*16 I want to explain
気まづい空気。食卓を囲むはずの机は、重たい空気に包まれた。
そもそも空気ってなんなんだろうか。空気って……
「聞いてるの?」
「聞いてます」
母は私とわざと視線を合わせた。私は目を逸らす。横目で母を見ると、目に見えるほどの殺気を出していた。
母はまた同じことを繰り返す。
「だから、真由美の家に泊まってた? 荷物少なかったのに? 服は? へ? 連絡は? なんでしないの? ねぇ? 今まで、何してたの?」
言葉の銃弾とはこの事だ。いや違うか。
とにかく、質問の雨を受けた。
その雨に対し、傘をさすように言葉をはね返した。
「泊まってました。服借りた。連絡忘れた。ずっと、ゲームしてた」
「ゲームをずっと!? 何のゲーム?」
そんなに驚かなくても……いや、驚くか。2日もゲームをしていたということになる。嘘では無い。まぁ、嘘と勘違いしてもしょうがない。
私は言うことを躊躇いながらも、言った。
「Our legends」
「なにそれ」
眉を下げ、「ゲームなんて珍しい」なんて顔をしている。私は少し焦りながらも答える。
「なんか、すっごい現実かと疑っちゃうほどリアルで……ね」
あまり言い過ぎないように、途中でやめた。今までの経験上、余計なことも言ってしまい、弱みを握られたことが何度かある。
「ご飯は?」
「ああ、何も」
母は私がそう言うと、勢いよく立ち上がり、すぐ台所へ向かった。すると冷蔵庫からパンやマーガリン、ハムなど、様々なものを出しながら、私に顔を向けず言った。
「ご飯の準備するから、お風呂入ってきなさい」
「いや、」
「良くない!」
私に拒否権は無さそうだ。
私は脱衣所へ行き、服を脱ぐ。すると、全ての服が1つに集まり、また箱の形へ戻った。便利だ。
浴室へ入り、目の前の鏡を見て、十弾が当たったところを見るが、完全にあとが無くなっておらず、すこし黒くなっている。ホクロだろうか。
私は久しぶりに体をシャワーで洗い流した。
シャワーで洗っている時に考え事をすると脳が活性化されるとかされないとか。そういう情報を聞いたことがあるので、よく考え事をしていた。
あの時の黒い液体。やはりペネレイトな気がする。でも、ペネレイトはゲームの中の液体。ここは現実。のはず。
明日、私はまた行かなきゃ行けない。なぜ? 思春期くんがペネレイトになったから? でも自分との関係はない、はず。
彼らは一体なんの集団? 彼らは銃を持ってた。日本で。ということは犯罪組織。もしくは国関係の集団? それなら市民を傷つけるだろうか。
私は髪の毛が濡れるどころでなく、びしょ濡れになるまでシャワーをかけ続けていた。
私はすぐ体を洗い、浴室を出る。すると床にはパジャマが畳んでおいてあった。
私は安心して着替え、髪の毛を乾かし、箱をポケットに入れて脱衣所を出た。
リビングに着くと、そこにはソファーの上で眠った母がいた。母の目の下の黒いくまが目立った。
テーブルの上を見ると、そこにはベーコンとチーズ、卵が挟まったパン。その隣には市販のパン3つと、麦茶が入ったコップが置いてあった。
私はすぐに椅子に座り、手と手を合わせ、お辞儀した。
「いただきます」
鳥のさえずりが耳を突き刺す。私は自分の部屋で目を覚ました。
いつもの景色が、異様に感じる。
私は階段をおりて下へ。母と朝ごはんを食べた。何故か今まで忘れていた、弟のことを思い出し、寂しさを覚えた。
母はそのままソファーで寝ていたらしく、ソファーに跡が出来ている。いつもの景色なのに、違う。何かが違う気がするが、何も変わっていないのだろう。
「今日は家にいなさい」
母は急に言った。
無理だ。今日は必ず行かなきゃいけない。もしいかなかったら、どうなるだろうか。家に押しかけ? 射殺? いや、まさかそんなことを。
「いやぁ、ちょっと今日も用事が」
私は下から眺めるように母を見たが、それに切れたのか、持っていた食器を思いっきり置き、「ガン!」という音が部屋に響いた。
「本気で言ってる?」
これは、本気で怒っている。
私は何も言わずに朝食を食べ終え、2階の自分の部屋へ戻った。
扉を閉め、すぐに椅子に座って考え始めた。どうやったら、私は行けるだろうか。どうしたら、どうしたら。
椅子を引くと、引き出しがあったことを思い出した。
その引き出しを引くと、木製の机だからか、木の匂いが充満し、それと同時に消しゴムのゴムの匂いが鼻を刺激した。
くっさ
匂いを嗅がないために、頭を引くと、引き出しの全体が見えた。
私は天才的に閃いてしまった。この状況を打開する方法を。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
是非、参考にしたいので感想やご意見の程、よろしくお願いします!
次回も楽しみにしていてください!