*12 The two boxes
私は朝通ってきた道を通るが、日曜日なのに人気が少ない。奇妙だ。普段なら家族連れや学生たちで賑わうこの道が、今日はまるでゴーストタウンのように静まり返っている。
周りには焼肉、うどん、ラーメン屋などの飲食店や大きな本屋さんと百均。ショッピングモール。
それらを境にした十字路に訪れるが、車が1、2台居るか居ないかなだ。
車が動いているというだけで、パラレルワールドに来てしまったという展開を避けられて嬉しいが、何故こんなに人がいないのだろう。
横断歩道を渡り、少し早歩きで進んでいると、向こう側から自転車が来た。見覚えのある自転車だ。
「真由美!」
「え! 杏奈!?」
それは真由美だった。真由美はこちらを2度見して、私の横を少し通り過ぎてから足も使って「ガガガ」と大きな音を立てて止まった。
止まるとすぐ自転車を端に移動させ、私の方を見る。
「杏奈、一体昨日いつ帰ったの?」
「え? 今帰ってるとこ」
真由美は口をわずかに開けたまま、私のスーツを上から下へと見つめた。
「え!?」
「どうしたの?」
私が真由美に問うと、真由美は空いた口を手で押え、私に質問で返す。
「いや、それ、どこで買ったの? てかいつ買ったの?」
あ、まずい。これ盗んだやつだからバレたらまずい。しかし嘘を言うのも良くない。彼女は嘘を見抜くのが得意だ。
私はなるべく平常を保つようにして彼女の質問に答えた。
「なんか、進化した」
間違ってはいない。
「まじか。そういうものなんだ。というか、スーツくれたんだ」
また鋭いところを着いてくる。これは、どうしたら良いものか。このことに関しては事実はない。何を言っても嘘になってしまう。
私は無意識に首を引いた。
「まぁ、いっか」
「え?」
真由美にしては珍しい。まぁ、良いが。
私は真由美の言葉を流し、安堵の息を漏らして1番気になっていることを聞いた。
「今何時?」
「え? 杏奈スマホは?」
「荷物全部忘れた」
目を細め、口を少し開き、 「何をしているんだ」 と顔が言っている気がする。
「えーっと、今の時間は7時30分」
え? ゲームを始めたのが午前10時ほど。7時30分というともう暗いはず。まさか、
「朝の?」
「朝の」
そんなわけが無い。確かにゴーレムに飛ばされて意識を失っていた。けれど、本当に?
私は真由美の言葉に今までにないほど疑った。
「あの、私の荷物取ってきてくれない? この姿で街中にもずっとは居られないし。自分ではちょっと、難しいかも。」
私は真由美に頼むと、彼女はすぐに承諾してくれた。理由は教えてくれなかったが、「いいよ〜」と今までの雰囲気から言えない軽い発言をした。
その後、私は直ぐに近くの公園へ行き、トイレの個室の中に居た。愛菜が荷物を取ってくるまでここにいる約束をしたのだ。ボロボロのトイレで、少し臭いので早く来てくれることを願っている。
あまりにも暇だったので、2つの新しい箱を身につけてみることにした。マスクとはあまりにも違うような形をしているので、少し楽しみだ。
1つ目。マスクの横の箱を手に取る。その箱は、マスクと同じ位のサイズの箱だ。
まず私は胸下に付けるが、何も起きない。
その後、様々な場所。足、背中、首、脇など、ほとんど全身に当ててボタンを押しても何も反応しなかった。
諦めて、手のひらにおいてボタンを押すと、「カチカチ」と音が鳴り、横から棒が伸び始める。最終的には個室の両端に着き、私が手を離しても落ちなくなった。
さらに、棒が出てこなかった裏表の場所が動き始める。裏面が表面の上に来て、両面が横に広がり始める。結果、テレビ画面が現れた。
やはり最新の技術は違う。
画面が現れるだけでは終わらず、床に着いてしまうほど画面が伸び、プロジェクターが作動して横の壁とテレビ画面にカラーパレットや、設定画面らしきものが現れた。
よく見ると、色や形、服、体型、全てを変えることが出来る。それは、キャラクタークリエイトの画面であり、私が使うアバターの調整を細かく出来た。
革命的だ。これはつまり、ゲームの世界に行かなくとも現実でキャラクリ出来るようになったということだ。これは時間をつぶすのに最適だ。
キャラクリも気になるが、私は2つ目の箱を手に取った。その箱は、今までで最も小さい電球ほどの大きさだった。
さっそく私はそれを胸下に着け、ボタンを押した。
すると新しく着いたスーツが箱へ集まり、今までのスーツが現れた。
しかし、それだけでは終わらかった。
〖登録済みの服へ変換します〗
またシステムが現れた。もしかしたらこの箱から音声が流れているのかもしれない。
そんな事を考えていると、箱がまた動き出し、今度は元々着ていたスーツも動いている。
さらにキャラクリ画面も箱へ戻ってしまった。放置時間が長かったのだろうか。
そんなことを考えているとあることに気づく。
おかしい、どんどんスーツの形が変わっていく。
私は興味とともに焦りを感じた。そして、私はあることを恐れてしまった。
足音が近づいてきて、私のトイレの扉が叩かれる。
「すみませーん? 入ってますか?」
最後まで読んで頂きありがとうございます!
是非、参考にしたいので感想やご意見の程、よろしくお願いします!
次回は今日の19時です!
楽しみにしていてください!