なんで私に拒否権がないんだ? 言語が同じなんだから討論をすべきだろ。
私は一番冷静な時音に目を向けるが、彼女は何も言わない。まぁ確かに、あちら側の人間に助けを求める意味などない。
佐々木は私が意見を言う前に、再び話し始めた。
「君は能力者となった。分かるかい?」
「分かりません」
いつの間に能力者になっているんだ私は。
「一番今分かりやすいのは、あんな車に轢かれて血まみれになっていたのに、すぐ立ち上がって逃げてきた。というのが分かりやすいんじゃないか?」
「確かに」
今気づいた。私は怪我をしていたんだ。しかしなぜ怪我に気づいたのに痛くならないのだろうか。まさかこの短時間で再生を? そんなわけが……あるのか。
「その理由として、君は特殊でね。この2人の能力者。時音と神威とは違う方法でなったんだ」
ああ、あの人、神威っていうんだ。かっこよ名前。
というか私は本当にいつ能力者になったのかが気になる。
「まずだ。君は銃で撃たれ、タンクの中に入ったろ? あれが既に違う。我々の能力を得る方法は、ただその液体を注射しただけだった。しかし、お前は大きな注射をし、傷口から少量ではなく、多量のタンクの水。トランスレイトを摂取したんだ。」
え? あの時? あんな簡単に能力手に入れちゃうの? それならみんな持てるんじゃ……
「『簡単すぎ』と思っただろ? でもな、そう簡単じゃない。普通は少量でも摂取したら死ぬ。だからゲームの時もあんなスーツを着させているんだ。」
心を読まれた。あのスーツを着る理由に納得ができた。というか、「少量でも死ぬ」ならば、多量に摂取した私は、なぜ生きてるんだ?
彼は「ふぅ」と息を吐き、一旦休憩し、また話し始める。
「で、じゃあなんで生きてるんだ。となるが、君の能力は『死者の権限』そして、『細胞の具現化』らしいな。くそが」
暴言を吐かれた。しかしなぜ急にゲームの話を? まさか
「ゲームをやったことのある人に、このトランスレイトを摂取させると、ゲームの能力を得るんだ。現実で。」
な、それじゃあ急にシステムの声が聞こえた理由って、そういうことだったのか。
ちょっとまって、ゲームの力が現実になった。ということは、ゲームの罪も、現実の罪になったの……?
そんな、嘘。嘘だ。いや、あれはゲームだ。ゲームなんだから、何したっていい。現実じゃないんだから。でも、現実になった。
罪は現実に。
私は何か背後から、見えない重圧がのしかかるような感覚に襲われた。後ろを見るが、何も無い。
佐々木がまた話し始めるが、内容が入ってこず、ただひたすらに、佐々木が恐ろしく見えた。
「やめて、私に近ずかないで!」
私は私でも何を言っているのかが分からない。彼は何を言っているの? いや、私は何を言っているの? あ
ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああ
ただ、苦しい。
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